2022年12月19日
2022年9月に産声を上げた、ブロックチェーンを活用して次世代のビジネスに挑戦するグローバルインキュベーションプログラム「onlab web3」は、web3に関連するグローバルエコシステムの構築を目指すプロジェクトです。9月から一般公募を行い、60社以上の応募から約1ヶ月半をかけて選考された8プロジェクトは、今後onlab web3やデジタルガレージが支援をしていきます。本記事では海外のweb3スタートアップやプロジェクトが日本への進出を目指す「Unlock Japan」と、日本のweb3スタートアップがグローバルマーケットを目指す「Born in Japan」にわけ、総勢8プロジェクトについて各社のピッチ内容と合わせてダイジェストでお届けします。
まずは海外スタートアップが日本市場に新たなweb3の世界を提案するUnlock Japan。登壇した2社(他に非公開の会社が1社登壇しています)を紹介します。
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Contents
デザイナーやエンジニアでなくとも、ノーコードで簡単にNFTコレクションを発行できるサービス「Dixel Club」は、スイス最大のフィンテックアクセラレーターである「F10」と韓国最大のモバイルプラットフォーム「Klaytn」が開発したレイヤー1 ブロックチェーンKlaytnにも支援されている、韓国発のスタートアップ。
すでにあるノーコードツールを活用することで、エンジニアでなくてもNFTプロジェクトを立ち上げやすくなってきましたが、デザイン部分はデザイナーに頼る必要がありました。Dixel Clubではデザイナーではなくても、簡単に作れるピクセルアートを元にNFTコレクションを作成できます。プロジェクトを立ち上げるユーザーがオリジナルとなる一つのピクセルアートをデザインし、NFTをミントするユーザーが決められた範囲で自由にデザインを変えて、ボトムアップかつインタラクティブにNFTコレクションが作られていくのがDixel Clubの特徴です。
Ethereum, Polygon, BNB,OKC Klaytnのチェーンに対応しており、1万のNFTがDixel Clubを通じてローンチされ、2600以上のNFTがミントされていると、代表のCho氏は語ります。作成されたNFTはコミュニティ形成やDAOのために使われており、例えばイベントの抽選チケット、ランニングを継続した人がNFTをもらえるコミュニティの運営に利用している事例が出てきました。Dixel ClubはインタラクティブなNFTコレクション作成プラットフォームとして、ミント市場を狙っていきます。
「Unlock Japan Award(最優秀賞)」に選ばれたのはこのDixel Club。「受賞に感謝している。日本市場に挑戦したいと思っているので、これがいい機会になると思う。日本でも世界でも成長していきたい」とCho氏は意気込みます。
Rocket Capital investmentはシンガポール出身のスタートアップで、世界各地の2000人以上のデータサイエンティストの力を使った、暗号資産の投資運用に特化した分散型ヘッジファンドです。実際にシンガポールの金融当局からもライセンスを受けている金融機関です。
世界中のデータサイエンティストたちは、Rocket Capital investmentが毎週開催する金融データ分析コンペに参加。投資モデルのベースをダウンロードしてトレーニングを実施し、市場予測を提出します。この予測はブロックチェーン上に記録されるため改ざんはできません。1週間後に予測と実績を比較し、最優秀者には報酬としてトークンが支払われるという仕組みです。
コンペには世界中から3000のモデルが提出され、Rocket Capital investmentはそれを独自のモデルに再構築。この独自モデルを使って自らのヘッジファンドを運営しています。Rocket Capital investmentはweb3のモデルで、資産運用の世界に挑戦します。
続いて、日本発のweb3プロジェクトが登壇するBorn in Japanを紹介します。
Born in Japanで最初に登場したのは「Draw2Earn.」。完全分散型自律フルオンチェーンマーケットプレイスを構築しようとしています。
多くのNFTプロジェクトは完全にオンチェーンに保存されておらず、データはブロックチェーン外の HTTP サーバーやIPFSに格納されています。その理由は大容量データをブロックチェーン上に保存しようとすると高額なガス代がかかるからです.。完全なフルオンチェーンNFTを扱わない限り真の自律分散型のプロダクトは構築できません。Draw2Earnはこの問題を解決します。
Draw2Earnはユーザーが描いた画像を独自の技術で圧縮し、ブロックチェーン上に書き込み、フルオンチェーンのNFTをミントできるサービスです。描いた画像はOn-Chain Asset Storeで取り扱われ、他のユーザーに使われると、売上の97.5%がクリエイターに自動的に支払われます。Draw2Earnでは、ブロックチェーン上に全てのデータを保存するフルオンチェーンのアセットのみを扱うことで、運営を必要としないスマートコントラクトによる完全な自律分散型のマーケットプレイスのションレスの実装を図ります。
Web3プロジェクトのための分散型給与支払いプロトコルを提供するKanjyo。trustlessにトークンや暗号通貨で給与が支払われる世界観を描きます。
国際的なプロジェクトで活動する場合に暗号通貨での給与支払いのメリットは、銀行振込よりも安く、早く送金を受けられることです。世界には20億人の銀行口座をもたない方がいるため、暗号通貨での支払いは彼らへ国際的なプロジェクトへの門戸を開くことにもなります。
しかしながら暗号通貨による給与支払いには、最初の設定コストが高い、べスティングによる売り圧力、それに伴うトークン価値の低下というデメリットもあります。また、web3プロジェクトには匿名性が高いプロジェクトが多く、そもそもちゃんと給与が支払われるのかという心配を拭えません。各国への法律や税制などへの対応も課題です。
Kanjoはこれらの課題を、分散型給与支払いプロトコルという形で解決に導くサービスとなっていきます。
▼Kanjoの対談インタビュー▼
wΞlock(ウィーロック)が開発するのは、スマートロックのためのWeb3認証システムです。
代表の橘さんがNFTを参加券とするあるイベントに参加したときにみた光景は、NFTを持っていることを証明するために、スマホを受付に見せるための長蛇の列でした。NFTというデジタルを使っている中で出会ったアナログな光景。「これは単なる認証の自動化の問題ではなく、Web3と現実世界の断絶が本質的な課題だ」と、橘さんは語ります。
そこでwΞlockが開発したのは、特定のNFTを持っているだけで、場所や空間へのアクセスコントロールをパーミッションレスに可能にするシステムです。この技術を応用して、スマートロックの自動開閉を可能にしました。イベントだけでなく、飲食店や宿泊施設、自動車での利用を見込みます。なおこの技術は、日本とシンガポールですでに特許を取得済みです。
特許や既に実証実験が進んでいる点が評価され、「Born in Japan Award(最優秀賞)」にはwΞlockが選ばれました。審査員は「welockは世界で通用するプロジェクトだったと思う。クールで実践的なプロジェクトだ」と評しました。
▼wΞlockの対談インタビュー▼
UI Bountyは、フルオンチェーンゲームとフロントエンドエンジニアのマッチングを行うプロトコルです。開発者に予算分配という方法を与えることで、ブロックチェーンゲームのフロントエンド分散化を推し進めます。
ブロックチェーンゲームでは、オープンソースで誰もがオンチェーンデータを読み書きできるため、ユーザーがより良い体験を求めフロントエンドの分散化が起こるはずだと、代表のaskyv氏は語ります。
UI Bountyはフルオンチェーンゲームのフロントエンドの分散化を通じて、個別ユーザーの趣味趣向に最適化された二次創作が生まれやすくなることや、ゲームのUI/UXのABテストの効率化が図られることを目指しています。
仕組みとしては、ユーザーが フロントエンド提供者が開発したゲームを遊んだ時、UI Bountyが、各フロントエンドからどれだけのユーザーが遊んだのかを計測し、これに基づいてコアチームから拠出される予算を、開発者にスマートコントラクトを使って自動で分配します。これにより、オンチェーンゲームとフロントエンド開発者のマッチングプールを作りたいとaskyv氏は語りました。ゲームとUI Bountyが有機的一体に動作することで、自動で透明性が高く、改ざん不可能な予算分配をオンチェーンで実現させます。
固定金利のDeFiプロジェクトを提供するNapier Financeは、コミュニティドリブンで流動性統合プールを持つ固定金利市場を目指しています。
DeFiにおいては変動金利に取り組むプロジェクトは多い中、固定金利市場はまだまだ発展途上の段階です。Napier Financeは、固定金利市場の低い資本効率からくる流動性リスクの課題に挑戦し、最も資本効率に優れた固定金利市場の構築を目指しています。既存金融でも大きなシェアを占めている固定金利市場の構築を目指す大きな野心を抱き、Day 1 からグローバルで多くのユーザーから使われる可能性を秘めているプロジェクトです。
以上、7社のピッチを紹介してきました。Dixel ClubとwΞlockの最優秀賞獲得で幕を閉じたonlab web3 Global Pitchですが、まだまだweb3は黎明期。これから幾多のスタートアップが登場してくれることを期待してます。
またonlab web3では、毎月web3スタートアップのピッチイベントを開催し、onlab web3 Global Pitchは毎年開催予定です。web3スタートアップの皆さんは、ぜひチェックしてみてください。
(執筆:pilot boat 納富 隼平 編集:Onlab事務局)