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ESGファッションとサーキュラーエコノミー!サステナブル素材で作る代替レザー|ESG Talk #9

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第7回、第8回のpodcastでは、ファッションに関するESGをテーマに、私たちが毎日着ている衣類などの製造から廃棄の過程で発生している環境問題人権問題アニマルウェルフェアについてお届けしてきました。環境省のサイトによると一人当たりの衣服消費は年間平均で18着購入し、12着捨て、25着は着ない衣類があるということで、ファッションのライフサイクルの短さを痛感した回でした。ほかにもファッションが、環境汚染産業第2位というのは驚きでした!
廃棄された衣類のうち日本ではわずか34%しかリサイクルやリユースにされておらず、しかもその数字は家庭から廃棄された衣類でセールで残ってしまったものや作る過程で発生した端切れなどはカウントされていいません。今回のエピソードでは『これからのファッション』についてお話します。

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大手ブランドのサステナブルな取り組み

大手ブランドではESGの発信の仕方が重要視され、NIKEでは毎年インパクトレポートを出しています。1990年に発生した不買運動をきっかけに、ファッション業界の中でも早くからこのような取り組みをしていることでも有名です。そんなNIKEはNike Sustainableというウェブサイトも公開していて、この中ではサステイナビリティなデザイン誕生秘話、循環デザインのガイド、スポーツと環境問題についてのアスリートとの対談などが載っています。

出典:Nike Sustainable

サイト内ではサステイナブルロゴも紹介され、サステナブルな素材を使って作られたアイテムにはこのロゴが使われています。消費者にとってもそのロゴを身につけることでサステナブルなものを選んでいるという主張をすることができます。英語のサイトにはアスリートとの環境についての対談やシューズをより長く使うためのコラムや、デザインの裏側も公開され、日本でもより多くのコンテンツが今後配信されていくかと思います。
今回ファッションとESGの関連性を調べる中で多く登場したのが、ステラマッカートニーでした。ステラマッカートニーでは2001年の創業以来レザー、ファー、動物由来の接着剤を使用されておらず、オーガニック素材への切り替え、PVCフリーサステナビリティ認証済みの素材を使って製造も進められています。

出典:ステラマッカートニーサステナブルページ

このサステイナブルページではタイムラインでブランドのサスティナブルへのシフトの紹介や、ブランドで使用している全ての素材の紹介がされています。その中にはマッシュルームレザーがあり、2018年にはバック、そして2021年にボルトスレッド社のマッシュルームレザー「マイロ(MYLO™)」を使った世界初のウェアを発表しています。エルメスでも今年、きのこの菌糸体から作られた人工レザーをマイコワークスという企業と共同で開発を発表したという記事が出ております。この人工レザーは、強度と耐久性を高めることができます。今後ファッションブランドが他社と共同で新素材の開発競争など行われるかと思います。ハイブランドなどでも取り扱われるようになってきている新しい素材を開発してる企業は多くあり、植物性の素材を作っているスタートアップだけでも500社以上存在しています!

新しい素材 ビーガンレザーとは

マッシュルームレザー

ステラマッカートニーが使用しているマッシュルームレザーは菌糸体からできていて、動物を育てるには年単位かかりますが、マッシュルームレザーは日単位で製造ができるそうです。もちろん飼育にかかる水や食料より少ないもので作れるのでそういった面で環境に良いとされています。マイロ(MYLO™)では2022年にライフサイクルアセスメント発表予定で環境に対してどのようなインパクトを与えているのかも発表される予定です。マイロ(MYLO™)はもちろん100%プラスチックフリー、アニマルフリーのヴィーガンレザーになっていてステラマッカートニーの他にもadidas, Kering, lululemonでも使われています。

出典:マイロ(MYLO™)ウェブサイト

廃棄になるりんごからレザーを作る会社

デンマークの会社はBeyond Leather Materialsはアップルサイダーを作る過程で生まれる廃棄になるりんごを使ってプラントベースのレザーを作っています。この製造ではフードロスの削減にもつながっています。このプロダクトLeapは64%がりんご、36%はエコフレンドリーな素材を使っているため100%プラスチックフリー、アニマルフリーのヴィーガンレザーになっています。フィニッシュコートにもバイオベースのものを使っていたりレザーの裏地にはサステイナブルな環境で作られたオーガニックコットンを使っており、環境に優しいレザーになっています。

出典:Leapウェブサイト

レザーはファッションだけでなく私たちの身の回りに溢れています。インテリアや車のシートなどにも使われており、市場規模は年間約4,000億ドル(約43兆円)とも言われ、規模が大きく、取り組むスタートアップも多くなっております。本来のレザーは動物の飼育だけでなく、なめし作業などにも製造工程にも環境負荷がかかっています。そしてアニマルウェルフェアが大きく関わっており、現在、代替素材が注目されています。今ヴィーガンレザーとしてとり扱われているものは合成石油由来の擬革と植物由来の代替品の大きく2種類あります。
石油から作られる他の合成材料と同様に環境に甚大な影響を及ぼす上に廃棄問題が大きく関わっています。植物性の代替品はライフサイクル・アセスメントデータや環境への影響に関するデータが大きく欠如しているため、まだはっきりと環境にいいと言い切ることはできないのが現状です。
そういったこともあり植物性の代替品は色々な素材で研究が進んでおり紹介したもの以外にも、コルクバナナリーフパイナップルリーフココナッツシリアルサボテンコーンなどさまざまな研究が行われています。そんな様々な研究が進むレザーの代替品ですが、私たちの手元に商品としては、まだ届いていない新しい研究中のレザーであるラボレザーも開発されています。

ラボで作るレザー

ビールの醸造に使う酵母に動物の遺伝子を組み込んで、砂糖を食べてコラーゲンを作る酵母開発した ModernMeadowは、酵母がコラーゲンに似た植物由来のタンパク質を作り、そこから革の代替品を開発中です。このコラーゲンが個体になり、まるでレザーのようなマテリアルになるそうです。この製造では全てのプロセスに2週間ほどしかかからず、100%プラスチックフリー、ヴィーガンレザーとなっています。

出典:ModernMeadow

メタンと二酸化炭素を利用して細胞内でPHBプラスチックを作る海の微生物を使ったプロダクトを開発しているNewlight TechnologiesのAirCarbonは、PHBプラスチックはバイオマスプラスチックで微生物が飢餓に備えて菌体内に生産・蓄積するもので、環境の中で自然に分解されます。それにくわえ、メタンと二酸化炭素を利用して作るのでAirCarbonを1kg製造すると、二酸化炭素88kgを相殺できると言われています。このAirCarbonは今までストローなどプラスチック製品を作成していたのですが、最近ファッションにも進出し、ファッションにまつわるプロダクトを今後開発していくようです。

出典:Newlight Technologiesウェブサイト

筆者も衣類を買うときに素材などを見たりしますが、これからはぜひヴィーガンレザーの素材自体にも注目していきたいと思います!

ファッションのサーキュラーエコノミーに取り組む企業

日本では平均で年間12着の衣類を手放すというデータがありますがそのうちの68%もが可燃、不燃ごみとして出され66%が埋め立てられる、と言われています。埋立地では数え切れないほどの衣類が一面を埋め尽くし、自然に帰らないため何年にも渡り残り続けます。
そんな衣類のサーキュラーエコノミーに取り組むスタートアップも多く存在しています。今は古着の販売やフリマアプリは既に多くの企業がサービスをリリースしている状況ですが、個人個人のやりとりや古着を専門としているサービスが多く、いらなくなってからのリユースがメインになっています。最初から一人のユーザーがその衣類を使わなくなった後を考えて取り組むことや回収・資源の再利用まで考えてサービスを提供しているスタートアップを紹介します。

子供服のサーキュラーエコノミーをしている会社

Mini-Cycleはカナダで2018年創業に創業された会社で中古と新品の子供服を販売しているのですが子供服自体の製造は行っておらず、サステイナブル要件を満たしたブランドものをピックアップして販売しています。Mini-Cycleがbuy backプログラムを行なっていて購入して2年間の間であれば買い取っています。この買取はMIni-Cycleで購入したものでなくてもブランドリストにあるものは買い取ってくれ、買い取った子供服は洗濯や手直しなどを行なって販売か他の商品を作る資源として活用されます。
服のライフサイクルは3年ほどと言われているのですが、子供服は子供の成長に伴うサイズアウトもあり、より使用期間が短くなっています。Mini-cycleと顧客の中でサーキュラーエコノミーが誕生するビジネスモデルとなっていてユーザーがMini-Cycleで衣類を買い、そしてBuy backプログラムを使用することで子供服が循環していくシステムになっています。サイト内にも工夫があり、服のカテゴリーとしてアップサイクルがあったり、“New” to “Well Loved”のランク分けを使用することで新品から使用感ありではなく愛された衣類として表記することで愛着を伝えています。

Mini-Cycleウェブサイト

一般的に服のライフサイクルは3年ほどと言われていますが、衣類自体はまだ着れる状態のことが多く、トレンドが変わってしまったり、私たちが一着の衣類に飽きてしまったり、まだ着れる衣類が着られないまま埋め立てにされることも多くあります。そんな問題に取り組もうとしているスタートアップを最後に紹介したいと思います。

ECサイトと提携して仮想ワードローブを作り衣類を循環させる会社

AirRobeはオーストラリアで2019年創業した会社でアイテムを自分の仮想クローゼットに追加して売りたくなったときに、売ることができ、自分の地域の人とアイテムの貸し借りができるサービスを提供しています。AirRobeのあるオーストラリアでは年間100万トンの服が埋め立てられています。しかし、衣類の多くがドネーションなどもされているのですが5着に4着が埋め立てられている現状があります。
そこでAirRobeではECサイトとの連携も始めているIconicという大手ECサイトにプラグインの提供をしています。プラグインを活用しているブランドやECサイとをサーキュラーファッションパートナーと呼び、ユーザーは買う時から見た目が新品に近い状態だといくらで売れるのか見れるようになります。そうすることでユーザーは売ったり貸したり、リサイクルすることを念頭に買い物ができるようになります。
このプラグインを使用して購入すると、購入の際に自分の仮想クローゼットに追加され、写真などを撮らなくてもコンディションを選択するだけで売りたいときに売ることができ、そして貸すこともできます。値段もアルゴリズムがつけるため中古になった時も、ブランドの価値が保たれる仕組みになっています。アイテムの売買、貸し借りの際に、19kgのCO2、95リットルの水、2kgの繊維廃棄物の削減をしたことがユーザーに表示されるようになっており、環境問題を念頭においてファッションを楽しむサービスを行っています。

出典:AirRobeウェブサイト

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3回にわたってファッションにまつわるESGをお届けしてきました。ファッション産業は、製造にかかるエネルギー使用量やライフサイクルの短さなどから環境負荷が非常に大きいこと、そしてその過程で様々な国の様々な人が関わっています。だからこそ多くのスタートアップや投資家がファッション業界の問題について注目しています。新しい素材でできた衣類や、私たちがお買い物をするECサイトでの行動なども少しずつ変わっていくかなと思うと楽しみですね。次回からのトピックは住居にまつわるESGについて取り上げていきます。過去のpodcastをまだご視聴頂いてない方は、こちらのリンクから是非ご視聴ください。

Podcast『ESG Talk ~IT企業社員が紐とくESG~』

(執筆:Rian 編集:Onlab事務局)

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SUSTINABLE FASHION 出典:環境省
動物由来でも石油由来でもない「培養レザー」って環境にやさしいの?【環境問題のギモンを解消!】
天然皮革をよりサステナブルにすることは可能?【環境問題のギモンを解消!】 出典:VOGUE
ナタリー・ポートマンとジョン・レジェンドは革ではなく菌糸の服を着る
Bolt Threadsがバレンシアガやグッチ、アディダスなどと新素材マッシュルーム代替皮革で提携 | TechCrunch Japan 出典:TechCrunch Japan
理想的な「ビーガンレザー」 意外な原料は 出典:CNN STYL
ビーガンレザーの現在地。代替品からメインへ――活況を呈するアニマルフリーレザー 出典:ELLE girl
キノコ由来のヴィーガンレザーに、ブランドから多くのラブコール 出典:forbs
【Circle Economyの視点#4】サーキュラーエコノミーで変わる消費者とファッションブランドのコミュニケーション 出典: Circular Economy Hub –

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