2022年02月22日
2021年のPodcast「ESG Talk 〜IT企業社員が紐とくESG」では衣食住に関するニュースやスタートアップなどさまざまなテーマについてお話しました。昨年お話した時点からさらにESGに関するフードロス・食品ロスの取り組み事例やファッションのアップデートされた内容とサステナブルな取り組み、スタートアップなどを交えながらお届けします。
Podcast:ESG Talk〜IT企業社員が紐とくESG
Contents
今回は飲料分野のお酒に関する話題をお届けします。お酒に関しても環境負荷の少ない製造方法や、フードロス・食品ロスを減らす取り組みを行う製造するメーカーも増えてきました。その中で山梨県で取り組みをされているFar Yeast Brewing(ファーイーストブルーイング)の事例を紹介します。山梨県はブドウの生産量が日本一(※1)であり、ブドウの他にもフルーツを多く生産していることで有名です。そのため、ワイナリーも山梨県内に数多く構えており、ワイン造りも活発です。しかしワインの製造過程では、味をよくするためにブドウの間引き「摘房(てきぼう)」という作業があります。摘房されたブドウはすべて畑に廃棄され畑の肥料となり、食べられる状態のブドウであるためフードロス・食品ロスとなっていました。
そこで、山梨にあるクラフトビールの製造・販売のfar yeast brewingでは、「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」から摘房されたブドウを安く譲り受け、独自の醸造方法でブドウの香りが楽しめるクラフトビール「Far Yeast Grapevine 2(ファーイースト グレープバイン ツー)」をつくりました。白ワインとビールの間のような味になるそうです。
このように山梨県内の企業では、製造している酒類に関係なく、フードロス・食品ロスを減らし地域発展のために、企業が横の連携を取って取り組みをしています。また、フクロウのマークでクラフトビールを製造している木内酒造は、新型コロナウイルスの影響で行き場を失った店舗の樽ビールを無料(送料負担)で蒸留し、クラフトジンにして店舗へ返す「SAVE BEER SPIRITS」プロジェクトを行っています(※2)。蒸留することによりクラフトビールよりも賞味期限を伸ばすことができ、店舗に在庫としてあるビールを廃棄せずにすることができます。
また海外の企業では、米国ニューヨーク拠点のAir Company(エア・カンパニー)が開発しているエア・ウォッカは、世界で最も持続可能なウォッカブランドを製造しています。製造工程で発生するCO2排出を抑えることができ、大気中からCO2を抽出して、それを水と混ぜてウォッカを作ることができます。
出典:Forbes
出典:Air Company
これらのように、お酒の製造方法や原料などに環境負荷を下げることを意識した取り組みがされており、将来店舗で並んでいるワインの銘柄と並んで、 ワインの製造方法や、フードロス・食品ロス削減を目的としたビール、など環境配慮された表記をしているメニューになり、製造過程のストーリーを含めて楽しむサービスが増えてくるのではないでしょうか。販売されている商品が環境に配慮されたものか、CO2を抑えられているかなどの情報が、消費者の選ぶ時の基準になる未来も近いのかもしれません。
出典:日テレNEWS24
出典:CNN
※1 農林水産省 令和2年産日本なし、ぶどうの結果樹面積、収穫量及び出荷量 参照
※2 2021年2月現在は申込を終了しております
過去のエピソードでは、動物性たんぱく質を活用しない、植物性由来の製品を開発している事例を紹介しましたが、今回は、植物性由来の卵についてお話しします。植物性由来の卵は、スクランブルであったり、既に調理されているものは多くありました。より本物に近づけるために、既に調理された形を製造するのではなく、本物の原料に近づける開発をしている企業、グリーンカルチャー株式会社が日本で開発を進めています。ゆで卵を開発し、食感だけでなく、白身と黄身のビジュアルも似せるように開発されています。本物に外見を近づけて、抵抗をなくすことも意図されているようです。植物性由来の食品に興味を持つ人が増え、多くの人が楽しめるような植物性由来の食品が今後増えてくるのではないでしょうか。
また米国サンフランシスコにあるイートジャストでは、遺伝子組み換えを行ってない緑豆原料とした植物生商品をや製造販売をし、ジャストエッグ(JUST Egg)が売られています。その卵関連の製品を通じて普段卵が食べれない人や抵抗がある人たち向けの方が卵を楽しめるように提供をしているそうです。
出典:グリーンカルチャー
出典:just-egg
スウェーデンに北欧の厳しい冬を乗り越える為に、不要なジャケットを掛けておくと必要な人が受け取れる「Wall of Kindness」という取り組みがありました。ジャケット、スカーフ、帽子、セーターなど、防御として使用できるアイテムを必要な人が受け取ることができるという取り組みです。古着として回収するのではなく、ダイレクトに必要としている方の手元に届き、中間の工数なども省けるシンプルな取り組みです。
ファッションは石油産業に次いで環境負荷がかかっている業界でした。製造工程の分業化が細かく、各セクションにて課題となる点が多いため、いろいろな取り組みがありました
。ファッションブランドZARAの親会社であるスペインのインテックス社がサステナビリティをさらに推進すると宣言しました。この宣言の内容は、2025年までに100%全ての製品を持続可能な素材から製造するというものでした。ZARAはファストファッションのイメージがありますが、そのファストファッションの定義に当てはまらないと説明しました。世界でのファストファッションのイメージを払拭させるためにも、環境のためにも大きな目標を掲げました。
また、インテックス社はMIT(Massachusetts Institute of Technology)や研究施設からテキスタイル分野で提携し、2020年までにもう既に3億7800百万円ほど関係設備に投資をしています。現在、25%が持続可能な素材で作られており、5年後に100%達成を目指しており、ZARAで購入する衣類全て環境配慮された素材でできるように取り組みを進めています。ブラジルではそのZARAの製品に、サプライヤーと製造業者の情報が入ったQRコードがついており、スキャンするとその情報にアクセスでき、透明性も担保されているそうです。
出典:WWDJAPAN
次に紹介するスタートアップは、DRESSXという米国LAを拠点にしているデジタルファッションです。こちらのサービスは2020年にローンチされたファッションECサイトです。近年SNSに投稿するために新しい衣類を購入している消費者が増えており、SNSに投稿後、その衣類を着用することなく、再度新しい衣類を購入し、再度SNS投稿をする。これを繰り返すため、衣類のライフスタイルが短くなり、必要以上の衣類を購入する問題がありました。その問題を解決するため、DRESSXのECサイトでは着用したいアイテムを購入し、自分の全身写真をサイトにアップロードすると、後日購入したアイテムを着用した状態の画像が送られてくるそうです。現実では着ることが難しい衣類を自分自身が着ている感覚を楽しむことができます。
ファッションが生み出す美しさや楽しさを保ちながら、生産量を減らして、よりサステナブルなファッション、もしくは生産しないファッションとして注目されています。これまでの購入した衣類が自宅にあるという常識がなくなり、デジタルでのみ存在することとなり、新しい概念としてこれから注目されるのではないでしょうか。
出典:DRESSX
最近米国ではクリスマスプレゼントで日常的に使えるものや環境に良いもの、自分が買うことによってチャリティーになるものをプレゼントするムーブメントがあるようです。日常的に使えてチャリティーになる贈り物として、サスティナブルな素材でできたトイレットペーパーがありました。こちらの素材は100%竹の素材でできており、なおかつ買うことで自分が選んだチャリティー募金になります。
出典:whogivesacraptp
また、生態系保護の観点からは、ゴリラの環境保護を目的としたギリシャ発祥のThatGorillaBrandというアパレルブランドがあります。そのブランドの商品を購入することで購入した金額の一部がそのゴリラの保護のために活用されます。ゴリラは絶滅危惧種に指定されており、主に中央アフリカに生息していますが、木材や鉱物を採集するための森林伐採や密猟にあい、大幅に減少しています。以前に比べて、生息数を戻しつつあり、危険度が一段階下げられましたが、絶滅危惧種として指定されているので、保護が必要な状況です。これらの商品のように環境に配慮していたり、自分の購入金がチャリティーに使われたりとストーリーがあることで、商品を選ぶ基準になるかと思います。
出典:thatgorillabrand
商品を選ぶあたらしい基準として、その背景にあるストーリーがあることで、消費する私たちの環境への意識や気付きなどの小さな変化に繋がっていきます。ファッションのエピソードで取り上げた、仏のスタートアップclearfashionのように、 洋服に関してESGが配慮されているかスコアリングをするツールが近年増えはじめています。今後はレストランや身近な飲食店でスコアリングができる時代になるのではないでしょうか。そしてESGの取り組みを見える化することで、消費者がお店選びの基準とし、ESGの取り組みを通じた消費や購入を望んでいる消費者やそうでない層への興味付けになるのではないでしょうか。ESGのスコアリングできるツールを日本でも一般化することにより、消費者側にもエシカルな消費を促すことが今後伸びてくるかと思います。
出典:clear-fashion
(執筆:Rena 編集:Onlab事務局)