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2022年これからのESG「フード」と「ファッション」|ESG Talk #14

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2021年のPodcast「ESG Talk ~IT企業社員が紐とくESG」では衣食住に関するニュースやスタートアップなどさまざまなテーマについてお話しました。今回は昨年お話した時点からさらにESGフードやファッションのアップデートされた内容と最新事例、スタートアップの取り組みなどを交えながらお届けします。

Podcast:2022年のフードとファッション~新しい価値観~ESG Talk ~IT企業社員が紐解くESG~

 

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フードテックスタートアップ・培養エビを開発するシンガポール発「Shiok Meats」

「食」に関しては、甲殻類の培養肉を開発しているアジア発のスタートアップ、大手ハンバーガーチェーンの取り組みと、「衣」ファッション業界の新しい価値観についてお伝えしていきます。人口増加や環境問題などの課題に取り組むさまざまなスタートアップが台頭し、各分野において開発が進んでいるなか、はじめにシンガポールを拠点に「培養エビ」を開発しているスタートアップ、Shiok Meats(シオック・ミーツ)を紹介していきます。培養肉というと動物性の豚や鶏を想像するかと思いますが、甲殻類のエビをプラントベースフードとして提供しています。Shiok Meats(シオック・ミーツ)は「日経アジアアワード」の第1回の受賞者で、シンガポールの食品テック企業です。エビやカニなど甲殻類の培養肉の開発をしており、食料問題に取り組まれています。甲殻類の培養肉の開発は高度な知識と高額な設備が必要とされ、参入する企業が少ないそうです。
しかし、アジア料理でエビは欠かせない食材であり、近年の海洋汚染や人口増加により、エビを中心とした甲殻類不足が問題とされております。また、エビの養殖場を作るために、大量のマングローブ林が伐採され、深刻な問題とされています。さらに、天然のエビを捕る際、その他に捕れる魚介類は廃棄されるため、多くの資源がロスとなっています。従来の企業においても、大豆などの植物由来の原料を使用し、商品として市場にはありましたが、本物の甲殻類に近い味わいに課題がありました。シオック・ミーツでは高度な生物学の知識と、技術力を駆使し、実際の魚介類に限りなく近い味や栄養素を再現できる可能性が高いとされています。
コスト面では、一般の天然エビの相場と比べると高い値が付き、1kgあたり50ドルまでコストを近づける課題がありますが、2020年9月には東洋製缶グループホールディングスから出資を受け、高い技術力に合わせ、設備投資などを行い、生産、供給の強化を図っています。2022年には商業販売を目指しており、培養エビのミンチ肉がより一般向けとなり、アジアでの持続可能な食文化の発展を今後期待されるスタートアップです。

出典:日経新聞社「日経アジアアワード」に培養エビのシオック・ミーツ

大手ハンバーガーチェーンプラスチックゴミの削減への取り組み

大手ハンバーガーチェーンの日本マクドナルドは、2022年2月から木製のカトラリーと紙製ストローの導入を横浜エリアの一部店舗で導入を開始し、その後提供店舗を増やす予定とリリースしました。プラスチックゴミの削減が世界的な課題となる背景には、2016年の世界経済フォーラムの報告書によると、2050年までに海洋中に存在するプラスチックの重量が魚の量を超過すると予測されるなど、プラスチック廃棄の対応が迫られているためです。
そのため、食器、カトラリー、ストロー、風船の柄、綿棒などの使い捨てプラスチック製品や
酸化型分解性(oxo-degradable)の袋や包装材、発泡ポリスチレン製のファストフード容器などが規制対象としてあげられました。その他にも規制対象以外のプラスチックに対する方針などが制定され、プラスチック製品を扱う企業は対応を迫られております。他にもきっかけはありますが、「プラスチック資源循環促進法」が2022年4月に施行されることにより日本国内の企業に対応が急務となっています。
そのような時代背景の中、日本マクドナルドでは、カトラリーや梱包に使われる紙などは、森林環境に配慮してつくられた「FSC認証材」を使用し、木製のカトラリーを揃えました。一部こども用の曲がるスプーンは開発が困難な理由から現行のプラスチックを引き続き採用ですが、全国導入時には年間900トン相当のプラスチック削減を見込み、マクドナルドのような大手飲食店の取り組みは社会に大きなインパクトを与えるのではないでしょうか。また、2020年に店舗で廃棄されたプラスチックはEat-inの廃棄物のみの量で、約5700トンだったと発表があり、これからの取り組みにも注目です。

出典:Business insider japan

サステナブルファッションの新しい付加価値

第7~9回「ESG Talk Talk ~IT企業社員が紐とくESG」にかけてはファッションについてお届けしました。衣類の原料輸送、製造から販売、消費者に商品が届き、その後の廃棄された衣類について各セクションに注目してお届けしました。ファッション産業の華やかなイメージの裏には、石油産業に次いで二番目の環境汚染要因とされているとお話しました。原料の輸送、製造過程におけるCO2排出、また衣類のライフサイクルの短さ等が原因にあげられます。そのため、どの過程においても改善は急務。また、メーカー側も改善をする必要がありますが、我々購入者側も価値観を変える必要があります。そのため世界的に活躍しているデザイナーやインフルエンサーが新しい価値観を創造し、メディアなどで発信をしています。今回は日本企業のサステイナブルの取り組みを一部紹介します。
三越伊勢丹など6社が、廃棄予定であった中古のデニムを活用して作る商品を販売するプロジェクト「デニムdeミライ」を始動。世界中のブランドやデザイナーと取り組み、服や雑貨だけでなく、アートや家具など150以上の商品を再利用し、付加価値を付けた商品を展開します。2022年3月から発売すると発表し、東京や大阪などの各店舗で扱っています。
過去のpodcastでデニムの生産についても触れましたが、生産過程で数千リットルの廃水を出すなど、デニムの生産は環境負荷が大きく、大きな課題とされておりました。このような影響力のある大手百貨店などが取り組むことにより、消費者へ現状の環境問題と価値観の変化が期待できると考えられます。
そのため、消費者側の価値観を変えることも急務です。その一環として、海外ではセレブのファッションの価値観も変わりつつあり、海外セレブは環境保全に配慮された”エシカルファッション”を取り入れ、“同じドレスを2回着るのはタブー”という業界の常識をセレブが払拭してきています。リサイクル素材など環境に優しい生地を使った衣類を着用することで、世界のファッション業界に大きな影響を与え、一人一人の行動変容することが急務とされているのではないでしょうか。我々もすさまじいスピードで変化するファッションの流行に流されず、環境、人権面などの背景を頭に入れつつ、サステイナブルな変化が求められています。

出典:三越伊勢丹ホールディングス

(執筆:Rena 編集:Onlab事務局)

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