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バーチャル福岡、グリーン、ESG。「まずやってみよう」から始まる、スタートアップと福岡地所のまちづくり|Onlab FUKUOKA

バーチャル福岡、グリーン、ESG。「まずやってみよう」から始まる、スタートアップと福岡地所のまちづくり|Onlab FUKUOKA

スタートアップと共に、New Normalに求められるスマートシティ・スマートライフを実現する事業組成を目指すOpen Network Lab FUKUOKA(以下「Onlab FUKUOKA」) 。福岡を中心とした企業とのオープンイノベーションを通し、5G、xR、デジタルツイン等の技術を活用したビジネスを含む、快適で質の高いライフスタイルと都市空間の創出、世界に誇れるまちづくりを目指します。

そんなOnlab FUKUOKAは3rd Batchを2022年7月から11月の期間で開催します。お申し込みは2022年5月31日(火) 正午までです。

Onlab FUKUOKA 3rd Batch プログラム参加チーム募集中!
https://onlab.jp/programs/fukuoka/

今回は、Onlab FUKUOKAの協賛企業である福岡地所株式会社(以下「福岡地所」)の藤村さん・吉丸さんをお招きし、プログラムディレクターの大木と共に、Onlab FUKUOKAでのこれまでの取り組みや、福岡地所として注目している領域、スタートアップとの関わり方について伺いました。

< プロフィール >
福岡地所株式会社 事業創造部長 藤村 秀雄

1997年に銀行員として社会人生活をスタート。2001年よりプライベート・エクイティ投資会社に参画し、小売業、コールセンター、プリント基板メーカー等幅広い業種への投資を担当。投資先の執行役を経て、福岡地所に入社し、昨年6月より事業創造部長として新規事業の立ち上げやスタートアップとの協業を行っている。

福岡地所株式会社 事業創造部 吉丸 千尋

2011年入社。商業施設運営、人事を経験したのち、2019年事業創造部立ち上げのタイミングで配属。事業創造部では主に新規事業開発や社内での新規事業アイデアコンペの企画運営を担当。

Open Network Lab FUKUOKA プログラムディレクター 大木 健人

不動産デベロッパーにて企画開発に従事したのち、2019年よりデジタルガレージに参画。Open Network Lab FUKUOKAのプログラムディレクターとして、スマートシティにおけるテックの社会実装を目指し、不動産、金融、ヘルスケアなど多岐に及ぶオープンイノベーションを推進。一級建築士/宅地建物取引士。

地域創生のための未知なる挑戦、福岡地所がバイオに投資した理由

― 藤村さんと吉丸さんの所属と役割を教えて下さい。

藤村(福岡地所):
福岡地所は2022年に創業61年を迎える、福岡を拠点として、都市開発、住宅開発、オフィス・商業施設やホテルなどの開発運営など幅広い事業を展開する会社です。我々が所属している事業創造部の役割は大きく2つ、1つが自社での新規事業開発、もう1つがFUKUOKA Growth Next(以下「FGN」)という、福岡の大名小学校跡のスタートアップ支援施設の運営です。

福岡地所 藤村さん
福岡地所 藤村さん

吉丸(福岡地所):
これまで新規事業を創出するための社内コンペや新規事業開発のための検証活動を進めてきました。また今回のOnlab FUKUOKAのように外部の方とのコラボレーションを促進する取り組みの旗振りもしています。

― 事業創造部が関わった新規事業にはどのようなものがありますか?

藤村(福岡地所):
子会社から出たアイデアを形にするため伴走した案件があります。子会社の株式会社エフ・ジェイエンターテインメントワークスが、荷主様であるEC事業会社の物流支援をする会社、エフ・ジェイロジ株式会社を新たに設立。EC事業会社に商品の保管倉庫をご紹介し、注文が入った商品を倉庫内からピッキングして梱包等の加工を行ったうえで出荷し購入者へお届けする、「物流のアウトソーシング」を担うサービスを開始しました。

吉丸(福岡地所):
事業創造部はスタートアップへの投資も主導しています。2022年3月にはバイオ3D プリンタ「Regenova」を開発する株式会社サイフューズと業務資本提携を締結しました。

藤村(福岡地所):
これまで福岡地所は、それほどスタートアップへの投資をしてきたわけではありません。しかし昨今の情勢に鑑みて、新しいことに取り組むためにはスタートアップへの投資やM&Aもやっていかなければならないと考えて、2021年度後半からより本格的に検討を始めました。サイフューズは九州大学発のスタートアップで福岡に縁のある会社ですし、バイオメディカルコミュニティ構想という新たな分野に進出し、福岡のさらなる発展に貢献していきたいという福岡地所の考えに合致していたので、出資と業務提携をさせていただいたんです。

― 年度の途中でも新たに方針を設け、投資実行に至っているのはすごいですね。とは言え、再生医療・バイオ3Dプリンタについては、社内の誰もが門外漢だったと思います。そんな中提携に漕ぎ着けるのは、社内でも苦労があったのではないでしょうか。

藤村(福岡地所):
本当に大変でした。事前に厚めの説明資料を経営陣に読んでもらったり、サイフューズが取り上げられたメディアを共有したり、当然専門的な分野については最初はわからないことも多かったのですが、社内ではそれでも「まずこの取り組みに挑戦してみよう」と意思決定してくれました。もともと九州大学発のスタートアップですし、そういった会社を応援するもの我々の役目だ、という気持ちが意思決定を後押しした面もあります。

― 新規事業をやる上では「実際にやってみる」という精神は非常に重要だと思います。社内ではそういう風土になっているのでしょうか。

吉丸(福岡地所):
事業創造部ができた直後は、やはりわからないものへの反応は鈍かったんです。それが3年経ってバイオ系の会社に出資するまでになり、徐々に社内にも、自社のノウハウがそのままでは通用しないような新しいことへチャレンジする精神が浸透しているのかなと感じています。

福岡地所 吉丸さん
福岡地所 吉丸さん

― そもそも福岡地所は、どうしてオープンイノベーションへ関心をもったのでしょうか。

吉丸(福岡地所):
やはりFGNの運営に参画した影響は大きいです。せっかくFGNという施設を運営してスタートアップと関わっているのだから、そこから得られた情報をイノベーションに繋げていきたいという思いがふつふつと湧いてきました。

藤村(福岡地所):
福岡地所の社長である榎本も運営委員会委員長としてFGNに関わっているのですが、スタートアップが日々事業に向き合う姿や事業判断のスピードに接して、刺激されるところがあるようです。

我々は福岡を地盤としたデベロッパーなので、当然リアルへの密着度が高い。しかし変化が激しいこの世の中で、それだけだとどうしても刺激や情報が片寄ってしまう。しかし全く畑の違うスタートアップが集まる施設を運営することで、色んな情報が入ってきて刺激になっています。これは非常に大きなFGN運営のメリットですね。

Onlab FUKUOKA 大木
Onlab FUKUOKA 大木

大木(Onlab):
福岡地所さんはじめFGNの面々は「コミュニティを外に開くべきだ」と考え、外の人との関わりの中で新しいことにチャレンジしていこうとされていらっしゃることを強く感じます。それもあって「まずはやってみよう」がキーワードになって、価値観や行動基準となっているのではないでしょうか。こういう行動が地域の中でこれから伝播していくと、元からある地域の横のつながりも良い作用となり、もっと良いエリアになっていくのかなと思います。

FUKUOKA 3rd Batchはスタートアップと一緒に事業をつくる気概で

― Onlab FUKUOKAには、1st Batchから参加いただいていますが、これまでの取り組みを教えてください。

吉丸(福岡地所):
Onlab FUKUOKAという企画を聞いてすぐに参加を決めましたが、最初は探り探りだったので、デジタルガレージの皆さんに協力して頂きながら、1st、2nd Batchを終えて、今回3rd Batchを迎えます。これまでには免税手続きの煩わしさを解消するためにPie Systemsとの協業を模索したり、MYCITYとオフィスの可能性を考えたりしてきました。

大木(Onlab):
デジタルガレージとしても協賛企業としても、当然第1期は手探りでした。「スタートアップと協賛企業のそれぞれの時間軸でPoCを設計するというのは難しい」「社内の上申にも色んなコストがかかる」というのが大きな学びです。とは言え成果がなかったわけではなく、コロナ禍になってご協議は一旦ストップしたとはいえ、pie sysytemsは本program以降日本法人を設立し、アフターコロナの免税需要に向けて準備をしています。福岡地所さんとの議論の中で免税店舗の日本でのリアルな課題をヒアリングしたことでの取り組みが進んだのは喜ばしいことです。

藤村(福岡地所):
私は2回目の途中で事業創造部に来たのですが、やはり大木さんの言う難しさは感じました。「とりあえずやってみる」とは言っても、我々の部署以外は本業を優先させなければならないため推進に時間がかかることもありますし、稟議や会議だって必要です。

藤村(福岡地所):
これまでのOnlab FUKUOKAで学び、次に生かしたいのは「もっとこの機会を利用しよう」「どんどんスタートアップにリクエストしよう」という気持ちを、福岡地所サイドがもつことです。今までは「スタートアップに提案頂いたことをやってみる」という形が多かったのですが、スタートアップからの提案が必ずしも実務のベストだとはかぎりません。実務や現場を見ている我々にしか見えない課題や顧客のニーズをちゃんと伝え、スタートアップと一緒になって、事業を作り上げていきたいです。その結果、スタートアップの提供するサービスが、全国・世界で使われるようになってくれれば嬉しいですね。

吉丸(福岡地所):
前回までは「完成されたサービスを受け入れたい」という意向が強かったのかもしれません。「こういうふうにしてくれたら使えます」とリクエストすればいいのに「この機能がないなら使えないです」で話が終わってしまっていました。藤村が言ったように、スタートアップと一緒に作り上げていく精神で次は臨みたいです。

バーチャル福岡、グリーン、ESG……福岡地所の重点領域

― Onlab FUKUOKA 第3期では、以下の6つの重点テーマを掲げています。福岡地所として興味があるのはどれでしょうか。

吉丸(福岡地所):
どれも面白そうなんですよね(笑)。

大木(Onlab):
そういっていただけると嬉しいです(笑)。

この6つのテーマは、市場の期待はもちろん、日頃から福岡の方々とお話しする上で注目度が高いものをピックアップしました。協賛企業の方々が絶対に関心のある領域なので、関連するスタートアップにはぜひ参加を検討いただきたいです。

特にバーチャル福岡についてはニーズがあると感じています。あるメタバースのスタートアップがよく講演をしているそうなのですが、不動産業界からのリクエストが多いとのことでした。盛り上がりを見せつつあるバーチャルを介した都市体験をうまくリアルの不動産アセットと連携させることにより、より豊かなまちづくりができるのではないか、と不動産業界でもチャンスを探る動きが出てきています。なのでバーチャル福岡についての提案には特に、触手が伸びるんじゃないですかね。

吉丸(福岡地所):
確かに、リアルな不動産の対局にある「バーチャル福岡」には興味がありますね。弊社が開発し2021年に竣工した天神ビジネスセンターをデザインしてくださった重松象平さんが、バーチャル渋谷を作っているKDDIの中馬和彦さんとテレビで対談していたんです。リアルとバーチャルどちらか一方ではなく、両者を行き来するというのが普通になる可能性を感じて、面白い時代の到来を感じました。

藤村(福岡地所):
この1〜2年で脱炭素の動きが激しくなっているので、グリーン・ESGという点についても、もちろん関心のあるところです。福岡地所だけではなく、テナント企業の方々としてもニーズがある分野だと思うので、それに応えていかなくてはならないという側面もあります。

デジタルヘルスも関心領域です。我々は空間を提供している会社ですが、その中で色々なデータを取れるはずだとは思いながらも、何をどう使うかが描ききれていません。なのでそこを上手くご提案いただければ、可能性のある分野だと認識しています。

吉丸(福岡地所):
藤村の言う通り、データをどう使うかという点には気を揉んでいます。例えば、よりよい空間をつくるには、どういうデータを分析するべきなのか、空間をどのように変化させるべきなのか、など当社だけで考えるには難しい課題がたくさんあると感じています。

藤村(福岡地所):
もちろん今挙げたもの以外の提案も歓迎しています。我々が想像できていないようなプランもあるでしょうから、ぜひご提案いただければと思います。

― 最後に応募を検討しているスタートアップへのメッセージをお願いします。

吉丸(福岡地所):
私どもは不動産デベロッパーなので、実証実験のフィールドとして使っていただけるであろう、様々な種類のリアルな場所を抱えています。私たちが今想像している使い方以外にも、「そういうふうにスタートアップの人たちはリアルな場を捉えているんだ」と驚くような出会いがあると嬉しいです。

藤村(福岡地所):
まだまだ福岡地所にはこういう可能性もあるのか、と我々に気付かせていただけるようなアイデアは確かに望んでいます。「大胆にチャレンジしよう」という気概にあふれた方々と是非ご一緒したいです。

大木(Onlab):
福岡地所の皆さんの意気込みを大きな炎にできるように、デジタルガレージもサポートしていきたいと思っています。

大木(Onlab):
今回、福岡市と九州経済連合会が新たに後援団体として応援してくれることになりました。プログラム期間後になるかとは思いますが、福岡地所さんが取り掛かった案件を、いち企業に留まらず地域に還元するような体制になっています。地域を挙げて支援していくプログラムになっていますので、ぜひご応募をご検討いただけると嬉しいです。スタートアップの皆さん、藤村さん・吉丸さんとお待ちしています。

藤村・吉丸(福岡地所):
はい、ご応募お待ちしています! 福岡地所と一緒に福岡から世界に誇れるまちづくりをしていきましょう。

Onlab FUKUOKA 3rd Batch 詳細はこちらから

2022年7月から11月にかけて開催するOnlab FUKUOKA 3rd Batch。お申し込みは2022年5月31日(火) 正午までです。
悩んでいる方は、お気軽にご相談下さい

(執筆:pilot boat 納富 隼平 撮影:taisho 編集:Onlab事務局)

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