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「Open Network Lab ー Open Innovation ー」始動。本プログラムの特徴とは

「Open Network Lab ー Open Innovation ー」始動。本プログラムの特徴とは

2022年デジタルガレージは、グローバルで活躍するスタートアップの育成と投資を行う「Open Network Lab(以下「Onlab」)」は支援体制の強化を発表しました。その一環としてこれまでResi-Tech、BioHealth等分野特化で運営してきたオープンイノベーションを1つにまとめ「Open Network Lab ─ Open Innovation ─(以下「Onlab Open Innovation」)」として再始動します。Onlab Open Innovationの目的は、スタートアップが大企業や行政と協業し、新たな価値を生み出し社会実装を推進すること。協業パートナーの業界や領域に加え、事業会社としてデジタルガレージが持つFinTechやマーケティング領域、web3やESG等のさまざまなビジネスリソースも活用しながら、スタートアップが協業パートナーと高速でビジネス検証・開発をできる体制や環境を構築していきます。

本記事では、Onlab Open Innovationの概要、スタートアップ・協業パートナーの参加メリット、オープンイノベーションを生み出すための仕組み等について、担当するデジタルガレージの大木、田端、松本の3名にインタビューをしました。協業を生み出すため不可欠なのがスタートアップとパートナー企業の相互理解。新しい Onlab Open Innovationは、一体どのような特徴があるのでしょうか。

< プロフィール >
Open Network Lab Open Innovation | FUKUOKAプログラム統括 大木 健人

2019年より株式会社デジタルガレージに参画。Open Network Lab FUKUOKAのプログラムディレクターとして、スマートシティにおけるテックの社会実装を目指し、不動産、金融、ヘルスケアなど多岐に及ぶオープンイノベーションを推進。一級建築士/宅地建物取引士。

Open Network Lab Open Innovation 担当 田端 俊也

慶應大学大学院メディアデザイン研究科卒。Royal College of Art / Pratt Instituteへの留学でデザインを学ぶ。卒業後、ヘルスケアスタートアップで事業開発、株式会社NTTデータ経営研究所で新規事業開発及び組織開発のコンサルティングに関わる。その後、デジタルガレージ にてOpen Network Lab BioHealthのプログラムディレクターとしてBioHealth領域の投資・経営支援・協業を担当。

Open Network Lab Open Innovation 担当 松本 翔太

2007年にデジタルガレージグループの広告代理店であるDGコミュニケーションズに入社。入社1年目に不動産ポータルサイト立ち上げに携わり、その後デベロッパーをメインクライアントとする広告営業部門に配属。営業担当として不動産物件のマーケティング調査からコンセプト立案、クリエイティブ、広告施策の企画・提案から実施までをワンストップで行う業務に従事。2018年よりOpen network Lab推進部に参画。大手デベロッパーとの暮らし・不動産領域におけるスタートアップの発掘・支援を目的とするOnlab Resi-Techを担当。

業界横断で価値をつくり社会実装を目指す、本気のオープンイノベーション

― まずは皆さんの役割とOnlab Open Innovationについての概要について教えてください。

大木:
Onlab Open Innovation プログラム統括の大木です。私は福岡を拠点として、スマートシティやスマートソリューションを社会実装するプログラム「Onlab FUKUOKA」の責任者も兼務しています。

株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 大木 健人
株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 大木 健人

大木:
Onlab Open Innovationはデジタルガレージがスタートアップのテクノロジーを社会実装してきた実績とナレッジを活用し、既存の産業との共創による新たな価値創造を実現する目的で誕生したプログラムです。スタートアップと各産業との共創により最新テクノロジーの社会実装を推進し、福岡、渋谷、札幌などの主要都市・エリア間で連携し、スタートアップエコシステムの構築や地域イノベーションを促進し、スマートソリューションの社会実装を推進していきます。

田端:
Onlab Open Innovationの企画・設計や主にスタートアップ募集を担当している田端です。私はー昨年よりOnlab BioHealthを担当しており、ヘルスケア領域のノウハウやネットワークを駆使してスタートアップの支援をしてきました。今回のプログラムではご応募頂いたスタートアップ企業と協業パートナーとの間に入ってプロジェクトを推進する役割も担います。

株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 田端 俊也
株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 田端 俊也

松本:
Onlab Open Innovationで企画・設計や主にパートナー企業の担当をしている松本です。私はこれまでOnlab Resi-Techを担当していました。元々DGコミュニケーションズというデジタルガレージの子会社で、不動産の広告営業をしていたので、不動産デベロッパーの方々が目指す方向性や抱えている課題、協業におけるハードルなどは理解しているつもりです。

私は過去にも業界特化のオープンイノベーションプログラム(Resi-Tech)を運営してきましたが、オープンイノベーションには「越境」が大事な要素だと感じています。不動産デベロッパーだからといって業界DXの課題にだけ向き合うのではなく、Resi-Techで採択したOiTr(オイテル)のように施設やオフィスの利用者にむけたヘルスケア系のサービスが、複数の不動産デベロッパーで一気に導入する、というような協業の事例も生み出しています。

株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 松本 翔太
株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 松本 翔太

大木:
たしかにそうですね。私もOnlab FUKUOKAでそんな経験がありました。具体的な事例の一つとして、Onlab FUKUOKAでは、スマート南京錠システムを開発するKEYesスマート南京錠システムを開発するKEYesを採択しました。そもそもの事業の着想が、不動産業で土地・マンションの売買・賃貸仲介業務を担当していた代表が感じる課題であったので、当初は不動産会社様に絞って営業していたのですが、プログラムではガス事業会社とマッチングしています。ガス会社は設備の法定点検が必要ですが、点検する施設が何箇所もあるため、鍵の管理や引き継ぎが非常に大変なのだそう。そんなときスマート南京錠の話を聞いて、既存の鍵をスマート南京錠にリプレイスすれば管理の手間を大幅に削減できると協業案をKEYsと一緒に提案しました。その後、ガス事業会社がKEYesに興味をもちサービスを導入。結果的に協業だけでなく出資を通してのご支援もいただきました。

大木:
KEYesの例のように、特定の産業に絞って話をしていたけれど、実は他の業界に(も)ニーズがあったという話は、これまでにもいくつもあがっています。業界横断のプログラムなら、スタートアップがニーズを発見しやすくなる。そんな気づきもあり、Onlab Open Innovationは、業界を横断した様々な企業にパートナーとなっていただいています。

田端:
スマートシティやDX・不動産だったら大木や松本、ヘルスケアだったら私。その他にもデジタルガレージには決済などのFintech領域、デジタルマーケティングやweb3、ESG領域を専門とするメンバーもいます。Onlabのインキュベーションメンバーが一丸となり、DGグループが持ち合わせる知識やノウハウを総動員することで、スタートアップの皆さんから応募いただいた新規事業アイディアをあらゆる側面からブラッシュアップしていける、それが結果としてスタートアップ・パートナー企業の双方にとっての価値になると信じています。

松本:
スタートアップの大企業との協業スタイルも、柔軟に考えていきます。個別に協業するもよし、コンソーシアム型として業界全体に提案するもよし、将来的な規制緩和も見据えながら自治体と協議をするもよし。様々な切り口を、案件毎に提案していく予定です。

Open Innovationテーマと協業検討までの期間や実施スケジュール

― 今回のOnlab Open Innovationで募集するテーマ(領域)を教えてください。

松本:
主として以下のテーマを募集しています。先述したようにOnlab Open Innovationは業界横断のプログラムで、大テーマだけでも11個あり、創薬や医療機器、純粋なハードウェアは除外となりますが、多くのエリアをカバーしています。医療系のSaaSやIoTも対象になる可能性は十分にあります。

今後スタートアップやパートナー企業のニーズや意向も踏まえ拡張していく可能性もありますので、最新情報はOnlab Open Innovationのページでご確認ください。

― Onlab Open Innovationのスケジュールを教えてください。

田端:
現在、スタートアップの募集を開始しており、募集締切は3月31日迄。そこから約3ヶ月をかけ、審査や面談を通じて協業案を我々と一緒に議論する期間を設けます。選考過程で応募頂いた事業アイデアをどう実現させるのか、パートナー企業に協業案をプレゼンテーションする最終選考があるのですが、そこまでの期間に議論を重ねることで、プロジェクトPoCや協業の実現可能性を高め、その先の検討期間として用意している4カ月間への動き出しがスムーズに進むよう設計しています。11月にはプロジェクト成果報告会やメディア露出なども予定しています。

― なるほど。1年近くかけてプログラムを運営していくイメージですね。

大木:
その通りです。ただ、プログラム自体は約1年間ですが、スタートアップとパートナー企業との取り組みはもっと長い目で実行していく可能性があります。プロジェクトの内容やマイルストーン次第で、長い時間が必要なプロジェクトがあるからです。プロジェクトによって、短期・中期・長期と、どういったスパンで成果を出していくのがベストかは、スタートアップ・パートナー企業とディスカッションしながら決めていきます。

― 選考やパートナー企業とのディスカッションはオンライン中心で進めるのでしょうか。

田端:
基本的にはオンラインで進めていきます。そもそもパートナー企業の中には福岡や関西の企業もありますからね。ただ、最終報告会などはネットワーキングも兼ねていますので、リアル開催での実施を予定しています。その他にも、勉強会やパートナー企業とのネットワーキング機会のイベントも検討していて、これらは、東京だけでなく福岡などでも開催したいと思っています。

― パートナー企業にはどのような会社がいるのでしょうか。

大木:
最終的には10社程度になる予定です。詳しくは募集ページをご確認ください。

田端:
また今回、福岡市や札幌市と連携するので、自治体との連携が必要なビジネスでも、社会実装に本格的に踏み込むことができると考えています。

大木:
一口に自治体と言っても、都市によって課題やニーズが異なります。これまでOnlab FUKUOKAやOnlab HOKKAIDOで自治体や地域のニーズや課題を把握してきた経験も活かして、スタートアップの力になっていきたいですね。例えば福岡市はOnlab FUKUOKAでご一緒してきましたが、web3の規制緩和特区申請をしていたりします。

― なるほど。業界横断は、スタートアップだけでなくパートナー企業にもメリットがあるのでしょうか?

田端:
そうですね。パートナー企業もスタートアップと同様にメリットがあると思います。もちろん、本業の領域については普段から情報収集をされていらっしゃると思いますが、先述したように、事業チャンスというのは必ずしも本業の周辺だけではなく、他の領域にも眠っているはずです。そのため、必ずしも不動産テック、ヘルステックといった分野単位で情報収集するのではなく、業界やテクノロジー横断でイノベーションの種を探索しなければなりません。

とはいえ、領域外の事業については、個社単位だとナレッジを集めたり深堀りするのにも時間がかかります。そのため、スタートアップから事業の提案を頂いたとしても、本当にそれがよい提案なのかどうか判断できないというご意見も少なくありません。そんなとき、我々Onlabが間に入って、業界の情報を提供したり、分野ごとのスタートアップの目利きをする。それがパートナー企業にとってのOnlab Open Innovationの価値になると認識しています。

松本:
例えば、最近のトピックだとメタバースやESGに関心が集まっていますが、必ずしもすべての会社がこの分野に詳しいわけではありません。その点Onlabの運営母体であるデジタルガレージは、いち早くブロックチェーンやweb3領域への投資や事業開発を推進しています。またESGに関しても、専門のチームを有し、気候変動や社会課題を解決するようなスタートアップの事業で企業のESG経営を支援するようなサービスや、今後企業が取り組むべきESG経営のための情報を国内外から収集しています。またDGグループが持つネットワークの中からの知見やノウハウをもつ社内のアドバイザーをOnlab Open Innovationにアサインするなど、デジタルガレージグループが一丸となって、パートナー企業とスタートアップの事業共創に貢献していくつもりです。

事業アイデアの大小に関わらず、社会実装を推進するのがゴール

― 応募するスタートアップにとってどんな提案をしていくのがよいのか、押さえておくポイントはありますか?

松本:
不動産特化のプログラムだったら不動産を念頭に置けばいいので協業案も考えやすかったかもしれませんが、業界横断のプログラムとなると、逆にどういった協業案を描いてパートナー企業にぶつけるかが難しいと考えるスタートアップもいるかもしれません。Onlab Open Innovationでは、選考過程でどういった提案が協業企業に刺さるのかを、一緒になって考える期間を設けるので、我々とスタートアップの皆さんでパートナー企業の課題はどこにあるのか、ニーズはどこにあるのか、実は他の業界にも適用できるのではないか。様々な角度から可能性を考えます。ですので、選考過程で議論の俎上に載せられる内容でご応募いただけるとよいのではないかと思います。

大木:
すべてのスタートアップで実現されるというわけではありませんが、パートナー企業がCVCや投資機能をもっている場合、Onlab Open Innovationでの協業が結果的にパートナー企業からの投資に繋がる可能性があります。例えば、過去にResi-Techに採択されていたTHIRDは、パートナー企業複数社と共同で実証実験をして、共同でサービス導入、共同で出資を受けています。Onlab Open Innovationはスタートアップにとって、さまざまなメリットがあるプログラムになっています。

― 参加するスタートアップのステージに条件はあるのでしょうか?一般的にオープンイノベーションプログラムは、アーリーミドル以降のスタートアップを募集しているイメージがあります。

大木:
確かに、シード期だと協業に至るまでに時間がかかってしまうこともあって、収益化の兆しがみえ始め、社内メンバーも協業にアクセルを踏めるぐらいの規模のほうがいいかもしれません。ただ過去のプログラムではシードのスタートアップでも上手くいっているケースはあります。例えばビジネスの仮説検証に協業パートナーやデジタルガレージに付き合ってほしいというケースならご協力できるかもしれませんし、そういったケースも大歓迎です。OnlabではOnlab Open Innovation以外にもOpen Network Lab ー Seed Accelerator ーやweb3、北海道や福岡などエリアでの展開の可能性もあるので、あまり型にこだわらず、ノックしていただければと思います。

松本:
オープンイノベーションプログラムの難しい点は、パートナー企業が魅力を感じてくれないと何もスタートしないという点です。我々としてもスタートアップの強みとパートナーの課題の双方を理解してお互いのことをお伝えしますが、最終的にはパートナー企業に首を縦に振っていただかないといけない。そこはポイントですね。

田端:
そうですね。「パートナー企業が抱えている課題を解決できます」だけではなく、「そもそもなぜ解決しなければいけないのか」「解決した先の未来はこうなる」「他にもこういう展開や可能性がある」といったように、視座高く提案できる方が印象に残ると思います。あとは、「こういうことをやりたい」というパッションが大事です。スタートアップの皆さんの事業スコープとして実施すべき意義を持ち、その上でそれをどうやってパートナー企業に伝えるかだと思います。

松本:
単に目の前の課題を解決するためのソリューションだけだったら金額や品質の話しかできませんが、高い視座があれば、もっと広いディスカッションができます。単純にサービスを売りたい、導入してほしいというよりは「こういうビジョンを描いていて、自分たちのアセットだけでは足りないから、ぜひ協力してほしい」という提案はパートナー企業に響く傾向があります。

― 抽象度を高めてミッション・ビジョン・パーパスといった話をした方がいいということでしょうか。

大木:
ビジョナリーな世界を実現する提案を応援する一方で、足元の課題を解決するサービスにもやはり可能性を感じます。例えば先程のOiTr(オイテル)の事例は、単に便利なサービスを施設に導入するという以外にも、OiTrを通じてESGの社会実装に適うという側面もあります。パートナー企業からしても、単年度で成果を出すプロジェクトなのか、もっと長期的なプロジェクトなのかにもよって、見るべきポイントが変わってきます。そこはスタートアップの提供価値とパートナー企業のニーズを見ながら調整するしかないですし、だからこそ間に入ってカタリストとなるOnlabの価値があると考えています。一緒に悩み、考えましょう。

大木:
また応募フォームでは「どういった会社と、どのような組み方をしたいか」といった協業案を書く欄があります。ここの仮説が言語化されていないと議論が前に進みません。応募時に仮説が完璧に合っていなくても全然構わないんです。少なくとも「こうじゃないかと思っている」「こういうアセットをもつ会社と組みたい」といったことが書かれていないと、こちらとしても検討のよりどころとして参考になるものがないので、協業案はしっかり記載していただくとよいと思います。

田端:
確かにそれは大事ですね。パートナー企業と話していても「事業として魅力的な企業はいるけれど、どんな協業ができるかイメージが持てない。だから結局検討できない」といった話はよく耳にします。やはり「何をしたい」がないと、それに対して「どう思う」も出てこないので、そういった部分を見せていただけると嬉しいですね。

松本:
THIRDの例もそうですが、成果が出た案件では、プロダクトを少し変えたり、提案やターゲットを変更したりしています。OiTrのように、6つのデベロッパーの20施設にコンソーシアム型のプロジェクトとして一気に導入したという意味では、導入が実現したよい協業案件となっています。

大木:
Onlabの過去のプログラムでは、今回紹介したKEYesやOiTrのようにいくつも成果が出ており、その実績(の一部)を公開しています。

大木:
Onlab Open Innovationでは、スタートアップとパートナー企業のソリューションと課題のすり合わせを丁寧に行うためのプログラム設計にも各所に工夫を凝らしています。Onlab Open Innovationは確実に成果に繋がる、社会実装を推進するプログラムとなっていますので、ご興味のあるスタートアップ・パートナー企業の皆さまは、ぜひお問い合わせお待ちしています。

― ありがとうございました。色々な仕掛けが施されているOnlab Open Innovationに期待しています。

(執筆:pilot boat 納富 隼平 編集:Onlab事務局)

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