2024年02月06日
株式会社デジタルガレージが運営するOpen Network Lab(以下「Onlab(オンラボ)」)は2023年12月、Open Network Lab Open Innovation(以下「Onlab OI」) 第1期 / Open Network Lab FUKUOKA 第4期の成果共有会を実施しました。Onlab OIは、これまでResi-TechやBioHealth等、分野特化で運営してきたオープンイノベーションプログラムを1つにまとめ、スタートアップが協業パートナーである大企業や行政、デジタルガレージと協業し、新たな価値を生み出し社会実装を推進することを目的に始動したプログラムです。
成果共有会には、313件の応募から選ばれ、パートナー企業との協業に挑んだ14社が登壇。スタートアップと協業パートナーとの取り組みは現時点で非公開の案件も多いため、本稿では成果共有会に登壇したスタートアップのサービスを中心に紹介します。
Contents
株式会社ジオクリエイツは、建築VRのスタートアップとして、空間アナリティクスツール「ToPolog(トポログ)」を提供。VRとAIを組み合わせ、視線や脳波などの生体データを実測およびAI推定し、空間体験価値を定量化します。これにより、空間設計の際の「デベロッパー・設計者・マーケターが勘や経験に依拠している」という不動産・建設・ディスプレイ市場の課題に対し、空間デザインの評価に客観的な分析エビデンスを添えることで解決。ToPologは生成AIを活用し「空間デザインの民主化」を実現します。
株式会社Penetrator(ペネトレータ)の「WHERE(ウェアー)」は不動産情報の仕入れ業務を自動化するSaaSです。衛星データからAIを活用して良質な不動産を検知し、法務局の登記データから所有者を特定。これまで30時間かかっていた業務をたった3分に短縮し、不動産業者をはじめとした事業用地、土地探しに困っている企業向けに、有益な情報を提供します。
九州大学発からスピンアウトしたスタートアップの株式会社aiESG(アイエスジー)が提供する「aiESG」は、製品・サービスのサプライチェーンを源流まで遡りESG分析をする世界初のサービスです。環境・社会・経済の包括的な評価を行い定量化。CO2排出などの環境面だけでなく、人権、生態多様性、労働環境などの社会的およびガバナンス面についても業界平均や従来の製品との比較が可能です。
ドーナッツロボティクス株式会社が開発する家庭用見守りロボット「cinnamon(シナモン)」は、生成AIを使用した自然なコミュニケーションが取れる小型ロボットです。高齢者や幼児の日々の会話相手としてや、施設の受付スタッフなど、様々な用途があります。同社は他にも、接客・配膳ロボットや、生成AIが会議に参加する「donut AI 会議システム」などの ロボットやAIのプロダクトを手がけています。
株式会社Lexi(レキシ)が提供する、ビルオーナーと直接マッチングするオフィス移転サービス「cocosy(ココシー)」は、オフィス移転の際に希望物件情報を登録・掲載しておくだけでビルオーナーから物件提案を受けられるため、仲介会社を介さずに取引できます。仲介手数料は無料で、より好条件の賃料で契約することが可能。オフィス移転において、情報の伝達が仲介会社に依存していた課題を解決し、移転企業と物件オーナーの効率的なマッチングを促進します。
※2023年10月に「SERECT」から「cocosy」にサービス名変更
株式会社Mona(モナ)が開発する「Mawaroute(マワルト)」は、商品レコメンドに特化した生成型レコメンドエンジンです。リアル店舗でのショッピングの際に、AIを活用したレコメンドアバターによるチャットを通じて、パーソナライズされたショッピング体験やコーディネートアドバイスを提供します。小売店が抱える販売員の採用、接客対応、商品提案、コーディネーション、Q&Aなどの様々な課題に対応し、さらに100以上の言語に対応して、インバウンド観光客向けの多言語対応も実現可能です。
BUKUROU株式会社が開発する、クラウドサービス「Bukurou(ブクロウ)」は、不動産・建築業界のボリュームチェック(ある土地にどれくらいの建物が建てられるかの確認)業務の自動化ツールです。ボリュームチェックには膨大な知識と作業が必要です。建築士は最新の法規や自治体ごとに異なる条例のチェック、戸数計算や日影・斜線制限、3Dボリュームといった作業を、人力で何度もトライアンドエラーをしてプランニングしてきました。それ故の課題が、人為的なミスが発生しやすいこと。BukurouはAI×ITで建築設計図の自動解析や自動生成を実現し、ボリュームチェック業務をDXします。
matsuri technologies株式会社(マツリ テクノロジーズ)が提供する「StayX(ステイエックス)」は、空間の価値を最大化するソリューションです。例えば、長期の賃貸物件を1泊単位や1ヶ月単位の短期賃貸で運営できる施設に変貌させます。インターネットでの集客やリアルタイムの在庫管理、価格調整、AIを用いた清掃員管理などの業務を一元管理することで、無人での施設運営を可能としました。ゲストが施設を利用する際には、多言語メッセージ対応、ワンストップでの決済、チェックイン、本人確認、チェックアウトといった機能も利用可能。ソフトウェアの力で、一つの空間をフレキシブルに変化させ、生産性を高め、多様な用途の空間へと進化させます。
人工脳「SOINN®」を使った画像処理や異常検知、ロボット制御サービスを展開するSOINN株式会社(ソイン)の全自動省エネAI「E-1(イーワン)」は、電力設備や空調、熱源設備などのエネルギーロスや CO2 排出を削減し、地球環境の保全やSDGs推進に貢献します。E-1は現在、東京駅の丸の内周辺やビックサイトでも稼働中です。その特徴は、ビックサイト程の大型施設でも市販パソコン1台で全自動に省エネ管理ができること。エネルギー需要予測AI、熱源機器の運転計画AIなどの独自技術を組み合わせて、現況と自動化したらどうなるかの結果予想を可視化します。リアルタイム・オンラインで学習し続け5分後には最適化された運用が反映される仕組みです。
株式会社Sally(サリー)が開発するマーダーミステリーアプリ「UZU(ウズ)」は、物語の登場人物になれるエンタメ「マダミス」を遊べるモバイルアプリです。マダミスとは、物語に居合わせた登場人物として犯人をみつける「会話型推理ゲーム」のことで、中国では映画やスポーツに次ぐ人気のコンテンツとなっています。プレイヤーの募集からゲームの進行までプレイに必要なすべての準備はアプリで実行。2023年12月現在では400超のシナリオがプレイ可能です。商業施設やまち全体を舞台に、地域の歴史や文化を題材にした街づくりや旅行コンテンツのシナリオも増えています。
株式会社森未来(シンミライ)が運営する「eTREE(イーツリー)」は、BtoB向け木材プラットフォームです。木材の調達から加工、塗装までをワンストップで提供します。設計者やデザイナーが木材を利用したいときに、誰に問い合わせしていいかわからない、個別で連絡する必要があったという課題を解決。森林・林業・木材に関わる100以上の企業や団体とネットワークを構築して、木材業界と建築業界をマッチング。森林木材の専門知識とITの力で森林に利益が還元されて、人間が森林と共存できる社会を目指します。
MIT発スタートアップのButlr Technologies Inc(バトラーテクノロジーズ)が開発するのはAIoT人間検知プラットフォーム「Butlr People Sensing Platform(バトラー ピープル センシング プラットフォーム)」。カメラの代わりに熱感センサーを天井に設置し、特定空間内の人の数、滞在時間などをモニタリング。熱感センサーのため性別や見た目などのプライバシー情報が一切取得されないことに加え「豊富な分析とAPIファースト」「コスパがよい」といった特徴を備えています。AIの力も活かし、オフィス、小売店、老人ホームなどの運営改善・経費削減をサポート。現在、グローバルに事業を展開しており、アメリカ、日本をはじめ、多くの取引先を有しています。
未利用資源をアップサイクルするCurelabo株式会社(キュアラボ)は、循環型経済を構築することで、各地域に新たな価値を生み出しています。メイン資源は世界一生産されている植物であるさとうきびの残渣(ざんさ)です。さとうきびを絞った後に発生するバガスから、和紙糸やバイオプラスチックを製造。この和紙糸は綿の半分の重さで給水速乾性が高く、消臭・抗菌効果といった特徴を備えています。開発、加工した素材からは洋服などを製品化。販売するだけでなく回収も実施し、すべて炭化させ農地に自然還元することで、循環型のモノづくりを実現しました。全国の企業や自治体と連携し21種類の残渣を活かしたアップサイクルも実現しています。
株式会社スタジオスポビーが開発する「SPOBY(スポビー)」は、人の移動で脱炭素と健康を実現するエコライフアプリです。ユーザーが本来乗り物に乗って移動すべき距離間を歩行や自転車で移動した場合、抑制された乗り物によるCO2排出量を脱炭素量として計測し可視化。徒歩や自転車利用などの人々の「活動」を活発化させ、健康促進に寄与する行動変容アプリです。さらに、コンポストや廃食油の再利用、マイボトル活用、リモートワークによるCO2排出抑制なども促進します。
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以上、Onlab OI 第1期 成果共有会に登壇したスタートアップ14社でした。
この場をお借りして、スタートアップ14社、協業パートナー、関係者の皆様に心より感謝いたします。
Onlabは、今後も継続して、スタートアップ、大企業や行政などの協業パートナーの業界や領域に加え、デジタルガレージが持つFinTechやマーケティング領域、そしてWeb3やESGなどの様々なビジネスリソースを活用しながら、東京都スマートサービス実装促進プロジェクト「Be Smart Tokyo」とも連携して社会実装を推進し、オープンイノベーションに貢献してまいります。
(執筆:pilot boat 納富 隼平 編集:Onlab事務局)