2026年01月06日

2025年11月、シリコンバレーのVCであるTranspose Platform(以下「Transpose」)とOpen Network Lab(Onlab/オンラボ)、株式会社DGインキュベーション(以下「DGI」)の共催により、ハッカソンイベント「VIBE25-5」が開催されました。Y Combinator(以下「YC」)への挑戦を意識し、テーマにはYCが提唱する「Request for Startups (RFS)」を採用。約130名の参加者がAIやコード生成を活用し、短時間でデモアプリを開発しました。

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2025年11月12日、Onlab Seed Accelerator Program(シードアクセラレータープログラム)を運営する株式会社デジタルガレージ(以下「デジタルガレージ/DG」)にて、ハッカソンイベント「VIBE25-5: Welcome to San Fransokyo」を開催しました。デジタルガレージは、サンフランシスコにコワーキングスペース「DG717」を構え、長年にわたり日米スタートアップエコシステムのハブとしての役割を担ってきました。
また、米国で福利厚生SaaSを提供する「Fond Technologies(旧AnyPerk)」は、Onlab卒業企業でもあり、日本チームとして初めてYCにも採択されています。彼らを筆頭に、Onlabは日本のスタートアップをグローバルへ送り出してきました。
2024年からは、サンフランシスコを拠点にグローバルでの挑戦を志す起業家を本格的に支援する「Global Track」も始動。日本人起業家によるグローバルでの成功事例を生み出すべく、シリコンバレーでYC等のトップアクセラレーターへの投資実績を持つTransposeと手を組み、今回のハッカソンが実現しました。
本イベントは、YC出身のスタートアップと日本の参加者が協力し、AI技術を活用して新たな価値を生み出す実践型ハッカソンです。参加者たちは4時間という短い時間の中で、AIやコード生成技術を駆使しながらデモアプリを開発しました。当日は約130人が参加し、4〜5人ごとにチームを編成。63チームが成果物を提出しています。ある大学では学生の交通費を支援し、参加を後押ししてくれました。参加者のうち約半数は国内在住の外国人。多国籍なメンバーが協力してサービスの開発に取り組む、国際色豊かなイベントとなりました。
各チームは、YCが発表する「Request for Startups(RFS)」 に基づき開発を進めました。RFSとは、YCが今後重要になると考える課題やテーマの方向性を提示したもので、近年はAIに関連するテーマが多く含まれており、2025年現在も、AIを核心に据えた複数のテーマが公開されています。AIを使って何かしたいが、具体的な課題が見つからないという人にとって、YCが定義した「解くべき課題」はそのままビジネスチャンスになります。

これらのテーマは、(YCが拠点とする)サンフランシスコだけでなく、今後世界中でテーマとなり得るものです。そのため本ハッカソンでは、サンフランシスコや日本だけでなく、グローバルに影響を与えるアイデアが歓迎されました。
本イベントの主催Transposeの日本市場担当である戸上 恭丞(Kyosuke Togami)氏は以下のように語ります。
Transposeは日本人のYCへの応募者数と採択率を上げていきたいと考えています。
YCへの採択を目指すのであれば、RFSを意識することは非常に重要です。しかし、日本国内でRFSへの関心はそれほど高くありません。そこで、RFSをハッカソンの中心コンセプトに据えることで、YCへの関心を高めようと考えました。
特に若い方や学生の場合、プロダクト開発の力がありグローバル志向やYCへの関心があっても、どんなプロダクトを開発すればよいのか分からないことも多いでしょう。だからこそ、初めからRFSを意識してもらうことで、グローバルに通用するプロダクト開発に繋がると考えています。
本ハッカソンの審査基準は以下の通りです。
また、審査員として参加したのは、以下の方々です。
※「YC」表記があるのは、Y Combinatorに採択されたスタートアップ。例えばRandom Labsは2024年のSpringバッチに採択されています。

優勝チームには5千ドル(約78万円)、準優勝には3千ドル(約47万円)、3位には1千ドル(約15万円)の賞金及びOpen AIからのクレジットが授与されました。

さぁ、いよいよハッカソンのスタートです。食事やドリンクを楽しみながら、活発に意見交換し、各チームが開発を進めていきます。18時から始まったハッカソンの提出締め切りは21時半。審査は30分の予定でしたが、あまりに白熱して大幅に延長。最終発表があったのはなんと22時半でした。

この日優勝したチームが開発したのは、「Retraining Workers(労働者の再訓練)」や「AI Native Enterprise Software(AIネイティブ企業向けソフトウェア)」の文脈に関連する、作業動画から手順書を自動で作成するアプリでした。作業の様子を撮影した動画をAIが分析し、具体的な手順書を自動生成するサービスです。例えば、配電盤の設置におけるケーブルの接続や、タイラップでの結束といった細かな作業をイメージして開発されました。動画内の作業からAIが「どの道具を使って、どのような作業をしているか」を認識し、その情報を基に手順書をPDF形式で作成。紙でアウトプットできる機能も備えました。これは、現場によってはタブレットなどのデジタルデバイスよりも紙の方が扱いやすいという事情を考慮したものです。
生成された手順書には、文字情報だけでなく、作業内容を具体的に示す動画からのスクリーンショット(画像)が各手順に挿入されるため、視覚的にも作業内容を理解できるように配慮されています。デモアプリのインプットは作業動画をイメージしていますが、マルチモーダル(テキスト・画像といった異なる種類の情報を、単体ではなく組み合わせて扱うこと)な情報源から、多様な手順書や情報を抽出・生成できるような拡張性も意識されていました。このデモアプリは、現場作業における「親方の背中を見て技術を覚えろ」という属人的な課題の解決を目指して開発されました。この課題は日本だけでなく、アメリカを含む多くの国で作業員の育成に関する共通の障壁となっており、この点が審査の場でも高く評価されました。
これほど複雑なサービスを数時間で作成してしまうのは素晴らしいですね!

こうして幕を閉じたVIBE25-5。先述したように、ハッカソンは今後も継続的に開催するかもしれません。興味のある方はイベントページなどをフォローしてみてください。
主催の一角であるTranspose Platformは、シリコンバレーに拠点を構えるベンチャーキャピタルです。スタートアップだけでなく、ファンドへ投資する「ファンド・オブ・ファンズ」としての側面も持っており、YCをはじめ、ロンドンのEntrepreneurs Firstや、South Park Commonsといったメジャーなアクセラレーターへの投資実績があります。日本の政府系ファンドでもある産業革新投資機構が2024年に投資したことでも注目を集めました。
Transposeは、今回のようなハッカソンをシリコンバレーで毎月開催しています。その特徴は、AIを活用して自然言語プロンプトからコーディングをする「バイブコーディング」を前提としている点です。従来のハッカソンは週末などに2〜3日かけて開催するケースが多かったものの、近年のバイブコーディングの発展が、4〜5時間の短時間ハッカソンの開催を可能としました。
今回の東京でのイベントも、シリコンバレーのハッカソンを意識して設計されています。Transposeの戸上氏は「日本から1人でも多くの優秀な方を、グローバルで挑戦するきっかけにしたい」と意気込みます。まだ具体的な計画が立っているわけではないものの、東京に限らず、地方での継続的な開催も視野に入れているようです。日本発で世界で戦える人材の育成に力を入れます。

会場にはTransposeのFounderであるAlex Bangash氏とPartnerのJames Tan氏の姿も。お2人からメッセージもいただきました。

この会場のエネルギーは本当に素晴らしいです。今日のこのイベントが、日本のファウンダーがY Combinatorに挑戦するきっかけとなる“歴史的な一日”になると確信しています。(Alex)
本日のイベントの最大の魅力は、参加者が“つくる側”になることへのワクワクを全身で感じられるようになることです。シリコンバレーには「自分でやればいい – Just do things」という合言葉があります。今日この場にいる方々は、正にその精神を体現していると言えるでしょう。このハッカソンから、どのようなプロダクトや会社が生まれるのか、本当に楽しみです。1年後かもしれないし、10年後かもしれませんが、ここからユニコーンやデカコーンが生まれることを期待しています。(James)
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Onlabでは、今後もGlobal Trackなどのプログラムや今回のようなパートナー連携を通じて、日本のスタートアップが世界で勝負できる機会を作り続けていきます。2025年12月から第31期 Seed Accelerator Programの募集を開始しました。グローバルでの事業展開や、次の成長フェーズを見据えた挑戦を検討しているスタートアップからのご応募をお待ちしています!
また、起業を検討している方や、事業成長の機会を求めているスタートアップ経営者の方に向けて、オンラインでの事業相談会(Open Office Hour)も実施しています。応募を検討中の方や、事業の方向性について壁打ちをしたい方は、ぜひご活用ください。
(執筆:pilot boat 納富 隼平 編集:Onlab事務局)