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戦略策定から実行支援まで。Onlabが支援するアートECの次なる一手|TRiCERA|Road to Success Onlab grads vol.8

戦略策定から実行支援まで。Onlabが支援するアートECの次なる一手|TRiCERA|Road to Success Onlab grads vol.8

アーティストが国内外に自身の作品を販売するためのノーボーダーEC「TRiCERA.NET(以下「TRiCERA」)を運営する株式会社TRiCERA(以下「トライセラ」)。TRiCERAは翻訳・決済機能・配送システムを完備することで、アーティストの自国を超えた販売をサポートしています。サービスや、市場の課題についてインタビューした記事はこちら

トライセラは、Open Network Lab(以下、Onlab) Seed Accelerator Program の卒業生で、2019年に開催されたデモデイでは19期の最優秀賞を受賞しています。そんなトライセラとOnlabの関係ですが、実はアクセラレータープログラムを卒業した後も、ハンズオン支援を続けています。支援の中心となっているのは、Onlabの松田 信之。資金調達や業務提携、そこに至るまでの戦略策定等の支援を二人三脚で行っているそうです。今回の記事では、トライセラ代表取締役社長の井口さんと、松田が登場。Onlabの卒業後の支援内容について対談しました。

※以下、「トライセラ」は会社、「TRiCERA」はサービスを指すものとします。

< プロフィール >
株式会社TRiCERA 代表取締役社長 井口 泰

大学卒業後、老舗音響機器製造業に入社、アジアパシフィック統括本部にてキャリアをスタートする。ドイツ最大手医療機器メーカーに転職、医療機器の受発注に従事、プロジェクトリードとしてシステム導入に尽力する。2015年、世界最大手スポーツカンパニーに入社。2017年には日本の直営店舗サプライチェーンを統括するマネージャーとなり、グローバルプロジェクトに参画、日本国内においても複数の新規プロジェクトを立ち上げ実行する。2018年11月1日、株式会社TRiCERAを設立する。

< プロフィール >
Open Network Lab 松田 信之

東京大学大学院在学中に学習塾向けコミュニケーションプラットフォームを提供するスタートアップを共同設立。2008年4月より株式会社三菱総合研究所において、民間企業の新規事業戦略・新商品/サービス開発に係るコンサルティングに参画。近年ではスタートアップと大企業、自治体などを巻き込んだオープンイノベーション支援にも携わる。

二人三脚で取り組んだ、投資家が納得する資金調達の戦略づくり

Open Network Lab 松田 信之
Open Network Lab 松田 信之

― トライセラへの支援内容について教えてください。

松田(Onlab):
当時トライセラは、色々と事業構想を広げていた時期でした。TRiCERA MUSEUMというギャラリーを作ったり倉庫事業を企画したり、構想している事業内容は多岐に渡っていました。そんなタイミングで資金調達を行うことになり、会社としてのゴールの明確化や各施策の繋がりを可視化して事業戦略、事業計画に落とし込む、といった支援をしていました。

井口(トライセラ):
投資家向けに納得できるような事業計画に落とし込むために、足元のキャッシュフローの状況と大きな戦略とのギャップを見て「じゃあ、いくらぐらい必要だよね」という話をして。

松田(Onlab):
井口さんの周りには、たくさんの有識者がアドバイザーとしていて、井口さんの人望からか魅力的な話もたくさん入ってきます。フットワークが軽くて攻める井口さんはすぐ食いついちゃう(笑)。それ自体はいいのですが、こうして生まれた施策群が一見するとバラバラに見えてしまっていたので、既存事業と新しい施策の関係性を整理し、それをトライセラの事業計画の中に織り込んでいきました。

井口(トライセラ):
そうですね。一緒にひとつづつ整理をしていただいたのは本当に助かりました。そこから資金調達のための投資家向けプレゼン資料の作成等も手伝っていただきました。2020年3月頃に資金調達が終わって、「なんとか」プレスリリースを出せました。

井口(トライセラ):
今「なんとか」と言ったのは本当にそうで、今回の資金調達には色々なドラマがあったんです。ここでは言えないような…。

松田(Onlab):
ドロドロしたね(笑)。

井口(トライセラ):
お世辞を言うわけではないですが、そのドロドロしたドラマにいつも寄り添ってくれたのが松田さんだったんです。僕が松田さんの立場だったら、「もうこいつには付き合ってられへん」と思っていたんじゃないかな。それでも松田さんはずっと寄り添ってくれて、問題が起きたら相談に乗って解決してくれた。本当に感謝しています。

事業会社との業務提携の裏側にあったプロジェクトマネジメント支援

株式会社TRiCERA 代表取締役社長 井口 泰さん
株式会社TRiCERA 代表取締役社長 井口 泰さん

― トライセラは、美術品を中心としたオークション運営を行うShinwa Wise Holdings株式会社(以下「シンワ」)とも業務提携を発表しました。このあたりもOnlabからの支援があったと聞いています。

井口(トライセラ):
TRiCERAはオンラインECのプライマリー(一次流通)サービスで、シンワはオフラインでのオークションを扱うようなセカンダリー(二次流通)の会社です。アート業界の中でもそれぞれフィールドの違うプレイヤー2社が提携したというのが、この提携の特徴です。具体的には、 ECサイトの「TRiCERA.NET」に参加する世界各地のアーティスト27名が、シンワのオークションに出品することになりました。つまり、アートオークションユーザーという新たな顧客層をこれまでプライマリーをメインで活動していたアーティストに対し、ネット上のプラットフォームで直接接続する機会をつくり、アーティストのキャリアアップを目指せることになったんです。

松田(Onlab):
これは独特な業界構造で成り立つアート市場の中では、かなり新しいチャレンジでした。アート市場はほんの一握りのアーティストがコレクターから価値を見出してもらい、セカンダリー(二次流通)において価格が上がっていく世界です。その中で、オンラインでプライマリー(一次流通)のサービスを運営するスタートアップのトライセラと、オフラインでセカンダリー(二次流通)のオークションを運営する上場企業のシンワが一緒に事業を回していくのは、様々な業務で共通認識の構築から始めることが重要でした。そこでOnlabのメンバーが両社の会議に同席させてもらって、プロジェクトマネジメント的な立場で入り、双方の意見をファシリテートしながら一つの方針にまとめていきました。

― 元々プライマリーとセカンダリーというのは分断されていたということでしょうか…?

井口(トライセラ):
仲が悪いわけではないんです。現代アートのシステムの中では、両者とも非常に重要なプレーヤーです。一般的にはまず、プライマリー(一次流通)でアーティストが出展します。その後アーティストが個展をしたり、ビエンナーレ(美術展覧会)で注目されたりすると、そのアーティストの作品が希少性や価値を帯びてくる。そうするとセカンダリー(二次流通)で価格が上がっていきます。実は、これがアート業界の面白いところなんです。一般的な二次流通の価値って、価格が下がってもいいから売れることじゃないですか。大抵の場合は新品で買ったものは中古で売る時に価格は下がりますよね。しかしアート業界ではここに逆転が起きていて、セカンダリーが価値の上がる場所になっているんです。

例えば500万円で買った作品が1億円になることだってある。そうするとそのアーティストの作品は、次から1億円の価値がある作品となります。その後、そのアーティストの作品の価値はさらに上がることも下がることもありますが、そうやって経済的な価値を作っていく場というのがセカンダリーなんです。

株式会社TRiCERA 代表取締役社長 井口 泰さん

― アート市場でTRiCERAはどういった役割を担うのでしょうか?

松田(Onlab):
TRiCERAは、プライマリー市場を広げることでアーティストにとってセカンダリーの距離を縮めることに取り組んでいるという見方ができると思うんです。作品を作るアーティストもアートを購入するコレクターも、深く知れば知るほど多様さが見えてきます。例えばアートの購入動機だけを見ても、インテリア、特定の作家の収集、将来的な価値向上など全く異なり、それによって売れる作品も違います。アーティストも同様で、アート制作の裏側まで見ていくと、”アート”という一つの言葉で一括りにはできません。多様なアーティストとコレクターが参画し、その「n×n」のマッチングを実現するのがTRiCERAですが、「n x n」のどの組み合わせがアーティストの市場価値向上に繋がるか、アート購入に接点がなかった方を市場に巻き込めるか、そういった観点でアート業界を再定義してTRiCERAとしての戦略を考えています。

井口(トライセラ):
松田さんには、経営合宿にも来て頂いて、TRiCERAの現在のプライマリー(一次流通)でのポジショニングからより流通額の多いマーケットに、いかに間口を広げて取り組んでいくのか、戦略を一緒に考えましたね。

松田(Onlab):
作品が展示されていない真っ白なTRiCERAミュージアムに集まって、丸1日議論しましたね。TRiCERAが接する可能性がある顧客を理解するために、まずアート購入者であるコレクター達の購買動機や行動を分析して、各顧客セグメントに対して、現在のTRiCERAはどんな打ち手を持っているのか、今後の優先セグメントはどこか、それに対して適切なチャネルは何かという議論をしていました。

戦略策定のための1日経営合宿を経て、施策実行へ

― そもそもなぜ経営合宿をすることになったのでしょうか。

井口(トライセラ):
実を言うと、TRiCERAは資金調達後の市場や会社の変化に対応した戦略が突き詰められていなかったんです。だから戦術はあるのに、それらの整合性や一貫性がなかった。鉄砲の弾を数を撃って当てる、みたいな状態にまたなってしまっていました。それを変えたいと思っていたんです。具体的には、ユーザー像やカスタマージャーニー、UX等が課題でした。ここを整理しなければいけないなと。

TRiCERA経営合宿での一コマ
TRiCERA経営合宿での一コマ

そこでまず、戦略を定めるためのワークショップ合宿をやろうと決めたんです。松田さんは戦略の知見が深く、合宿ではファシリテーターをお願いしようと決めていました(笑)。合宿の前週にも時間をとってもらって前提知識を参加メンバーと共有し、十分な準備をしてワークショップに臨みました。このディスカッションで戦略に対しての解像度がクリアになり、ユーザーに対しての解像度もグッと上がりました。そう考えるとすごい時間を使っていただきましたね(笑)。

― 最後に今後の課題を教えてください。

井口(トライセラ):
昨年の合宿で定義した各ユーザーセグメントごとの大枠の戦略は固まりました。アートに精通する「アートコレクター/ファッションコレクター」はセカンダリーで値上がるような作品が欲しいし、アーティストに興味のある「ライトコレクター」はアートの価値よりも人気作家の版画を安く手に入れたいと、ニーズが違うんですよね。戦略と一緒に施策も考えたので、次は決めたことの実行フェーズです。

松田(Onlab):
アートECが他のECと違うのは、購入単価が最低価格が数万円、ボリュームゾーンでも数十万円の前半で、とても高額だという点です。そこでお客様それぞれの購入動機に対して適切な納得感や安心感を持ってもらう施策が重要になります。まだ新しい施策の詳細は明かせませんが、Onlabでも継続的にトライセラの支援をさせていただく予定です。

井口(トライセラ):
はい!トライセラはOnlabを使い倒す予定ですので引き続きよろしくお願いします(笑)!