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飼い主仲間の写真投稿から「うちの子」に合うサービスを探せるコミュニティアプリ「parnovi(ぱるのび)」|Meet with Onlab grads vol.24

飼い主仲間の写真投稿から「うちの子」に合うサービスを探せるコミュニティアプリ「parnovi(ぱるのび)」|Meet with Onlab grads vol.24

Open Network Lab(以下、Onlab)は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、Seed Accelerator Programを2010年4月にスタートし、これまでに数々のスタートアップをサポートしてきました。今回はペットの飼い主さんの口コミ投稿からペットサービスを探せる新しいコミュニティアプリを開発・運営する、Onlab第21期の株式会社parnoviの代表、遠藤 玲希央さんのお話です。Onlabに参加したきっかけやプログラムから得られた経験等を、代表取締役CEOの遠藤さんにオンラインでインタビューしました。

< プロフィール >
株式会社parnovi 代表取締役CEO 遠藤 玲希央

東京大学農学部獣医学課程獣医学専修5年(休学中)。沖縄生まれ。幼少期を中南米で過ごし、ガラパゴスやアラスカの大自然を目の当たりにして動物の道へ進むことを決意。大学入学後には、ブラジルやアフリカの獣医大学を単身で訪問し、英語スピーチで全国優勝や2000人のコミュニティマネジメントを経験。大学4年次にTOKYO STARTUP GATEWAY2018にて最優秀賞&オーディエンス賞を受賞。2019年6月にペット社会のビジネスと倫理を両立するべく、コミュニティサービス「parnovi(ぱるのび)」の開発・運営を開始。生まれて初めて話した言葉が「うま」なくらい動物が大好き。

起業したのは、倫理観を持った飼い主さんやお店に社会的価値が巡る仕組みを作りたかったから

― parnovi(ぱるのび)の事業についてお教えください。

parnoviは、自分が日常で使っているペット関連商品や動物病院、店舗に対する評価を写真と一緒に投稿したり、自分と価値観や悩みが似ている飼い主さんの口コミを見たりすることで「うちの子」のハッピーを見つけることができる、ペットサービス探しのコミュニティアプリです。

現在、私は東京大学で獣医師になるための勉強をしていますが、昔からペット業界に何らかの形で貢献したいと思っていました。大学1年生の頃、獣医学とは関係のない教育系ベンチャーで働く機会があったり、当時話題になった書籍『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』から世の中の価値や価値循環について学んだ時に、ペット社会では価値とお金の巡り方が繋がっていないという社会課題を知りました。

例えば、動物の殺処分や悪徳業者、募金活動などの実態を調べてみると、倫理観のない業者へお金が流れていき、社会課題を解決しようと努力している業者が儲かっておらず、そこで働く人たちの時間や生活も犠牲になっている。これはまさにペット業界における社会課題の根本だと考え始めて、誠実な飼い主さんやお店に経済的・社会的価値が巡るエコシステムを作りたいと思ったのが、parnoviを立ち上げたきっかけです。

それを実現する切り口として考えたのが、口コミでした。口コミのプラットフォームによって、飼い主さんや店舗、商品に対する信頼が可視化されて、良いと評価された飼い主さんやお店に注目が集まるような仕組みを作っています。

― 「良い飼い主さん」になったら、具体的にどのようなインセンティブが受けられるのですか?

現在のparnoviのアプリでは、アカウントごとに信頼スコアが表示されるようになっています。アクティブ率や口コミの投稿数、他の飼い主さんからもらったLIKE数が多いほど信頼される飼い主さんという位置づけにしています。信頼スコアの高い飼い主さんは、parnoviで開催されるキャンペーンの当選確率が上がったり、スコアポイントを支払いに使えるようになったりとメリットを享受しやすい仕組みになっています。

ゆくゆくは、獣医師監修のクイズで正答率が高い人やペットを飼うのに必要な知識を持っている人、これから流行る商品をいち早く見つけて投稿した人など、さまざまな基準を作っていきたいと考えています。

飼い主さんたちの口コミから、知らなかったものに出会える「体験」を提供するコミュニティアプリ

― 飼い主さんであるユーザーは普段、どのようなお悩みを抱えているのですか?

従来のペットフードメーカーは飼い主さんをターゲットにさまざまなWeb広告を出しています。例えば、「グレインフリー」で検索すると、グレインフリーを謳ったドッグフードが検索結果にたくさん出てくる。「国産100%」「無添加」「こだわりの味」など、どの商品を見ても似たような言葉を使っていて、違いがわからないんです。飼い主さんは「良い商品なんだろうけれど、結局、うちの子には何が合うのかが分からない」というお悩みを抱える方が多かったんです。実際、Instagramでハッシュタグを駆使して、同じ犬種を飼っている人や近くに住んでいる人、気になっている商品を買った人を見つけて「今、何を使っていますか?」とDMしている飼い主さんもいました。

そこで、10~20代女性を中心に利用されているコスメの口コミアプリ「LIPS」のように、発信者がどんな人か、どんな犬種を飼っているか、どんなこだわりを持っているか、何に悩んでいるかが分かるようにしています。

株式会社parnovi 代表取締役CEO 遠藤 玲希央
株式会社parnovi 代表取締役CEO 遠藤 玲希央

― 実際に使っている飼い主さんたちからは、どのような声が上がっていますか?

今までは、犬のお散歩をしている時に飼い主仲間に会って、そこで聞いた商品をGoogle検索して、Amazonや楽天で評価を確認してから購入していましたが、これでは自分の知識ありきというか、すでに知っているものしか調べられない。parnoviのアプリを使うと、同じ悩みを持つ飼い主の口コミを元に買いたかった商品を調べられるのはもちろん、信頼度の高い飼い主さんたちの口コミからいままで知らなかった情報や商品を発見できるようになったと喜んでくださっています。

― parnoviでは現在、犬の飼い主さんをターゲットにしていますが、どういった戦略なのでしょうか?

日本では数年前から犬よりも猫の方が飼育頭数が多くなっていますが、犬の飼い主さんを選んだ理由として、1匹当たりの飼育にかかるコストが犬の方が高いからです。

面白いことに、猫が好きな人は「猫」という生き物が好きですが、犬が好きな人は「犬種」が好きな傾向にあります。つまり、ゴールデンレトリーバーを飼っている人にとって、チワワなども犬としてはかわいいと思うものの、やっぱりゴールデンレトリーバーが一番なんです。他にも、夫婦2人で住んでいるご家庭ではイタリアン・グレイハウンドを飼う割合が高いといった飼い主さんの社会的属性と犬種が関連するなど、犬の飼い主さんは帰属意識が強いので、同じ犬種を飼っている同士で繋がったり、Facebookグループで積極的に情報交換をしたりしています。

口コミを軸にしたサービスを考えた時、犬の飼い主さんだったら喜んで自分の情報を投稿してくれたり、他の飼い主さんのオススメを参考にしたりするので、初期のユーザーとしてparnovi価値観にあっていると考えました。

山のようなフィードバックをどう処理していくか、メンターとの対話で次のアクションが整理される

― 遠藤さんがOnlabに応募した理由と当時のparnoviの状況をお教えください。

Onlabの直前、過去に出場したビジコンでいただいた賞金などの自己資金でなんとか繋いでやりくりしていましたが、β版アプリが完成する頃には底をつきそうになっていました。そんな時、お世話になっていた経営者の方に相談したらOnlabというプログラムがあるとご紹介いただいたんです。また、デジタルガレージのグループ会社であるカカクコムが、同じ口コミサービスの草分けでもある食べログを成功させていらっしゃるので、「カカクコムの知見やリソースを最大限に活用できるのはウチしかいない」と応募しました。

当時、parnoviはiPhone向けのアプリをリリースしたばかり。飼い主さん向けに提供する価値や、提供するソリューションはある程度固まっていたので、Onlabプログラム期間中は、どうマネタイズするべきなのか、ペット業界の流通やバリューチェーンを1から見直しながら顧客となり得る企業へヒアリングを進めていきました。

― プログラムでのメンターからサポートで印象に残っているものはありますか?

メインで担当してくださった古川さんは情報整理が上手い方なんです。私が「ステークホルダーの方はこう言っていて、別の方はこう言っていた」と情報に埋もれて焦っていたところ、それらをスプレッドシートに書き出して、重要なところにマークをつけながら「ここで言いたいことは何だと思いますか?」と助けてくださいました。古川さんと話すと次にやるべきことが見えてくるんですよね。Onlabでは2週間に一度オフィスアワーが設けられるので、そこを目標にバックキャスティングで計画を立てて動くことができました。振り返ってみると、全体を通してメンターの方のリソースをフル活用させていただきましたね(笑)。プログラム後の現在も定期的にあらゆる面での事業の相談をさせていただいています。

― 他のメンターからどのような指摘やアドバイスがありましたか?

ペット業界の産業構造についての理解解像度が低いのではないか、と。当時、私は「LIPS」のスタイルを真似しながら飼い主さんを集めていけば、広告出稿してくれる企業も増えるだろうと安易に考えていました。しかし、そもそもペット事業は誰が作っていて、卸にどんな企業がいて、どれくらいのお金が動いているのか、メーカーの担当者にどんな課題があって、誰が予算を握っているのかを把握することで、単なるマーケティング視点だけではない、バリューチェーン全体のニーズに即した価値を模索することが、サービスの価値に繋がるとリサーチやインタビューを進めていきました。

― プログラムに応募する時、カカクコムのノウハウにも期待していらっしゃいましたが、ディスカッションを進める中でどのような気づきがありましたか?

メンターとディスカッションさせていただいたことで、parnoviが次にすることが明確になり、現在は飼い主さんたちにご投稿いただいた約5000件に該当する商品を紐付けして検索経路を増やしています。同じ口コミサービスとして、山あり谷ありの経験を味わった方からアドバイスをいただけたのはラッキーでした。自分の想像していなかった事業の線が見えましたし、「この進め方だとこういう失敗があるよ」と、数年後に出くわすかもしれない落とし穴を先に教えていただけた感じです。次はロングテールのSEOを取っていくコツをお伺いしたいと思っています。

― 今後、どのように事業を発展させていこうと思いましたか?

今後は顧客接点に注力したいと考えています。飼い主さんに対しては「うちの子に合うものが見つからない」を見つけられるようにすることが何よりの価値だと思っています。一方、商品を扱う企業は「自分たち商品に合うお客様が見つからない」「そのお客様に商品をリーチできない」という課題を抱えていて、GoogleやInstagramを使って手当り次第に広告を出してもコンバージョンが低く、思うように顧客リーチできないでいる。その点、parnoviでは飼い主さんの属性や犬種、お悩みなどの情報を持っているので、ゆくゆくは購買履歴や検索履歴を取りたいと思っています。例えば、「この飼い主さんは10月にこの商品の投稿をしているから、半年後にはこれを買う」と予測したり、お客様のお悩みに適した商品やクーポンを送り、商品との出会いの体験価値を作りたいと思っています。

ユーザー数の増加に伴い、最もサービスを考えて動いてくれるのは「上位3%のヘビーユーザー」

― 現在、何名のメンバーがいらっしゃいますか?

正社員は私だけで、メンバーは7名います。事業拡大に向けて採用を本格化させたいですが、候補者の能力を正しく判断したり、parnoviのビジョンにカルチャーフィットできるかを見極めたりするのは大変だとも感じています。

parnoviが挑戦していることは社会的意義があるし、やりがいもあると確信しています。ただ、ペット業界そのものに興味を持つ方はあまりいないんです。例えば、ペット業界は比較的ローテクで、エンジニアが挑戦したい最新テクノロジーとは対極にいる。「ペット × エンジニアリング」に取り組むparnoviが吉と出るか凶と出るかが見えない中で採用を進めるのは至難の業ですね。

一方、私と一緒に働いてきた学生エンジニアが2021年の春に大学を卒業して、parnoviの正社員第1号として入社する予定です。また、今後はコンテンツ制作に重きを置きたいため、まずは獣医師やコンテンツの監修者、またAndroid版の開発に向けたKotlinも扱えるエンジニアも巻き込んでいきたいです。

― 現在、parnoviのユーザーは3,200人。ユーザーがますます増えていく中でコミュニティの組成・活性化は大変になってくると思いますが、どのように対応していらっしゃいますか?

コミュニティの特徴なのですが、ユーザーが増えてくると、サービスの主旨や思いをあらゆるユーザー浸透させることが難しくなったり、「この投稿はparnoviには合わないな」と感じるようなさまざまな投稿が交じってきたりして、ユーザー間でのギャップが生まれてきます。例えば、飼い主さんが「有益な情報を投稿する」のではなく、ただペットのかわいい写真を投稿してInstagramと同じ使い方をするといったことでユーザーの期待度が変化してしまいます。その対策として、ユーザーのコミュニティガイドラインを読みやすく更新したり、投稿画面ではプレースホルダで例文を表示したりして、新規ユーザー投稿を正しい方向へ導くようにしています。

併せて、メンターの古川さんからいただいたアイデアも採用していますね。例えば、Twitterのように文字数がサークル上のメーターのように変わるような機能を実装をして、文字数と投稿内容の期待値コントロールも行っています。

他にも、parnoviの初期からご愛用いただいているヘビーユーザーをLINEのオープンチャットに招待したら、有難いことにparnoviについてのアイデアを出してくれたり、アプリ上でバグを見つけたらタイムリーに報告してくれたりしています。「こういう機能がほしい」というスレッドにも積極的にアイデアを書き込んでくれので、こういったユーザーの方々とのコミュニケーションを大切にしてコミュニティを活発化していきたいと思っています。

― 今後のユーザー獲得においての具体的な施策について教えてください!

YouTubeで発信したり記事を書いたりしながら、獣医師と一緒に専門性の高いコンテンツを作ろうと考えています。アフィリエイトでも特定の商品を紹介するようなコンテンツでもなく、専門家の視点から何がオススメか、どんなケアをすると長生きするかなどを発信するメディアを仕込もうと考えています。

他には、parnovi上の信頼スコアに基づいて、スコアの高い飼い主さんがペット保険をより安く受けられるようにしたり、ペットの首輪やトイレ機器といったIoT関連と連携して、うちの子の状態と飼い主さんのステータスが定量的・定性的に集約されて適切な商品やサービスを提案できるようにしたいです。「全てが集約される」と括ると陳腐に聞こえるかもしれませんが、スマホを持っていたらLINEを入れるのと同様に、「ペットを飼っているならparnoviを入れる」を実現させる。例えば、ペットを飼い始めた方に向けて、かかりつけの獣医さんのところでparnoviのQRコードを置いていただき、皆さんが当たり前にparnoviを使っている世界を目指します。

― Onlabにこれから参加しようとしている方や、学生で起業を考えている方へのメッセージをお願いいたします。

まさに「使い倒してやるぞ」の精神ですね。Onlabのプログラムではメンターがサポートしてくれて、毎週ミーティングを開催して的確なフィードバックをくれて、とにかく手厚いんです。その分、自分の会社で必ずリターンを出すこと、コミットメントと成果を出すことが最大の還元だと思っています。プログラムで学んだことは全てを自分の血肉にしてやる、くらいの気構えが大事ですね。

私自身、学生起業家として歩んでいて迷いもありますが、学生だからこそ、起業して経験を積むのはプラスでしかない。その活動自体、ゆくゆくは世の中の新しい価値になっていくと信じて挑戦しています。失敗するつもりはさらさらありませんが、万が一失敗したとしても挑戦したこと自体がプラスだし、いつでも就職し直せます。もちろん、一旦企業に就職してから起業する方もいらっしゃるかもしれませんが、すでにやりたいことが見つかっていて、自分で起業するチャンスが舞い降りてきているなら、先延ばしする必要はないかなと思っています。今が一番良い時期かもしれないので、数年後の私が後悔することのないように動きたいです。