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OOH広告で広告業界のゲームチェンジャーを目指す「PalledAd(パルダッド)」|Meet with Onlab grads vol.19

OOH広告で広告業界のゲームチェンジャーを目指す「PalledAd(パルダッド)」|Meet with Onlab grads vol.19

Open Network Lab(以下、Onlab)は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、Seed Accelerator Programを2010年4月にスタートしました。これまでに数々のスタートアップをサポートしてきました。今回は、広告プラットフォームで一人ひとりが能動的に生きられる社会を創るというビジョンを持つ、Onlab第20期の株式会社PalledAdの代表、安彦 賢さんのお話です。Onlabに参加したきっかけやプログラムから得られた経験等を、代表取締役社長の安彦さんにオンラインでインタビューしました。

< プロフィール >
株式会社PalledAd 代表取締役 安彦賢

東京大学文学部出身。高校在学中に株式会社DiverFrontの設立に参画し、広告管理を中心に婚活情報メディアの運営に携わる。2018年5月、当社を設立。個人が所有するスペースを広告枠として売買可能にするプラットフォーム事業を立ち上げる。東京大学が主催するものをはじめ多数のビジネスコンテストに出場し優秀な成績をおさめる。2018年11月より現事業を展開。

今後、広告は一人ひとりが主体的に生きるために欠かせないツールになる

― PalledAd(パルダッド)の事業についてお教えください。

オフライン広告でも個人が屋外スペースを広告枠として自由に注文できる世界を作りたいと、大学2年生になった2018年にPalledAd(パルダッド)を立ち上げました。2020年12月現在、ビルボードやポスター、デジタルサイネージなどのOOH広告(Out of Homeの略。主に屋外に設置される看板広告の総称)で分かりづらい広告効果を可視化・予測するアルゴリズム「AdRes(アドレス)」に基づいた広告運用支援、媒体設置支援を行っています。Web広告と同じような感覚で、誰もが取引や出稿を簡単にできるプラットフォームの「AdVice(アドバイス)」では、独自の計算式で算出したスコアに基づいて最適な媒体を提案し、クライアント企業の宣伝をサポートしています。

― 貴社のサービス「AdRes(アドレス)」は、どのように広告効果を可視化するアルゴリズムなのでしょうか?

「AdRes」では広告効果を可視化・予測ができるようになるので、OOH広告の効果の分かりづらさを解決します。この広告が何%のユーザーに有効かといったコンバージョンは現在も課題ですが、予測のリーチ数は分かる段階まで開発が進んでいます。この広告効果の1つは、単純にCPMやインプレッションですが、それに基づいてお客様へプランニングもできるようになりました。例えば「20代〜40代の男性であれば、この媒体の組み合わせがリーチ数を最大化できる」と具体的に提案しています。もちろんコンバージョンについても広告効果の必要な指標になるのですが、OOH広告においてどのように計測するのが最適かは、現在も検証している段階です。

― 会社のビジョンに「Everyone Can Be a Hero」がありますが、OOH広告を通じてどのような世界を作りたいと考えていますか?

個人的に社会の中で決められた選択肢とか閉鎖的に歯車として生きるより、多様な働き方というか主体的に生きられる方が断然幸せだと思っています。そんな世界を作るためのビジョンとして掲げているのが、「Everyone Can Be a Hero」(誰もが主人公でいられる社会を実現する)です。そしてそれを実現するための広告は、一人ひとりがより主体的に生きられる社会を実現するために欠かせないツールになると思っています。

例えば、Webでは、すでにYouTuberが広告収入を得ながら好きなことを発信していて、オンライン広告が新たなマネタイズの選択肢になっていく一方、オフライン広告でのマネタイズは出遅れている。オフライン広告もオンライン広告と同じように運用でき、マーケティングツールとしてマネタイズツールとして使えるような手段を提供したいと思っています。将来的なイメージとしては、飲食店や街中で余っている壁のスペースを広告枠として開拓して、大学生がオフライン広告を出して家庭教師のアルバイトを募集して応募者を集めていく、そんなマーケットプレイスを作っていきたいと思っています。

Onlabに入って分かった、広告業界の実態とユーザーが求めること

PalledAd安彦賢

― 起業のきっかけになったエピソードはありますか?

もともと私の起業の根底にあるのは日系大手企業に務める父親の存在かも知れません。安定したキャリアもいいのですが、自分自身としてはあまり魅力を感じていなかったんです。ひとつの転機としてあるのが、高校生の頃に挑戦したビジネスコンテストです。最初はさほど興味はありませんでしたが、準備していくにつれてだんだんと面白くなってのめり込み、結果、そのコンテストで優勝したのがきっかけですね。その後も自分でメディア運営に携わったりといろいろ活動してく中で、ふと、周りを見回すと、東大コミュニティでは有名大手企業に就職して安定したキャリアを歩む学生が多く、社会の歯車になるイメージが強くあって、一方、起業は自分で開拓していく責任もある。失敗するかもしれませんが、新しいことへ主体的に挑戦できる、というのは人生の選択肢として面白いのではと考えたんです。

大学1年生の時には広告管理を中心に婚活情報メディアを運営し、ふと、オフラインの広告、いわゆる看板などの屋外広告ってどうなっているんだろうと調べたところ、ブラックボックス化している実態を知りました。リスティングやSNS広告のようなオンライン広告は効果を計測するサービスが伸び、数字を見て戦略を立てどんどん改善することができる一方で、オフライン広告の効果の可視化においては依然として計測手法が確立されていないことを目の当たりにして、そのギャップを不自然に感じたんです。そこからOOH広告効果の可視化のビジネスに舵を切りました。

― Onlabに応募した理由と当時のPalledAdの状況を教えてください。

私たちはいわゆる学生ベンチャーで、創業者の私をはじめ、社員も全員学生。意欲ある学生が集まっているし、メンバー同士でいつも熱心に議論していますが、もっと全体を俯瞰した視点や専門的なアドバイスでメンタリングしてくれる壁打ち相手が欲しかったんです。

当時はアイデアだけがあった状態で、事業の骨格もできていませんでした。プロダクトはおろか、ユーザーの特定やヒアリングもきちんとできていなくて、20期に参加が決まった時も、同じBatchの会社と比べて私たちは一歩遅れた状態でした。

― 安彦さんが在籍する東京大学にも学生起業家を支援するプログラムがありますが、Onlabプログラムとの違いや特徴などはありますか?

もちろん東大のコミュニティには先輩の起業家がたくさんいるし、リーンキャンバスなど起業の基本的なテクニックを教えてくれたり、相談に乗ってくれたりするので心強いです。それに比べてOnlabでは、デジタルガレージ という会社が運営していることもあって、投資家や業界の有識者と繋げてくださったり、DGグループの担当と一緒に動きながらDGならではのアセットを有効に活用させていただけるので、東大コミュニティにいるだけでは得られない部分だと思います。

― Onlabへ参加して、まず何に着手しましたか?

最初はユーザーへのヒアリングです。当時、顧客の解像度も低かったのですが、メンターの方と丁寧にユーザーのペルソナやニーズ、インサイトの具体性を高めていきました。私たちのビジネスはマッチングのビジネスモデルになるので、広告主に出稿する際に使っていただくのと同時に媒体主であるメディア側から広告枠を仕入れて行くのですが、その両サイドの顧客をどのように確保して拡大させていくのかの筋道がない状態でした。その辺りをヒアリングを通じて一緒に組み立てていくといったことを一緒に行っていきました。今振り返ると、当たり前のことができていなかったので、基礎を一緒に伴走してもらったのは助かりました。

― ユーザーヒアリングを実施してどのような気づきがありましましたか。

当初は、広告主が煩雑な出稿までの手続きをクイックにできる点がプロダクトの強みだと考えていました。例えば、通常のビルボード広告は手続き自体が煩雑で、掲載されるまでに1ヶ月以上かかりますが、PalledAdのサービスを使えば、それが2週間までに短縮できるんです。ところが、現場へヒアリングすると、それがユーザーに刺さっていないことが分かりました。時間短縮が価値になると思い込んでいたのですが、そもそもビルボードはスピードを求めるような媒体ではなかったんです。今なら当たり前の話ですけどね。ヒアリングで判明したことは、どの広告主側も「広告の効果が分からない」という課題を持っていたことでした。そこでその課題にフォーカスして深掘りを進めていきました。

また、媒体主側についてもヒアリングを進めて行く中で、業界の構造や特徴にも気づくことができました。地主さんやビルオーナーさんに話を伺ってみると、実はビルボード広告媒体を新設するのは現場でのトラブルや事故などのリスクが孕んでいて設置したがらないという実状がありました。よくよく調べていくと、広告主側に代理店がいるように媒体側も束ねて開発をしていく媒体代理店がいるので、媒体集めに関しては、直接地主さんやビルオーナーさんではなく、この代理店に絞っていくという戦略を立てることができ、ユーザーヒアリングではそのようなたくさんの気づきを得ることができました。

OOH広告のユーザーと課題にフィットするサービスを生み出す

提供:PalledAd
提供:PalledAd

― 実際に営業やヒアリングをしていく中で、顧客からはどんな反応がありましたか?

そうですね。当初、私たちがアプローチしたのは、OOH広告を出稿したことのある企業でした。OOH広告は広告の中でも認知度が低いため、OOH広告に既に取り組んでいる企業であればPalledAdのサービスも抵抗なく使っていただけるのではないかと考えたんです。

しかし、ヒアリングを進めるにつれ2つのことが見えてきました。1つは既にOOH広告を出している顧客の多くは、広告効果をあまり気にしていないこと。サービスを説明して効果が可視化されるのは嬉しいとおっしゃるものの、分からなくても使い続けている。こういったお客様にとって、広告効果が見えないことは「ペイン」ではなかったんんです。もう1つはこの業界はしがらみが強く、古くからのお付き合いが存在するため「看板を持っているけれど自動更新されているだけ」というケースも意外と多いことが分かりました。

― 逆に新規で刺さりそうな顧客セグメントの手応えはありましたか?

はい。今までOOH広告を使ったことがないスタートアップがまさにそれでした。現在、SmartHRさんをはじめ、BtoBのSaaSのスタートアップはタクシーなどの交通広告を出稿されていますが、その背景にはオンライン広告やデジタルマーケティングでの認知拡大に限界があると感じているからです。

プロダクトマーケットフィットして、認知を拡大させていく段階に入るとCMも含めオフラインでのOOH広告やビルボードが1つの選択肢になる。現在、SmartHRさんは交通広告は出しているものの、OOH広告は出していない。理由はブラックボックス化しているからなんです。こういったスタートアップの企業にヒアリングをすると、OOH広告とは何か、その効果はどれくらいか、どのようなアプローチをすれば良いのかが分からないという課題があります。電車であれば、駅で広告を貼ると乗降者数などの数字で効果が見える。価格も決まっているし、大手鉄道会社であれば専属の代理店もいる。ビルボードの場合、どこにその問い合わせすればよいかが分からないし、効果も分からないし、価格も代理店ごとに違う。そういった点で、PalledAdのプロダクトは、ビッグデータ解析やVR技術の活用によって広告効果も可視化・予測できるし、価格も全て比較できるのでフィットすると確信しています。

― 昨今のコロナ禍での影響はどの程度ありましたか。

人出が少ないこともあり、OOH広告にとってはかなりの痛手でクライアント獲得もかなり難しい現状が続いています。そんな中Onlabから支援いただいているのは、DGの代理店経由でOOH広告のプランニングの際にPalledAdのプロダクトを使っていただき、獲得を一緒に進めていくという内容です。DGグループの中でも特に不動産業界の顧客を抱えるDGコミュニケーションズでは、マンションなどの不動産商品の販売スケジュールが既に決まっているので、地域へのOOH広告が必要不可欠です。そういった案件のご紹介を支援頂いています。

社会人として圧倒的成長を遂げたいなら、学生のうちに起業家になること

提供:PalledAd-社内定期ミーティングの様子
提供:PalledAd-社内定期ミーティングの様子

― PalledAdのメンバーは大学2年生から大学院生までの学生とのこと。チーム内でのコミュニケーションやお客様が持つ課題の把握はどのように進めていますか?

起業したての頃は、社会人でもないので、ユーザーへのヒアリングや営業でとにかく回数をこなして経験を積み、お客様や業界の課題に対する嗅覚を養ったりビジネススキルを身につけたりしています。また、全員が集まる定例ミーティングを週に1回開催し、一人ひとりがプロジェクトの進捗や今後の予定を共有し、全員で同じ情報と今後の目標を握り合っています。コミュニケーションは新型コロナウイルスのこともあり、基本的にはSlackやzoomでこまめに行っています。

― 学生のうちから起業することに不安は感じませんか?

私は、学生で起業することにリスクを感じないんです。資金調達もさせていただいて、事業を成功させるつもりで進めていますが、仮に失敗したからといって、就職ができなくなるわけではない。むしろスキルや経験、コネクションと得られるものの方が多いです。

私は大学1年生の時に立ち上げメンバーとしてサイトを運営した後、現在CEOとしてPalledAdの事業に携わっているので、経営者として見てきたものや味わってきたものが積み上がってきています。起業することを先延ばしにして「一旦就職してスキルを付けてからやります」では、基礎的なビジネススキルを得られるかもしれませんが、学生のうちに暗中模索してさまざまな経験した方が倍の速度で成長すると思います。

― 学生で起業したいと思っている方や、一般企業に勤めているものの他にやりたいことを考えている方へメッセージをお願いします。

私がそんなことを言える立場じゃないというのは前提ですが、行動することが正義だと考えています。私自身もできていないことが多々ありますが、悩むことには意味がないし、それに費やす時間がもったいない。迷って何もしないよりも、どんどん行動して仮説・検証を重ねていった方が有意義だと思っています。

目指すは「広告版メルカリ」個人が広告を出せる世界を創りたい

PalledAd安彦賢

― いつでも誰でも広告を自由に打つ社会を創る、とありますが、将来的にはどのようなプランを考えていますか?

ユーザーは法人のみならず、個人レベルまで落としていきたいと考えています。オフライン広告には可能性があると思っています。オフライン広告はあまり注目されていないし、ニッチだとも言われますが、現時点ではオフラインとオンラインが接続できていないので、ゆくゆくは両者を繋げて有効に活用されるようにしたいです。

もともとPalledAdは、ビルボードなどのOOH広告をC向けのサービスとして構想していました。屋外で余っているスペースを広告枠として売り出して、そこへ個人の広告を貼れるようなサービス、つまり「広告版メルカリ」がやりたかったんです。飲食店の余ってる壁スペースやパソコンの側面で広告を出すことができて、個人の仕事探しやアマチュアバンドのライブ告知でも良いですし。

ただ冷静に考えると、アプローチ方法が違っていたな、と。これは学生あるあるなのかも知れないですが、新しいプロダクトを創ってC向けサービスにチャレンジするという思いは強いのですが、実はグロースがすごく難しいし、アプローチとしては合理的ではない。既存の業界の課題を解決してリプレイスするビジネスや、B向けから攻めて将来的にC向けに進めて行く方が良いのではと、気づいたんです。そういった部分に気づけたものOnlabのみなさんとの戦略のディスカッションがあったからだなと思います。

ですので、現状はオフライン広告全体のDXに取り組んでいって、その先には誰もが広告を有効に活用できる世界を実現させるため、ユーザーが自分の広告スペースを出品し、誰もが広告を出すことができる広告版メルカリを作って行きたいと考えています。

最新のイベント情報、Seed Accelerator Program募集のお知らせ等をメールにてお送り致します。