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関わる全ての人に「プラス」を届けたい。介護施設向けレクリエーションを提供するえぶり・プラス|Meet with Onlab grads vol.13

関わる全ての人に「プラス」を届けたい。介護施設向けレクリエーションを提供するえぶり・プラス

< プロフィール >
株式会社エブリ・プラス 代表取締役 佐藤 亜以

愛知県名古屋市出身。短大を卒業後、介護施設でヨガのインストラクターとして様々な介護施設を回る中で、頑張って生きてきた人々の人生の最後の生活に疑問を持つ。介護施設側も高齢者に楽しい生活を送ってほしいとレクリエーションを提供しているが、満足な提供ができずに悩んでいることを知る。多くの選択肢を提供したいとの想いから、2014年にインストラクターやカルチャー教室の講師を集め、現サービスの前身となる介護施設レクリエーション派遣サービスを個人事業主で開始。2017年に法人化。

Open Network Lab (以下、Onlab) は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、Seed Accelerator Programを2010年4月にスタートしました。2020年で10周年となるOnlabは、今までに数々のスタートアップをサポートしてきました。

今回は、介護施設向けのサブスク型レクリエーション提供サービスが注目されている、Onlab第17期で株式会社エブリ・プラスの代表、佐藤 亜以さんのお話です。愛知県内を中心とした介護施設様に、高齢者が人生の最後に何を楽しみたいかを逆算することを大事にしながら300種類ものレクリエーションを提供しています。

Onlabに参加したきっかけやプログラムから得られた経験等を、代表取締役の佐藤さんにオンラインでインタビューしました。

介護施設へのレクリエーションを通じて、高齢者に楽しい選択肢を持つ機会を提供したい

提供:えぶり・プラス
提供:えぶり・プラス

― えぶり・プラスのサービスについてお教えください。

えぶり・プラスは、介護施設を利用している高齢者に向けてレクリエーションを提供しています。2014年に創業して以来、入居者のために年間を通して体操やマジックショーなどを開催したい介護施設と、介護施設で楽しい時間を提供したい個人講師や、企業、地域の団体等に登録をいただき、高齢者のやりたい気持ちと繋ぐ役割をしています。2020年9月現在、レクリエーションは300種類を超え、愛知県内を中心として提携パートナー様は200名、累計7,000回以上開催してきました。

基本的に介護施設では、人材不足で多忙を極めるスタッフさんは自分でレクリエーションを実施するか、その都度ボランティアやイベンター、外部講師を呼んでいました。ほとんどの介護施設のスタッフさんは高齢者に楽しんでほしいという強い想いを持っていますが、同じ内容ばかり提供しているとマンネリ化してしまうし、楽しい時間を過ごしてもらうための新たな企画を1から実施するのに、約8時間もかかってしまう。そこで、えぶり・プラスのサービスを使えば、マグロ解体ショーや、オンライン旅行、写真撮影会、体操教室や、書道、施設内ネイルサロンの開催と、約300種類からさまざまなテーマを選べます。レクリエーションを提供するパートナー候補に対して、面談と審査をしているので、どのコンテンツもクオリティが高く、誰にとっても楽しい機会を提供することができています。

― 新型コロナウイルスの感染拡大によってサービス業で経営難が懸念される中、佐藤さんはどのように事業を進めていますか?

介護施設でも、介護外部の方の入館を制限したり、実際に人が行き来する、オフラインでもサービスを制限したりする施設もあります。そこで、最近では介護施設とレクリエーション提供者の双方を繋いで、オンライン体操やオンライン旅行などのレクリエーションを始めています。

― IT化が進んでいないと言われる介護業界で、オンライン化をどのように取り組んでいるのですか?

人材不足が深刻化する介護業界では、ICT化して業務効率化を求められているため、遅かれ早かれ、オンライン化はマストだったんです。コロナ禍でも介護施設は他業種と連携しなければならず、介護施設のスタッフさんも手探り状態でITを導入し始めています。弊社では、オンラインでレクリエーションを提供する傍ら、ZOOMの使い方が分からないお客様を丁寧にサポートしています。介護施設にPCやスピーカーが必要であれば機器をお送りし、開催のサポートをしています。接続方法が分からないという声があれば、何度でも電話しますし、必要であれば施設の外まで伺って機器の調節なども行うなどしてフォローもしています。

起業を決意したのは、相手のニーズに適したソリューションを提供したかったから

提供:えぶり・プラス
提供:えぶり・プラス

― えぶり・プラスを立ち上げる前、佐藤さんはどんなお仕事をしていらっしゃったんですか?

以前は、ヨガ講師をしていました。当時、フィットネス・クラブのスタジオではヨガ講師になりたい人が溢れていて、レッスンの枠も取り合う状態。「これは私じゃなくても良いな」と思っていました。私はヘルパー2級の資格を持っていたので、介護業界だったらニーズがあるかもしれないと考えて、介護施設を訪問して高齢者にヨガを教えるようになりました。

あらゆる介護施設を回っていくにつれ、頑張って生きてきた方々の人生の最後の迎え方に疑問を持つようになりました。多くの介護施設のスタッフさんが「高齢者に楽しく過ごしてほしい」という想いで働いている。しかし、実際はそこに向き合える時間を充分にとれず、「レクリエーションがマンネリ化している」という状態に直面していることを知りました。また、高齢者も一人の人間ですから、当然ながら楽しいこと・楽しくないことはそれぞれ違います。ヨガだけでは楽しくないと思う方もいらっしゃるので、多くの選択肢を提供できればこの課題は解決するのではないかと考え、えぶり・プラスを立ち上げました。

― ヨガ講師として活躍していたところから起業することになって、不安はありましたか?

特に不安はありませんでした。

以前、エステサロンに勤めたことがあるのですが、肌に悩みがあるお客様が来店したら、その方に向けた解決策として自社商品を売らなければならなかったんです。正直、私は「このお店の商品じゃないものが良い時もあるのに」と思ってしまってなかなか売れなかった。自社のサービスでしか、お客さんの課題を解決できないという接客は向いていなかったんですね(笑)。相手のニーズに最も適したソリューションや選択肢を世の中のあらゆるサービスの中から提案したい、と、その時から思っていたのかもしれません。

何となく分かっていた顧客ニーズ。初めて言語化できたのはOnlabに入ってから

― 介護施設に充実した選択肢を提供する事業を立ち上げた後、Onlabに参加したきっかけをお教えください。

2014年3月にえぶり・プラスを立ち上げてお客様が少しずつ増えていく中で、全方位的にすごく喜んでいただけるので、このサービスをもっと拡大したいと思ったんです。当時の私はオペレーションや経営など、ビジネスのビの字も知らず、いわゆるスタートアップが取り組んでいる事業の回し方を勉強したことがなかったし、ビジネスについて気軽に相談できる人もいませんでした。奇しくも、同じ名古屋の介護業界にいて、介護保険を利用しない在宅介護サービス「イチロウ」を運営する水野さんとは知り合いで、彼からちょうどOnlabに参加したという話を聞いたんです。

そんな水野さんに久しぶりに再会した時、水野さんがOnlabでピッチに向けて綺麗な資料を作って、事業のビジョンを語っていたんです。そんな変貌を遂げた水野さんからも勧められ、Onlabプログラムへ応募することにしました。

― プログラムを受け始めた時、えぶり・プラスはどんな状況でしたか?

2018年4月当時、明確な事業計画はありませんでしたが、すでに200名のレクリエーション人材と40社の介護施設のお客様が登録していたので、月に100件以上を回していました。対応件数が少しずつ増えていて、なんとか必死に頭の中で組み立てながら回していた時期でしたね。レクリエーション人材はじかにスカウトしたり、無料の求人を載せたりして愛知県を中心に集めていきました。

― Onlabのメンターからは、どんなアドバイスを受けましたか?

メンターからはまず、どういう介護施設がターゲットなのか、どのレクリエーションが人気なのか、また、お客様のどんな課題に刺さっているのかを問われました。また、サービスを使うお客様を介護施設やデイサービス、老人ホームとジャンル分けをすることも提案してくれました。それまでは事業計画を立てたり言語化したことがなく、こんなに綿密に考える機会は初めてでした。初めて他の人から事業を客観的に指摘されて、私はプライドだけ高くて、素直にアドバイスを受け付ける準備ができていなかったかな、と今では思います。

このまま続けてもお客様のニーズは叶えられるけれど、名古屋だけで良いのか。もし全国各地の介護施設でレクリエーション人材を派遣できるように事業を拡大したら、誰がターゲットで何が刺さっているのかを調べる必要がある。また、オペレーションが月1000件に増えても対応できるようにするには、業務効率化を考えなければならない、とプログラム中に何度もディスカッションしました。

― メンターからアドバイスを受けてから、どのようなアクションを始めましたか?

介護施設3社に自社サービスに対するヒアリング調査をしました。結果、介護施設によってレクリエーションを利用する理由は違っていて、高齢者に楽しんでもらうという大前提の他に、新規施設入居者を集客するため、レクリエーションができないスタッフを支援するため、300種類という豊富さが良いためという複数の声が挙がったんです。介護施設のお悩みは知っているつもりでしたが、ユーザーインサイトがどこか、という視点で調べて現状を把握したのは初めてでした。

― 新たな気づきを得た後、Onlabのプログラムではどのように過ごしましたか?

残り1ヶ月になった時、ピッチの資料を作って事業のあるべき姿や現状課題、その解決策を発表することになりましたが、最初は上手に組み立てられず、ましてや業界以外の人にサービスを理解してもらえるように説明するなんてできませんでした。お客様の課題を何となく分かっていたからサービスを導入していただいてはいるのですが、それがなぜなのかを説明できなかった。介護施設に細かくヒアリングした後、メンターと何度もやりとりしていく中で、介護施設の実態と課題が明確になり、その解決策としてこのサービスがある、と納得してもらえる資料が完成しました。

言語化以外では資料作成に苦労しました。プログラム中、OfficeHourという進捗報告会が毎週開催されていたのですが、目標を立てて仕事を進めるという習慣が身についていなかったんです。同期のみんなはできているのに自分はできない。せっかく毎週来ているのに「今週の進捗」を発表できないのは辛かったですね。でも、3ヶ月間プログラムに参加しているうちに、当初はMacBookのメモ機能を駆使していたような私が、資料はもとより事業や会議の進め方を全方位的に学べるようになったことは大きな収穫でした。いわゆるビジネスの世界で仕事をしたことがなく、周りにそういった人もいなかった私が、この期間でそういった世界で活躍していて、様々なITツールを使いこなす皆さんと一緒の環境にいられた経験は、自分の「当たり前」のレベルを格段に底上げすることになった、本当に凄まじい収穫でした。

Onlab卒業後、インタビューしながらフィードバックを得るサイクルを繰り返す

提供:えぶり・プラス
提供:えぶり・プラス

― Onlabに参加した後、どんな変化がありましたか?

同じように起業して事業に取り組む仲間や、Onlabメンターのように多くの会社や知識を持つ方と知り合って、彼らと同じような目標を持って切磋琢磨し合えるようになりました。彼らの業務スピードを間近で感じたり、業務効率化に欠かせないツールの存在を知ったり、資金調達をして事業を拡大している話を聞いたり、これまで雲の上の存在だった人が身近になったんですよね。そもそも、Onlabに参加していなかったら、資金調達をするような事業計画を立てられなかったと思いますし、現在、えぶり・プラスでは社内、社外システムを通じてサービスを提供しています。当時を振り返ると、Onlabに参加していなかったらこの発想すらなかったでしょうね。

― ユーザーファーストのコンテンツを作る上で、これは必ずやっていることというものはありますか?

レクリエーションの企画を立てたら、現場のお客様には何が受けるのかをテストしています。例えば、何か面白そうな企画を立てたら、「どう思いますか」と介護施設に聞いて、反応が良ければメニュー化するといったMVP(Minimum Viable Product)を回しています。高齢者やそのご家族にアンケートを取ってみると、思っても見なかったものを、お金を支払っても開催したいものがわかるので、スタッフさんの「アハ体験」にもなっていますね。

― お客様から挙がった提案で、ユニークなものは何でしたか?

高齢者の世代にとって憧れである「フェラーリに乗りたい」という夢や、オンラインで大物歌手を呼んで複数の介護施設を繋いで視聴するという大規模なイベントですね。オンラインが進むとオフラインではできなかった企画の可能性が広がっていくので、一人でも多くの人の「やりたい」を実現していきたいです。

レクリエーションで楽しい時間を過ごしていただきながら、現場の業務効率化も実現する

― 今後、えぶり・プラスはどんな方向に向かっていきたいですか?

えぶり・プラスでは、人がどんな生活を送りたいかを考えた企画作りや、選択肢がほしい人にサービスを提供し続けることを大事にしていきたいです。もう一つは、人材不足で多忙に悩む介護施設の業務支援です。実は、一つの新たなレクリエーション・アクティビティを計画するには約8時間かかるんです。えぶり・プラスに依頼すると、楽しいレクリエーションの提供と業務時間の圧縮が同時に実現できます。開催に欠かせないチラシも、高齢者のご家族への報告書も簡単に作られるようになる。高齢者に心から楽しんでいただきながら、施設のスタッフさんも業務がラクになるという2軸でサービスを強化していって、どの介護施設でも導入するサービスにしたいと考えています。

― えぶり・プラスは、全国展開を見据えていらっしゃるんですね。

2020年9月現在、愛知、岐阜、三重を中心とした東海エリアでサービスを展開していますが、東京への進出も計画しています。それに向けて、名古屋本社で初めて営業専任の人材を採用しました。現在、資金調達を終えて様々な施策やテストをしているので、それが明確になって新たな可能性を見出したら、東京と東海エリアでレクリエーションのできる人材500名、東京の介護施設500社を目指します。

― 佐藤さんが人材を採用する条件や「ここは必ず見ている」をお教えください。

候補者と面談する時、様々な経験を積んでいることにはもちろんリスペクトをしていますが、そのプライドを捨ててやる気があるかを見ています。あとは反省できる方ですね。高齢者の方々や介護施設のスタッフさんに対してリスペクトを持ち、心から良いサービスを提供しようとしている方なのかを見極めて採用しています。

― これからOnlabに応募しようと考えている方へのメッセージをお願いします。

Onlabを使い倒した方が良いと思います。そして、仮説を持ってメンターに積極的に質問しに行く。例えば、「私はこういう感じで、マーケティングをこうやると1年間考えたのですが、どう思いますか?」と。漠然と「分からないので教えてください」ではダメなんです。最初は何を質問したら良いのかも分からない時もあると思います。でも、「今、私は何に困っているのかが分からない」というレベルから伝えられたら、メンターや仲間が一緒に深堀りをしてくれますし、自分の質問力も養われていくと思います。Onlabに参加する時は、学ぶ姿勢を準備しておくと新たな気づきをどんどん吸収できると思っています。何度も言いますが、やはり私の場合はOnlabに参加して、様々な方がいる環境に身を置かせて頂けたことで、自分の思っていた「普通」や当たり前のレベルが格段に上がり、視座を高められたことが一番よかったです。

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えぶり・プラスが提供する300種類のレクリエーションは、オンライン国内・海外旅行、書道やマグロ解体ショー、出張スナック、遺影の撮影会、赤ちゃんと触れ合う会、音楽療法、アニマルセラピーなどと多岐に渡っていて、高齢者の皆さんが心から楽しんでいらっしゃる姿を容易に想像できます。そんなえぶり・プラスでは現在、広報・PRの人材や、法人向けコンサル営業人材を募集中。佐藤さんやえぶり・プラスの仲間と一緒に、誰しもが選択肢や希望を持っていただくきっかけを作りたい方は是非、一度お話を聞いてみてください。

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