2023年01月18日
誰でも簡単にNFTコレクションを発行できるサービス「Dixel Club」は、スイス最大のフィンテックアクセラレーターである「F10」と韓国最大のモバイルプラットフォーム「Kakao」が開発したレイヤー1ブロックチェーン「Klaytn」にも支援されている、韓国発のスタートアップです。Onlabが2021年に立ち上げたweb3グローバルインキュベーションプログラムでのイベントで、海外スタートアップが日本市場に新たなweb3の世界を提案するUnlock Japan Award(最優秀賞)に輝いたDixel Club共同創設者のYoungHwi Choさんに、Dixel Clubが展開するサービスや、インタラクティブなNFTコレクション作成プラットフォームとして今後どのようにマーケットを拡大していくかをオンラインで伺いました。
< プロフィール >
YoungHwi Cho Dixel Club CEO & Founder
Dixel Clubの共同設立者兼デザイナーYoungHwi Choは、5年間にわたりDixel Club、Hunt Town、Mint Club、Neverlose Moneyなどの分散型アプリ(DApps)の設計と立ち上げを経験。cryptoの専門家だけでなく、一般の人々がアクセスできるweb3製品の作成に情熱を傾けています。
Contents
― まず、YoungHwiさんご自身とDixel Clubについて教えてください。
私はDixel Clubの共同創設者兼デザイナーとしてweb3業界に5年携わっています。ブロックチェーン上で機能する10種類以上のアプリを設計してきましたが、普段はユーザーインターフェースの専門的なパーツをデザインしたり、Wallet Connectやさまざまなユーザーフローを研究したりするのが好きですね。
Dixel Clubは、ノーコードで簡単にNFTコレクションとNFTチケットを発行できるサービスで、NFTをミントするユーザーが自由にデザインできるのが特徴です。また、主にNFTプラットフォームとマルチチームベースを専門としているので、複雑なスマートコントラクトなどもありません。初歩的なNFTプロジェクトを始めようとしている人にとって、Dixel Clubはデザインのスキルがなくても気軽に楽しめるサービスなので、インタラクティブなピクセルアートフォームを使えば数分以内に絵を完成できます。
― 実際のDixel Clubのピクセルアートの画面はどのようになっていますか?
公式サイト https://dixelclub.com/ にアクセスしたらすぐにピクセルアートでNFTプロジェクトを体験できます。絵が得意でない人でもラクに作れるツールになっているので、学生時代の美術のクラスに戻ったような楽しい気分になれます(笑)。
画面にはカラーパレットなどの描画ツールがあるので、好きな色を自由に選択できます。絵にタイトルを付けて完成させたら、NFTコレクションのユーザーとシェアできるようになっています。また、作品を見たユーザーはオリジナルの絵を土台にして色や形を自分好みにカスタマイズして新たなコレクションも作れるんです。
― Dixel ClubにはアートだけでなくNFTチケットのサービスもあるそうですが、どのようなものでしょうか?
ミートアップのようなオフラインのイベントを開催する時、ユーザーはDixel Clubをチケットプラットホームとして利用しています。「Onlab web3 Global Pitch Session」が開催された時も参加者に向けて何種類か作りましたが、チケットを発行するとデザインされたQRコードとチケットが出てきます。それを受付に見せてデータ認証をしてもらえばイベントに参加できます。イベント主催側からすると、チケットの支払設定をすることでユーザーからの集金が可能になるので魅力的なサービスなんです。
それに、参加者にとってもわざわざ個人情報を伝えなくてもチケット所有者だと認識してもらえるので便利ですよね。Googleフォームを使ってもメールアドレスや氏名を入力しなければならないんですから。その点、Dixel Clubではチケット番号以外の情報を入力できないようになっています。
― Dixel Clubにはピクセルアートフォームの他にも、プラットホーム上でたくさんのプロジェクトがあるそうですが、どんなユーザーがどんなプロジェクトを、どんな目的で利用しているのでしょうか?
Dixel Clubはプラットフォームのプロジェクトのみならず、コミュニティやイベント、チケットなども運営しています。例えば、ADD-DAOというプロジェクトはweb3のアート作品を好むユーザーが集まるグループですが、「add ball」と呼ばれるNFTコミュニティパスを持っている人だけがコミュニティや活動に参加できる仕組みになっていて、週1回抽選会が行われています。コミュニティの参加者は実在するアーティストが作ったアート作品がどれかを推測し、この抽選会で優勝した人がその作品を獲得できるんです。コミュニティでアート作品を楽しんだり、アーティストをゲストに招いて展示会を開催したりするのって面白いですよね。また、このコミュニティで開催されるアーティストのトークライブに参加することでコミュニティパスの有効利用ができます。
他にも、「Bring Deer Star」というチャリティを目的としたNFTチケットのプロジェクトでは、NFTチケットを作るのに50クレイ・トークンがかかります。参加者はNFTの購入を通じてチャリティへ寄付しています。Dixel Clubを活用したチャリティ活動というのも画期的ですよね。
もう一つ、別の事例として「ggoma gang」というプロジェクトがあります。これはweb3上の学習プラットフォームで、現在1000人近くのユーザーがいます。こちらはDixel Clubで生成されたBANANA PASSというNFTを使ったもので、ホルダー(所有ユーザー)はdiscord上でコミュニティトークンとして使用できるポイントを獲得しています。ユーザーがBANANA PASSを作り出すと0.1 Ethereum (NFT発行コスト)がかかり、プロジェクトのトレジャリーに直接送られます。また、ユーザーは自発的に学びたいものを提案できるようになっていて、それにかかるコストを算出した後、リクエストが通るとトレジャーリーで管理されている資金を活用できる、DAOのような面白いコミュニティの資金管理の仕組みがあります。
― お金を稼ぐ目的のNFTプロジェクトとは違い、Dixel Clubはコミュニティを主体としたプロジェクトに注力しています。なぜユーザーは既存のオンラインサロンやコミュニティ、プラットフォームの代わりにNFTを求めるのでしょうか。
「トークンを所有する」ということは、実際に所有しているものを誰も触ることができない。つまり、政府や銀行でさえもウォレットの秘密鍵を持っていなければ奪うことはできません。これが基本的なコンセプトです。暗号通貨ではこのオーナーシップの概念はとても重要なんです。デジタルアセットに対して所有の概念が生まれることで、自然にコミュニティが形成され、コミュニティに対して価値が付与されていきます。多くのNFTプロジェクトはマーケティング活動に注力し、フロアプライスを引き上げようとしますが、それは一過性に過ぎません。200%以上の利益を狙いにいくような経済的利益を追求する行動に出てしまいやすいんです。このように利益だけを追求し、NFTがもたらす価値や実用性を考慮しない現状はもったいないと感じています。
Dixel Clubのプロジェクトでは多くのutilityを保有でき、ただ利益を得るといった部分にあまり注力していません。そのプロジェクトに参加する時、ユーザーはプロジェクトオーナーが設計したコミュニティ活動に期待しているんです。これはNFTを売却して利益を得ることよりもかっこいいですよね。私たちはトレードを目的とした取引市場ではなく、mintingに重きが置かれたminting市場を作っていきます。
― Dixel Clubを利用しているのは、クリプトネイティブのような人たちでしょうか。それとも、初めてNFTをミントするような人たちでしょうか?
半々ですね。クリプト業界に長くいるインナーサークルの集まりも存在しますが、実際に暗号通貨を体験したことがない人も多いので驚きます。ほとんどの所有者はNFTが初めてなので、Metamaskの使用法やNFT、トークンのシステムを学ぶ必要があります。Dixel Clubはどんな人にも簡単に使えるように設計されているので、ユーザーはすぐにキャッチアップしています。私たちはDixel Clubがweb3全体のメソッドオプションになると信じています。
― そのとおりだと思います。NFT市場全体が飽和しているように感じますし、暗号通貨を使い過ぎていますよね。新しいユーザーをweb3領域に呼び込んでいく必要があると思いますが、今後、NFTはどのように社会に浸透していくのでしょうか?また、現時点で障壁になっているものは何だと考えますか?
まず、NFTを利用するにはウォレットシステムを理解する必要があります。ほとんどの人にとってまだ新しい概念で、Metamaskも簡単には使いこなせません。一方、ウォレットシステム向けにたくさんのプロバイダーやAPIもあるので、私たちはもっとシンプルな体験を提供しようとしています。
例えば、Rainbow WalletというウォレットプロバイダーではRainbow kitを提供していますが、Rainbow kitのおかげで各自が財布と繋げるのがラクになったので、Metamask以外のウォレットの選択肢が増えました。つまり、web3を社会に浸透させていくためにインフラの整備が必要であり、初めてNFTを体験する人たちを引き付けるためにその改善は重要なんです。
2つ目に、NFTが持つ有用性はお金よりも重要になるでしょうね。先ほど飽和状態だとおっしゃったように、人々の意識は実用性を高めていく方向に向かっていくでしょう。そうすると、そのお金だけを期待している人たちは下落相場になったら市場から去っていき、残った人たちはNFTの実用性の部分にもっと焦点を当てようとするでしょう。NFTの真の目的を理解する人たちこそ、市場の中心にいるべきです。そうすれば、インフラストラクチャーが改善され、より多くの分散型アプリケーションが使われるようになると考えています。
― これからの5年間、Dixel ClubはNFT マーケットでどのように進化していくのでしょうか?
Dixel Clubは、誰もが簡単にNFTコレクションとNFTチケットを発行できるサービスを提供していますし、ユーザーが実際に利用することでより大きな効果が期待できるので、独自の方法でテクノロジーやプラットフォームに触れている人たちを見るとわくわくします。現在、地域のコミュニティやイベント、アクティビティに参加している人たちとのコラボレーションがあり、その活動を通じてNFTの新たな活用方法や戦略が明確になってきました。
また、私たちは日本でも同じような戦略でできるだけ多くのコミュニティにDixel Clubを利用してもらいたいし、日本のコミュニティの皆さんに早くお会いしたいですね。Dixel Clubで新たな活用法を見つけてもらえるように積極的に呼びかけたいです。
― Dixel Clubが既存のコミュニティと融合していくことはすばらしいと思います。例えば、ブロガーやYouTuberが独自のDixel Clubを作成してフォロワーにNFTを発行させたものが彼らのアイデンティティになる世界を想像しています。
確かに、Dixel Clubはメンバーズパスやチケット、チャリティ目的などさまざまな利用シーンで可能性があります。Dixel Clubは使い方次第で別の新たな価値やインスピレーションを生み出すサービスだと思っています。
― 今後、YoungHwiさんが構築していくDixel Clubを楽しみにしています。ありがとうございました。
ありがとうございました。 私も日本市場での活動を楽しみにしています。
(執筆:佐野 桃木 編集:Onlab事務局)