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起業のヒントは古里に。地方で歩むグロースへの道 ーOnlabTalk from HOKKAIDO #2

起業のヒントは古里に。地方で歩むグロースへの道 ーOnlabTalk from HOKKAIDO #2

北海道初のシードアクセラレータープログラム「Onlab HOKKAIDO」。現在、第4期の参加スタートアップを大募集中です!本記事OnlabTalk from HOKKAIDOでは、起業家の皆さまにプログラムの魅力をご紹介するため、卒業スタートアップや関係者にお話を伺っていきます。2回目の今回は、狩猟者向けコミュニティプラットフォームを運営するFant(北海道音更町)と、漁業者の海難救助要請システムを開発中のnanoFreaks(福岡市)がゲスト。いずれも一次産業に根ざした地域色豊かなスタートアップです。Onlab HOKKAIDOに参加し、事業成長の道はどう広がったのか。両社の代表取締役に伺います。

< プロフィール >
写真左:株式会社nanoFreaks代表取締役 千葉 佳祐

1995年、北海道紋別市生まれ。山形大学理学部を卒業後、九州大学大学院に進学。近年盛り上がりをみせる福岡の起業カルチャーに刺激を受け、修士1年の2019年にnanoFreaksを設立。「Startup Go!Go!」「TORYUMON」など福岡を代表するピッチイベントで上位入賞を果たし、Onlab HOKKAIDO第3期Demodayは最優秀賞。好きな言葉は「賢いってのがそういうことなら、オレは一生バカでいい」。好きな魚はマグロ、サーモン。

写真右:株式会社Fant代表取締役 高野 沙月

1990年、北海道音更町生まれ。明星大学造形芸術学部卒。グラフィックデザイナーとして東京都内の企業で約4年間勤務し、北海道へUターン。地元音更町に近い上士幌町の任期付き職員「地域おこし協力隊」として働く傍ら、狩猟の楽しさに目覚める。2019年にFant設立。Onlab HOKKAIDO第2期Demodayオーディエンス賞、NTTドコモ・ベンチャーズ第4期採択中。好きな言葉は「温故知新」。好きなジビエ料理は「エゾシカのブラッドソーセージ」。

ハンター300人 アクティブに情報交換

― お二方とも北海道に根ざした事業内容ですね。詳しく教えてください。

高野(Fant):
私が運営するのは、日本全国のハンターを繋げるコミュニティプラットフォームです。いつどこで、どんな動物を捕獲したかや、使った銃や罠の種類など、ハンター同士が手軽に情報交換できるサービスを提供しています。狩猟免許を取得する若者が近年増えているのですが、狩猟場所が分からなかったり、情報交換できる仲間を見つけにくかったりと、初心者ならではの課題がありました。昨年春にローンチし、沖縄から北海道まで全国のハンター約300人にお使いいただいています。

Fant代表取締役 高野 沙月
Fant代表取締役 高野 沙月

千葉(nanoFreaks):
私たちは、出漁中に海に転落した漁師が、自分の手でいち早くSOSを発信して救助要請するシステム「yobimori」を開発中です。漁師の皆さんが私たちの小型発信機を身につければ、転落してわずか数秒で近隣の漁業者や救助機関に通知できます。救助者同士の船の位置も把握できるため、捜索活動を円滑化することも可能です。私の故郷である北海道紋別市の漁師さんや弊社拠点がある福岡市内の漁協に協力していただき、現在テスト製品を開発中です。今年6月の正式ローンチを目指しています。

海に消えた祖父 漁師の命を守るため

― お二人とも北海道での暮らしが起業の原体験になったそうですね。

千葉:
私はオホーツク海に面する北海道紋別市の生まれです。祖父は紋別の南にある知床半島の漁師で、私が生まれる前に仕事中の海中転落で亡くなりました。遺体は見つからず、祖母や母は「おじいちゃん夢に出てきたよ」「まだ生きてるんじゃないか」などとよく話していて。紋別市は漁師町なので、私以外にも出漁中の事故で家族を失った人がいました。漁師は命がけの仕事です。でも私は、その当たり前をひっくり返して、安全な仕事にしたいんです。世の中はデジタル技術でどんどん変わっていきますが、漁業はまだまだ進化の途上。デジタルと漁業の間にある壁を取り払い、デジタルの力で漁業を変えていきたいと思います。

高野:
私の故郷は、北海道で最も農業が盛んな十勝地区の音更町です。ジビエの魅力を知ったのは、東京都内で働いていた頃でした。偶然入ったレストランでお肉の美味しさに目覚めました。自分で狩れば沢山食べられると思って、狩猟免許も取ったんです(笑)。実際に狩猟を始めたのは、北海道にUターン就職してから。地元音更町に近い上士幌町の猟友会に入り、先輩ハンターからさまざまなことを教わりました。とてもフレンドリーな猟友会だったのですが、他の猟友会のハンターと話すと様子が違って…。昔ながらの風習で大変だとか、ハンター同士の縄張りがあって友好的じゃないとか、悩みを聞きました。初心者が楽しく始められて、続けられて、仲間と繋がれるにはどうしたらよいのだろう。そんな問題意識からFantを作ったんです。

nanoFreaks代表取締役 千葉 佳祐
nanoFreaks代表取締役 千葉 佳祐

広い北海道 マーケットも大きい

― 北海道って、起業のモチベーションが生まれる土地なのでしょうか。

高野:
そう思います。恵まれた大地があり、面積も市場規模も大きく、リアルな現場も身近にあって。狩猟に限って言うと、北海道は日本で最もハンターの数が多く、ジビエの食肉処理施設数も利用量も日本一。一方で、野生鳥獣による農業被害が日本で最も多く、ハンターへの駆除ニーズも非常に高いエリアです。日本一の狩猟環境があることは、私の大きなモチベーションになっています。

千葉:
漁業に関しても、北海道は恵まれた起業環境だと思います。漁業者数が日本で一番多く、yobimoriを北海道全域に広げられたら大きなビジネスになります。私は現在、福岡に拠点を置いていますが、故郷北海道での事業展開を見据えてOnlab HOKKAIDOに参加しました。新型コロナウイルスの影響でプログラムはフルオンライン化されており、道外からの参加でも支障はありませんでした。北海道や福岡に限らずですが、地方には手つかずの課題が沢山残されています。起業家にとって、さまざまな事にチャレンジできる環境だと思います。

卒業してもお別れじゃない 支援手厚く

― Onlab HOKKAIDOの支援はどんなところに魅力がありますか?

高野:
プログラムが終わってさよならなのではなく、卒業後も手厚くサポートしてもらえるところですね。今年、ハンターと飲食店がジビエを直取引する流通プラットフォームをローンチしたのですが、事業内容の壁打ちやユーザーインタビューの質問項目などアドバイスをもらいました。スタートアップにとっての正念場は、プログラムを卒業して独り立ちした時にやってきます。知り合いの起業家にも話せない、会社の外部にも漏らせない深い悩みにぶつかります。そんな時、問題を包み隠さず相談できるのは本当に心強いです。

高野代表手作りの「エゾシカのブラッドソーセージ」
高野代表手作りの「エゾシカのブラッドソーセージ」

千葉:
私は昨年10月に第3期プログラムを卒業後、メンバーを総入れ替えしました。プロダクト開発が足踏み状態となり、チーム内で話し合っても解決できなかったからです。相談できる人が周囲にいなくなってしまったのですが、Onlab HOKKAIDOが定例ミーティングを継続してくれました。スタートアップって沢山の課題に同時にぶつかるので、あれもこれもしなければならないと考え過ぎて動きが悪くなることがあります。そんな時、Onlabスタッフの皆さんと話すことで思考の整理が進み、何を一番に取り組むべきかが見えてきました。

― Onlabの参加特典やネットワーキングなどもフル活用されていますね。

千葉:
Onlab特典のWantedlyビジネスプランを活用して、エンジニアを採用できました。費用が少しでも抑えられるのは、本当にありがたくて。メンバー総入れ替えの危機を乗り越えて、プロダクト開発が加速できました。あと、Onlab HOKKAIDOのスポンサー企業様の協力で、北海道内の漁協様にyobimori導入を検討してもらったり、漁師さんに直接ヒアリングをさせていただいたり、こちらも大変助かっています。

高野:
私はOnlab特典で弁護士相談料の割引サービスを使わせていただきました。あと、Onlab HOKKAIDOの繋がりから、札幌市などが運営する「Startup City Sapporo」のピッチイベントに幾度も登壇させていただき、北海道を代表するスタートアップとして情報発信させていただきました。メディア露出や大企業との繋がりを広げられるのも、Onlab HOKKAIDOのメリットの一つですね。

福岡の漁師たちとディスカッションする千葉代表
福岡の漁師たちとディスカッションする千葉代表

集中できる環境こそ地方の良さ

― 地方で起業することに難しさは感じませんか?

千葉:
先程もお話しましたが、私は福岡で起業しました。地方は、首都圏と違って出会いの機会に恵まれなかったり、起業家仲間が少なかったりという面は確かにあります。その反面、今一番自分が取り組まなくてはならない課題に集中できる環境があり、これはとても重要だと思っています。また、会社のバーンレートがとても低く抑えられることもメリットですね。東京だったら、もう自分の会社がなかったかもと思いますし。あと、新型コロナウイルスの影響でオンラインでのやり取りが増えたため、地方起業のデメリットは解消されたようにも思います。

高野:
近くに起業家仲間がいないのは寂しいところもありますが、札幌に出向けばOnlab HOKKAIDOが入居するコワーキングスペース「SAPPORO Incubation Hub DRIVE」に道内外の起業家が沢山集まってきます。コミュニティも活発ですよ。また、北海道内の起業家支援プログラムはOnlab HOKKAIDO以外にも増えているので、スタートアップは今後も増えていきそうです。

「スタートアップの基礎」がここにある

― 最後に、第4期への応募を検討しているスタートアップの皆さまへメッセージを。

千葉:
リーンスタートアップなどの本で学んでも、実際に起業して実地に立てば、セオリーが本当に正しいか分からなくなる時があるんです。Onlab HOKKAIDOでは、セオリーを実践に移すところで、道を外れないようフォローしてくれます。個人的には、右も左も分からないシード初期の人にオススメです。起業の基礎を教えてくれる場所だと思います。

高野:
起業アイデアがあるなら、たとえブラッシュアップできていなくても、是非応募されてみてください。私自身がそうだったのですが、磨かれていないアイデアは、プログラム期間にいくらでもピボットできます。ぜひチャレンジしてみてください!

Onlab HOKKAIDOスタッフ紹介

Onlab HOKKAIDO 豊田 睦雄
Onlab HOKKAIDO 豊田 睦雄

< プロフィール >
Onlab HOKKAIDO 豊田 睦雄

事業戦略や計画を練るのが好きで、小樽商科大学大学院でMBAを取得しました。私自身もスタートアップで働いた経験があります。起業初期はさまざまな壁に当たるかと思います。気合いや気持ちで乗り越えようとすると辛くなりますので、「こうなったらこうする」というように予めルール化・仕組み化したり、それを習慣化することが乗り越えるコツだとお伝えしています。スタートアップの皆さまに伴走させていただきながら、事業成長のお手伝いができればと思っています。まずはどんなことでも構いませんので、お気軽にご相談いただけたら嬉しいです。ご応募お待ちしてます!