2019年08月16日
バイオテク起業家にとって、事業・経営・資本など包括的な支援を得られる機会はまだ少ないのが現状。
そんな中、起業家支援プログラム「Onlab Bio」の第1期生として参加し、DemoDayで最優秀賞を獲得したユナイテッド・イミュニティ株式会社のCEO 原田さんに、Onlab Bioでの経験をお伺いしました!
(聞き手:Onlab Bio 事務局 橋本)
< プロフィール >
ユナイテッド・イミュニティ株式会社 代表取締役CEO 原田 直純
ナノテクノロジー応用の複合がん免疫療法で難治性がん(Cold tumor)の克服に挑む。
腫瘍関連マクロファージの抗原提示機能を誘発する抗がんT細胞活性化技術「T-ignite」を開発。
橋本:
原田さんお久しぶりです!といっても先月のピッチ大会以来、1ヶ月ぶりですね。今日はよろしくお願いします!
原田:
よろしくお願いします!前回は神戸で会いましたが、今日は東京ですね。インタビューのための準備って特に出来てませんが大丈夫ですかね?
橋本:
大丈夫です!Onlab Bioを振り返って、思ったことをざっくばらんにお答えいただければと思います。
原田:
了解です。では気軽な気持ちで。
Contents
橋本:
さっそくですが、Onlab Bioに応募したキッカケは何だったのでしょうか?
(※第1期は、応募期間 2018年5月末〜7月、プログラム期間 9月〜2019年1月で実施。)
原田:
ちょうど資金調達を考えていた頃で、Onlab Bioでのアクセラレーター出資が目に留まって、まずは応募してみたのがキッカケですね。その時に、アクセラレーターというものが世の中にあるということを初めて知った感じです(笑)ウェブサイトをよく読み込んでみて、こういう支援プログラムがあるんだなと知りました。
橋本:
そうだったんですね!原田さんは元々アカデミアでの研究もされていましたが、略歴と起業のキッカケを教えていただけますか?
原田:
私は大学卒業後23年来がん創薬の研究者で、製薬企業やベンチャー、起業直前は大学で働いていました。経営や管理業務はあまりタッチしていませんでしたが、ベンチャー3社にのべ11年いた時に、事業開発にも個人的にはとても興味があったので、製品導出についての議論や契約交渉などには技術担当として自発的に参加していました。
起業したのは2017年11月ですが、今がベンチャー化する時だなという”穏やかな覚悟”をしたのはその年の春でしたね。起業のもとになったのは私が三重大学で研究していた技術ですが、その臨床試験に取り組み始めたのが同じ年の4月でした。当初はAMEDなど国の助成金を活用して事業化しやすいところまで進め、その後、製薬企業にライセンスアウトしようと考えていました。チームは、大学の中でも事業化や国内外含めて企業との仕事に慣れている教授たちで構成されていて、臨床試験の計画や製薬企業との交渉などを進めていました。ですが話を進めていくうちに、技術や開発している「T-ignite」自体が目新しいこともあり、大手企業と組んで事業化するよりも自分たちでベンチャーをつくって事業化したほうがいいんじゃないかという方向になりました。
橋本:
それで、CEOに適任なのは原田さんだ!となったのですね?
原田:
いえ、最初は私はCTOになり、CEOは商社出身の方など、ビジネスバックグラウンドの方の採用を考えていました。そしてこれは候補者の方というより、今からやろうとしている「Cold tumor」に対する複合がん免疫療法”という分野の新しさ・特性の観点からなのですが、既にある程度技術に理解のある人が創業CEOをやるのがいいだろうとなって、私がCEOを務めることになりました。
橋本:
2017年11月に会社を立ち上げて、Onlab Bio 第1期に参加されたのは約1年後の2018年9月からでした。一言でいうと、Onlab Bioは原田さんにとってどんな経験でしたか?
原田:
「高校の部活」みたいだった、ってプログラム後のパーティーで言いましたっけね。
というのも、ビジネスに必要なことを実地で鍛えてもらったのがOnlab Bioでした。プログラムは大変だったのですが、その苦しい時期を越えて基礎体力がつきましたし、海外の投資家と話すときも自信を持って接することが出来るし、彼らの言うことが理解できるようになってきました。一人前に、というか、舞台に立てるくらいにしてもらえたなと思っています。
Onlab Bioに参加して最も良かったことは、ちゃんと批判してもらえたこと。それは事務局との定例やオフィスアワー、パートナー企業との1対1でのメンタリングなどで、何度も密に議論できたからこそだと思います。
当時までは「技術オリエンテッド」の考え方をしていたんですね。自分たちは良いものを作ったのだから、社会に受け入れられるに違いない、と。でもOnlab Bioを通じて、「市場オリエンテッド」というか、まず市場にどんなペインがあるかを知って、そこから逆算してそのペインに適したソリューションを提供できるのならば、研究した技術を使って製品を開発するのが良いというのをちゃんと学ばせてもらったのが一番大きいですね。
この部分を一番教えてもらえたのは、Onlab Bio事務局からでした。ペインという言い方もこのプログラムで勉強したんですけどね(笑)
橋本:
たしかに、「あったら良いな」のニーズじゃなくて、「無くてはならない」のペインが大切です、って繰り返しお伝えしていたように思います(笑)
原田:
「市場から逆算して考える」というのが理解できると、(協業候補の企業や投資家など)初めて会う相手にどうやって説明すれば伝わる・説得力をもたせられるかというのが分かるんですよね。技術者サイドから話し始めると、科学的にどういった歴史があってなどどうしても前置きが長くなってしまうものですから。
橋本:
パートナー企業には多数の製薬企業がいらっしゃいましたが、どのような議論やコミュニケーションをしていましたか?
原田:
パートナー企業とは、製薬業界の言語での会話が多かったですね。薬事的・技術的にどうやって開発するのが早いのか、どういったところに問題が潜んでいるとか。
当社の技術は併用療法を前提としているのですが、複数のパートナー企業さんとお話する中で、そもそも併用療法に前向きでないというご意見もいただきましたし、世界の主流が併用療法だから良いと思うがこういう技術的・薬事的な難しさがあるから気をつけてくださいねというご意見もいただきました。ポジティブ/ネガティブにかかわらず、実用的なご意見は積極的に取り入れるようにしていましたし、時には厳しいご意見もいただきましたが、その方が助かりますよね。自分の計画が甘かった部分を指摘してもらったり、逆に薬事的にもっと攻めても良いんじゃないかと言う方もいらっしゃいましたし。
橋本:
パートナー企業各社からのメンターの皆さんは、自社と連携できるか否かという視点だけではなく、純粋に参加ベンチャーの技術・事業を成長させるにはどうしたら良いかという視点を強く持ってメンタリングに臨んでいらっしゃいました。その結果、率直な意見をいただいたのだと考えています。
一方、もっとこういう風にパートナー企業とコミュニケーションすれば良かったという点はありますか?
原田:
アクセラレーターというベンチャー支援の場なので、当社の場合はアライアンスの打診をするというよりは、「こういう製品をこんなプランで開発しようとしているが、御社だったらどうやって開発を進めますか?」という聞き方をするのが良いなと思いましたし、プログラムの早い段階でその聞き方をしていくことにしました。
パートナーに課題を提示するような聞き方で、大手企業のノウハウとか技術を引き出す形でメンタリングの機会を使っていきました。大手企業のプロの目からみたらプランB、プランCはどういうのがあるか、など引き出すのが良いですね。
Onlab Bio 第1期終了後も、パートナー企業のメンターの方々とは定期的にコミュニケーションしています。
橋本:
プログラム応募や参加時のご自身に、いま伝えるとしたらどんな言葉をかけますか?
原田:
よく頑張ったなということですかね(笑)
最近、知り合いの大学の先生などで起業した/起業したいという方々からなかなか事業の話が進まんという話を聞くと、製薬企業のニーズ・マーケットのペイン・投資家の見ているところとかあまり分かっていなくて、昔の自分を見ているみたいだなと思って。
慣れている人ならアクセラレーターに迷わず応募するんでしょうけど、大学にいる人だと、こういったプログラムに参加することで何か義務が生じてしまうのではないかと怖がって応募しない人もいると思うんですよね。でも私は割とそういうところに躊躇せず応募する癖があるので、飛び込んでみてよかったなと思います。
Onlab Bioに参加したから、新しい投資家にも出会えて卒業後の資金調達にも成功しましたので。
私は起業してから8ヶ月も経ってから応募しましたが、起業する前からアクセラレーターの存在を知っていて、準備や応募をしておけばよかったなと思いますね。日本にはまだこういったプログラムは少ないですし、大学の先生が知っているかというと絶対に知らないでしょうから、大学の産学連携や知財部門の方にプログラムのことを知ってもらっておいて、起業希望の先生が出てきたときにはすぐアクセス出来るようにしておく。
日本として、社会にそういう仕組みがもっと浸透したら良いなと思いますね。そうすれば若い研究者の方も臆せずに挑戦できますしね。
橋本:
私たちも大学発ベンチャーなど、バイオテク・ヘルスケアの起業家が生まれやすく事業として成長しやすい環境をつくるために、一丸となって支援エコシステム形成に取り組んでいきます。研究シーズの事業化を目指す皆さんには、ぜひOnlab Bioを活用していただければ嬉しいです。
原田さん、本日はありがとうございました!
そしてさらなる事業推進に向けて、これからもよろしくお願いします!
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