News 日本をはじめとするアジア市場は次のシリコンバレーとなり得るか

世界を目指す起業家育成プログラムを運営するOpen Network Labは2012年11月14日(水)にOpen Network Space代官山にて、500 StartupsメンターBenjamin Joffe氏を招き「日本をはじめとするアジア市場は次のシリコンバレーになり得るか」をテーマにディスカッションを行いました。

Benjamin氏はフランス生まれ、現在はアジア各国にてスタートアップのメンターを行っています。Plus Eight Starデジタル戦略コンサルティング会社を設立し、テクノロジーの分野で成功しているアジアにおけるビジネスモデルを、海外に進出させるためのコンサルティングを行ってきました。また、500 Startups (Mountain View)、 Yetizen (San Francisco)、Founder Institute (Global)、JFDI (Singapore)、GammaRebels (Poland) 、Chinaccelerator (China)といった各国のシードアクセラレーターにてメンターを行っています。

 

アジアは世界からみるとまだまだ閉鎖的な空間で、大きな上場が発生しない限り海外のニュースとして取り上げられることは少ないのが現状とのこと。Benjamin氏はその中でも様々なカンファレンス、イベントにてアジアについての情報の発信する活動を行っています。投資家としての活動は、5年前からで、日本ではmygengo,TokyoOtakuModeなどに投資をしています。

500 Startupsメンターが語る
『日本をはじめとするアジア市場は次のシリコンバレーになり得るか』

〜起業家・投資家として活躍するBenjamin Joffe氏によるアジアとシリコンバレーの市場比較分析〜

スタートアップは、ローカルな環境で生まれて育って成長する、環境に影響されやすい”エコシステム(生態系)”だとBenjamin氏は捉えていますスタートアップと出会う中で学んだことは、”スタートアップ同士が競争することはあまりなく、市場を獲得するためにお互い情報共有、助けあうことを大切にしているということだと言います。

日本経済新聞にて、2030年までにアジアが次のシリコンバレーにれるという記事があり、アジア各国にてどこが次のシリコンバレーになるのかという議論がされています。
シリコンバレーは元々はシリコンを使ったチップの会社で埋め尽くされていましたが、現在はソフトウェアの時代で、ネットスケイプCEO、Marc Andreesenも言うように、全ての業界はソフトウェアテクノロジーでイノベーションが起きています。例えば介護のマーケットプレイスにて自宅と介護者をマッチアップするサービスなど、多様な業界においてテクノロジーによるイノベーションが起こっています。

シリコンバレーから生まれる時価総額1,000億を超える企業

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シリコンバレーでは3ヶ月に1回の割合で時価総額1,000億を超えるソフトウェアテクノロジー企業が生まれています。アメリカの1,000億の規模の会社が生まれる頻度と日本を比べると、日本は劣っているのが現状です。日本のGDPはアメリカの半分のため、時価総額1,000億を超える企業が生まれる要因としてGDPのみが影響していると考えると、日本では6ヶ月に1回の割合で1,000億規模の会社が生まれるはずだがそうはなっていない状況です。このことからも、成功するソフトウェアテクノロジー企業を生み出し続けるシリコンバレーと同じ環境を作るためには、GDPだけではなく”他の要素”が必要だということがこのことが分かります。そこで、シリコンバレーと同じ環境を作り上げるためには、6つの構成要素が必要だと考えました。

シリコンバレーの6つの構成要素

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1. 市場 (Market)

アメリカのGDPは日本の2倍で、スタートアップが世界に進出する場合アメリカ市場を狙う場合が殆どです。しかしながら日本の市場はまだまだ大きく、日本のスタートアップ企業は、よくも悪くも日本の市場だけにとどまり安心・十分だと感じてしまうことが多いという現状があります。

2. 資金 (Capital)

資金調達の主な方法は下記4通りです。

1.エンジェル投資
2.シード資金
3.ベンチャーキャピタル
4.M&A IPO

エンジェル投資家は日本ではまだ少ないのが現状です。Seed Stageでの出資はOnlabをはじめ、MOVIDA、GLOBAL BRAINS、DOCOMOなどの影響からもこの3年間の間で日本で活発になっていて環境が向上しています。ベンチャーキャピタルについては、日本ではまだそれほど大きくなっていないが現在成長中であるとBenjamin氏は感じています。日本でのM&A IPOは特にゲームの分野で増えています。

3. 人 (People)

1.起業家の全体数
2.雇用コスト
3.英語力
4.知り合うことができるメンター・起業家の数

起業を目指す人の全体数、雇用コスト、言語力、初めて起業する人を指導・支援するメンターや、知り合う起業家も重要。また英語の語学力は市場を狙うためだけではなく、世界中にある情報をとりにために必要な能力です。例えばプログラミングを学ぶことや世界中の起業家の成功や失敗から学ぶためには、英語を習得していることでより早く情報にたどり着くことができます。

4. 起業家文化 (Entr. Culture)

1. 成功体験者のロールモデル
2. 失敗を受け入れる文化
3. 失敗から学ぶメンタリティ
4. 自己アピール力

起業家文化については、日本では尊敬ができる成功体験者のロールモデルが足りていないとBenjamin氏は語ります。実際の成功者の人数も少ないこともありますが、日本ではライブドア事件の影響からかメディア自体が成功者を取り上げることを控えめにしているように感じているとのこと。また日本はリスクを避ける文化のため、失敗からたくさんの学びを得ることを必要とする起業家には良い文化ではないのが現状です。人は失敗からたくさんの学びを得るため、失敗ができる環境を整え小さな失敗をたくさんするメンタルを持つことが大切です。また自分をよく見せることに長けているアメリカ人に比べ、日本人には自己アピールをする力がまだまだ足りていないと言います。

5. インフラ (Infrastructure)

1. テクノロジー
2. ペイメント・物流
3. コミュニティ・イベント
4. リーガル・アカウンティングのサポート

インフラ面では、テクノロジー、ペイメント・物流、コミュニティ・イベント、リーガル・アカウンティングのサポート面のどの面においても日本では整ってきています。

6. 法律 (Regulations)

1. 移民法
2. 労働法
3. リーガルコスト

移民法によってアメリカでは様々な国から、その影響から多様な文化によるコラボレーションが可能になっています。日本は移民法という観点からも様々な文化をまじ合わせることが環境的に難しいのが現状です。労働法については、スタートアップは人を雇用する環境が厳しいため、労働法が厳しい国ではスタートアップは育ちづらい状況です。リーガルコストとしては、デラウェア州では2,000ドルで会社の登記が可能でリーガルフィーが5,000ドルしかかかりません。それに比べ日本で登記をする場合、リーガルにおいて資料作成など様々なプロセスが発生するためデラウェア州と比べてコストが高くなってしまいます。

シリコンバレーを形成する6つの構成要素についての比較

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文化

Benjamin氏は、日本で最も不足している要素は”起業家文化”だと語ります。日本をシリコンバレーと同じようなスタートアップに適した環境へ変えるためにいちばん必要なものは文化を変えること。文化の面が整うと起業家やそれをとりまくメンターなどの人口が増え、その影響で資金が集まりと良い連鎖が生まれると言います。

文化とは自分自身を形成するためのOSのようなもので、今の文化は果たして自分が果たしたい目的に合っているかどうかを見極めることが必要です。文化は人が生きるためにあるもので、同じ文化の中で育った人間はどこか似通っているものです。文化のデフォルトは生まれた国、家族、学校、仕事、親しい友達があげられます。OSのアップデートをする方法は、出会う人達や、旅をした時に得る学びや経験など。

文化の6つの構成要素

1. お金
2. 家族
3. 社会貢献
4. アート・音楽面での文化
5. スピリチャル・宗教
6. 外観

USAは移民が作った国のため、強調される部分がユニークで、アメリカの文化はでは”お金”を強調したスコアリングになっている。重要なのは、意識して何を強調しているかを見ること。人は環境に影響されやすいため、起業においてはどんな文化が最適かを考えることが重要。アメリカに起業家が集まる理由は、文化の中でも”お金”を重要視している国だから。その中でも日本はどういうスコアリングになっているか考えてほしい。

文化の強調面が合わさると同じバックグラウンドを共有できる。フランス人とアメリカ人が上手く行かない理由は文化で強調されている部分が異なるため。その点、中国とアメリカは文化にて”お金”という部分を強調していることから上手くいくことができる。同じようにフランスと日本でも上手くいく理由は強調されている部分が同じだから。

Tokyo Otaku Modeに出資をおこなっており、Pintarestのおたく版のようなサービス。Tokyo Otaku Modeが面白い部分は、創業者は英語を話すことができないのにも関わらず、Tokyo Otaku Modeのユーザー99%が日本以外にいるということ。起業家として重要なことは、自分がみつけた問題点の解決方法をなんとか探すための根性と力を持っていること。Tokyo Otaku Modeの創業者は、英語が喋れなくても、500のDaveを説得し、家、車と生活に必要なものを揃え、ボランティアの通約者を日本から連れてきた。

日本がシリコンバレーになるためにするべき3つのこと。

1. 起業家をプロモートする、起業家文化を促進する。
2. 常にピッチすること、思いを人に伝えること。
3. お互い助け合うこと。

シリコンバレーはお互いが助け合い、情報共有、経験者が未経験者を助けたりという文化があるが、アジアではお互い助け合う分かがみえない。シリコンバレーは与えてから何かを得るという文化があり、競合いがいには、助けるとかえってくるという文化がある。

Q&A 

Q.クリエイティビティはどうやって作りだすことができるのか?

A.

クリエイティビティを生み出すためには、同じ業界の話をせず別の業界、考えを探しにいくことが重要。そうするとクリエイティビティが生まれる。また自分のクリエイティブな考えが浮かぶプロセスを理解することが大切。ほとんどの人がオフィスで思いついているわけではなく、車を運転したりと自然にできる動作をしている時に思いつくことが多い。車の運転などは一つのものにフォーカスをしていないけれど、無意識の中で難しい動きをしていることが多く、その際にアイディアを思いつきやすい。シャワーを浴びるときには、無意識の中にていろんな作業をしている。いつも使用している脳の部分の別の場所をつかっているとき。

Q. いろんな国に滞在している、目的は?

A. コンサルタント会社の社員として日本にきた。韓国起業家精神が強く、文化に魅力を感じたから。日本はフランスとは違う体験、好奇心。日本、韓国人の中国に対する話を聞くうちに中国に興味。中国にて会社をつくって、USアメリカアジアを理解していないことからチャンス!シンガポールは彼女ができたから。マレーシアで会社を作ろうと思ったが、マネタイズがはっきりしていないものは作らない方がよいということでつくらなかった。


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