2019年01月18日
Open Network Lab (以下、Onlab)は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、Seed Accelerator Programを2010年4月にスタートしました。
活動資金やオフィススペースなどの設備を提供すると共に、事業のブラッシュアップを目的としたコンテンツやスペシャリストによるメンタリングを通じて、これまで90社以上のスタートアップを支援・育成してきました。
今回は、スタートアップを始めようとしている方、あるいは最初のアイデアからピボットを検討中のスタートアップ向けに、スタートアップが取り組むべきアイデアの見つけ方について説明します。
Contents
スタートアップが取り組むべきアイデアについて、多くの記事で紹介されております。
例えば、アメリカを代表するベンチャーキャピタルであるSequoia Capitalでは以下のポイントを満たすアイデアを選ぶべきと紹介されています。
60ヶ国以上でシード投資をしている500 Startupsでは、先日Onlabのイベントにお越しいただいた際に以下ポイントを説明できるアイデアであることを重要視していると話されていました。
また、Y Combinator創設者であるPaul Grahamは最高のアイデアは三つの共通項を持つと述べています。
Onlabでは、8年間で90社以上のスタートアップを支援してきた経験から、以下の7つの質問に端的に答えられるアイデアが、“あなたの”スタートアップにとって良いアイデアであると考えています。
さて、それでは上記のポイントを満たすようなアイデアを見つけるにはどうしたらよいでしょうか?
市場から考える方法(例:国内では外国人労働者がますます増えていく)、課題から考える方法(例:薬局では多くの不良在庫が発生している)、解決策から考えていく方法(例:自社の技術を横展開していく、海外で〇〇というサービスが流行っている)など様々なアプローチがあるかと思いますが、Onlabの過去の参加者をみていると、自身の経験の中から解決すべき課題を見つけ、その課題を解決するプロダクトを開発しているチームが多い印象があります。
過去のOnlab参加者の様子を踏まえ、具体的にどのように行動すべきかTipsを紹介したいと思います。
この記事を読まれている方は、企業に勤めながらアイデアを探している方や、スタートアップでピボットしアイデアを探している方が多いかと思いますが、いずれにせよ皆さん忙しく、目の前の業務を優先しついつい後回しにしてしまうこともあるかと思います。
そこで、まずはアイデアを考えるルールを設けることをオススメします。著名な起業家の中にもこのようなルールを設けていた方々がおります。
ソフトバンク孫正義氏が大学生の頃に「1日1個発明する」と課していたことや、サイバーエージェント藤田晋氏が著書の中で暇な時でも週110時間働くルールを決め既存業務の余った時間に新規事業を考えていたことはよく知られているかと思います。Onlab10期生のSmartHR宮田昇始氏もインタビューで3日に一回仮説検証を繰り返すサイクルを設定したことについて述べています。
ルールを設けたらその中で粛々とアイデアを出し検証していくステップを繰り返すことになります。
アイデアの着眼点として、まずは自身の日々の生活や、仕事の経験、友人と話す中で見えてきたギャップなどを注意深く観察することをオススメしています。
その中で、非合理的に時間やお金をかけ行動していることがないかに注目し、解決する必要がある課題を見つけることを意識してみてください。
例えば、Dropbox創業者のDrew HoustonはUSBスティックを忘れてしまった経験から気付きを得ています。
また、Onlab4期生のFRIL(現ラクマ)の堀井翔太氏はインタビューで、mixiのコミュニティやTwitter上で服の売り買いをしていた行動から、日本初のフリマアプリを着想したことを述べています。
②のステップで気付いた解決すべき課題を、上記7つの項目、あるいはリーンキャンバス等のフレームワークへ書き出してみてください。
この際、仮で構わないので具体的に端的に書くよう意識してください。曖昧な記載では、チームでの認識合わせやこの後の仮説検証のステップで効率が悪くなります。
言語化したアイデアが良いかどうかは、以下の観点から見返してみることをオススメします。
1. 具体的なユーザーの名前が答えられるか?
自身のアイデアが妄想ではないか確認してください。
2. 課題はお金を払ってでも解決したい課題だろうか?
あったら良いや、きっと誰かが使うではなく、深く明確な課題が解決すべき課題です。
3. ターゲットは既存の代替手段を用い現在行動を起こしているか?
競合/代替品が何もないとすれば、ニーズやマーケットがない可能性が高いです。
4. ユーザーインタビューできる人が見つかるか?
困っている人が身の周りで見つけられなければ、それはあなたがやる理由がないのかもしれません。
その中でも自身がエキサイティングだと感じるアイデア(前述のDrew Houstonは「犬にとってのテニスボール」のようなものと例えています)については、実現に向けリスクの大きいものから順に検証していきましょう。
実際にそのような課題を抱えている人がいるのか、プロダクトを作り切る前に検証することで、無駄な時間やコストを最小化し、またより効果的な解決策を考え出すことができるようになります。
まずは仮説検証の最初のステップとなる①顧客×課題Fitを目指しユーザーインタビューを行ってみてください。ユーザーインタビューの具体的な方法についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
前述のSmartHR宮田氏のインタビュー記事の中に、SmartHRは10回目のアイデアであったことが記載されています。
自身のスタートアップとして取り組むアイデアが決まらない間は、前進している感覚も得づらく焦りを感じるかと思います。しかし、ここで解決すべき本質的な課題を見つけられればその後の成長スピードはむしろ早くなります。反対に解決すべきでない課題に取り組むと成長出来ず、結果的にピボットすることに陥ります。諦めずにステップを繰り返してみてください。
また、資金調達を考えているスタートアップの皆さんは、自身が腑に落ちたアイデアが客観的にはどう見えるのか?壁打ちをしにシードVCやアクセラレーターへ相談に行くこともオススメです。
アイデアを見つけるステップを書いているときに、 “博士号を取るとはどういうことか?”を図示したこのブログを思い出しました。個人的にはスタートアップのアイデアを見つける活動にも共通したことが言えると感じております。探求し続け、賛成する人のほとんどいない自分だけが知っている大切な真実(Peter Theil)を掴むことが大きな価値の源泉になり得るのだと思います。
リソースの潤沢な大企業に対して、スピード感を持ちオフィスを飛び出し徹底的に顧客の課題に寄り添えることがスタートアップの強みなので、スタートアップを始めようとしている方は、是非机上の空論ではなく実際のユーザーの課題をもとに事業を検討してみましょう。