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生成AI活用の現在地。スタートアップの成長速度を格段に引き上げる最新の導入事例

生成AI活用の現在地。スタートアップの成長速度を格段に引き上げる最新の導入事例

デジタルガレージでは日本初のスタートアップ向けアクセラレータープログラム「Open Network Lab Seed Accelerator(以下、Onlab)」を2010年4月より開始し、gifteePOPERといった上場や、資金調達を経て成長し続けるSmartHRのようなスタートアップを輩出してきました。

スタートアップの皆さんはどこまで生成AI技術を活用していますか?さまざまな生成AIが誕生している中、生成AIの最前線で事業を展開している株式会社GitHouse(ギットハウス)の助飛羅(すけひら)氏を講師にお招きし、スタートアップのボトルネックを解決していくための勉強会セミナー「Onlab Campus」の一貫として、生成AIのユースケースやプロンプトエンジニアリングといった事業成長を加速させるための生成AI活用術についてレクチャーしていただきました。

< プロフィール >
株式会社GitHouse 代表取締役社長 助飛羅 知是(すけひら ともよし)

SI、ECコンサルの職歴を経て大手外資ベンダーにてCRMの提案〜導入、活用支援を含む業務コンサルティングに従事。キャリアの中で、お客様の利益向上/業務工数削減へのさらなる貢献を希望し、GitHouseを創業。

*本記事はGitHouse社が提供する生成AI「VectorFlux for Writing(ベクターフラックス)」でたたき台を生成し、Onlabが編集を行っています。

生成AIの現状と最新技術の動向

― 助飛羅さん、今回はよろしくお願いします。まずはGitHouse社について教えてください。

GitHouseは生成AI、CRM、データスクレイピングの3つの柱で、企業の利益向上/業務工数・コスト削減を支援しています。特に生成AIソリューション「VectorFlux」は、非エンジニアでもノーコードで生成AIをカスタマイズして、手軽に独自生成AIが活用できるサービスです。また、VectorFluxを基盤エンジンとし、既存生成AIの能力をさらに進化させた、翻訳・執筆などのコンテンツ生成を自動化するサービスも提供しています。

OnlabTips_GitHouse

― 現在の生成AIの技術レベルはどのようなものですか?

現時点での生成AIの技術は、アウトプットの質が非常に高い一方で、まだ改善の余地があるといえます。人間が少し考えれば誰しもが判断できるようなアウトプットを、生成AIは集合知として導き出す傾向にあります。ですから、生成されたものを直接顧客に提示するのは避けた方が良いと考えています。現状の生成AIの能力は「出来の良い新卒」といったキーワードで、よくお客様にご紹介しております。

特に苦手とする部分は、数字の計算です。アップデートにより質は改善されているものの、まだ計算精度が低いため、 データ解析や数値ベースのタスクは特に注意が必要です。また、複雑な論理処理も苦手としているため、プロンプト(生成AIへの指示や質問の仕方)によっては、論理的な一貫性に問題が見られる場合があり、その点に注意が求められます。生成AIが出した内容を全て正しいと判断せず、適切に判断する姿勢が大切です。

生成AIの最大の課題は、まだ人間と同等の精度でのアウトプットを完全に実現できていない点です。ChatGPT、Copilot、Gemini、Claudeといった各AIツールそれぞれに特徴や得意分野はありますが、生成された、そのままの文章や画像、動画は、機械的な生成AI“らしさ”を感じられることが多々あります。特に日本語は文法構造上、英語や中国語に比べて、生成AIの“らしさ”が目立ちやすいとも言われています。

SEOの観点でも、Googleの検索アルゴリズムではAIが生成したと判断されたコンテンツが上位表示されにくくなっているなどの事情からも、GitHouseではあくまで生成AIを「たたき台生成」で使うべきであると、2024年9月時点では判断しています。

― 生成AIはどのような分野で活用されていますか?

業種を問わず、スタートアップから中小企業、大企業まで事業開発やプロダクトへの導入、社内ナレッジマネジメントなど多岐に渡ります。企業やプロダクトの数だけそれぞれの使い方があると言えるほど、幅広い分野で活用が進んでいます。

私たちGitHouseが注力しているのは、生成AIを用いた『たたき台生成』です。生成AIに社内ナレッジや専門知識を学習させることで、業務効率化にとどまらず、従業員育成や質の高いサービス提供の実現も目指しています。

具体的には、バックオフィス業務における書類作成支援や法務アドバイス、コンテンツ生成では記事のたたき台となる文章の自動生成、翻訳、多言語でのSNS配信。営業活動においては、見込み顧客に最適化された営業文書の生成、競合調査や業界データの収集、カスタマーサポートの回答生成。プログラム開発では自動コード生成を活用し、コーディングやデバッグを効率化するなど、あらゆる企業活動のDXを支援します。

― 生成AIを利用する際に気をつける点はありますか?

最も留意すべき点は、生成AIのアウトプットを鵜呑みにせず、必ず人間が確認し修正を加えることです。

生成AIは非常に有用なツールですが、特に専門的な知識が必要な領域では、ユーザー自身の知識や経験が生成AIの性能を引き出す鍵となります 。また、生成AIが過程を飛ばし即結論を引き出せることから、社会人経験の浅い方や学生などが結論を出すために多用してしまうと、本来経験によって積まれていく思考力などが育ちにくくなる弊害や、機会損失もすでに出始めています。

― 生成AIにおける個人情報の取り扱いについて教えてください。

個人情報を含む機密情報の取り扱いについて、多くのご質問をいただきます。生成AIを導入する際には、安全な環境が整っていない限り、機密性の高いデータの入力は避けることが望ましいです。また、入力したデータがAIモデルのトレーニングに使用されるかどうかを確認することも大切です。さらに、生成AIで個人情報や機密情報を扱う場合には、第三者による評価や認証を受けた生成AIプラットフォームやサービスを選定することが推奨されます。

GitHouseが提供するサービスでは、データのプライバシーとセキュリティを確保するためにMicrosoft Azure OpenAI Serviceを活用したサービス設計を行っています。そのため、安全にご利用いただけます。

生成AIの活用事例紹介

GitHouse社が支援した生成AI導入事例の中から、お客様の声として実際に、課題解決や業務効率化の効果があった活用例をご紹介します。リソースが限られたスタートアップや小規模組織でも、生成AIを効果的に活用することで事業の持続的な成長が可能です。これからご紹介する事例が、皆さんの成長戦略の参考になれば幸いです。

1. カスタマーサポート×生成AI

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FAQやサポートマニュアルを学習させることで、回答テキストが自動生成されるため、担当者が一から考える必要がなくなります。これにより、誤った情報の提供を防ぐだけでなく、対応スピードの向上や、均一化された質の高い回答の提供が可能になります。その結果、顧客満足度も向上しています。

2.バックオフィス×生成AI

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バックオフィスの業務負荷軽減は企業にとって大きなテーマです。業務が煩雑化する中で、効率的なプロセスや自動化の導入が求められています。

法務アドバイス
業界や業種に限らず、法令や規制への対応が求められています。特に建築業界では、案件ごとの法務確認や届出書類の作成が非常に煩雑です。そこで、生成AIに法令データを取り込みリーガルレビューに特化させたBotを構築しました。

社内規定の多言語対応
社内規定や法令を生成AIに学習させ、従業員に向けて多言語で問い合わせ可能な形に構築することで、少人数のバックオフィス体制でもコミュニケーションコストが削減されました。

3.人材採用プロセス

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応募者の履歴書を一つずつ確認するのは非常に手間がかかります。そこで、生成AIを活用して履歴書や職務経歴書の内容から必要なスキルや経験を抽出し、適合度の高い候補者をピックアップする仕組みを構築しました。加えて経験の不足点やリスクを洗い出す機能も導入しました。

これにより、初期段階の候補者の絞り込みが大幅に効率化され、採用担当者は短時間で質の高い判断を行うことができるようになります。また、生成AIは複数の履歴書を比較する際に統一された基準で評価するため、採用担当者それぞれの直感や主観による判断ミスを減らし、より公正で一貫性のある採用活動を実現します。

4.営業文面の生成と自動送信

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スタートアップのように新規営業の経験が浅い企業にとって、「質」を担保しつつ「量」を増やし、工数を効率化する仕組みは、質の高い営業アプローチを実現しビジネス機会の拡大に貢献します。

営業文面生成の仕組みは、保有する営業リストを生成AIに与え各企業の情報を調査します。ターゲット企業に最適化された商品サービス内容や提供価値を考慮した営業文面を自動生成します。担当者は、カスタマイズされた生成文面をたたき台としてメールを作成・送信するため、迅速な営業活動が可能になります。

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見込み顧客に最適化された営業文書を自動生成し営業プロセスを効率化する「VectorFlux for Sales

5.記事生成

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記事生成のプロセスは、まず生成AIに与えた記事のテーマや関連データに基づいて、自動的に文章を組み立てます。膨大な情報を処理できるため、一から手作業で文章を書くよりも短時間で下書き記事を作成することが可能です。SNSの投稿用の下書きも行うことができます。メリットとして、ヒューマンエラーが少なく、一貫した品質を保ちやすい点が挙げられます。

特定のトピックについてリサーチする際も、データを集め、構造化された文章を作成するので、コンテンツ制作の時間を大幅に短縮することが可能となります。

しかし、気をつける点でお伝えした通り、生成AIが作成した記事は、専門知識や業界特有の言い回しが不足していたり、生成AIが誤解している情報が含まれる場合もあるため、正確な情報を提供するためには人間の目による校閲が欠かせません。

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記事を自動生成し高品質で迅速なコンテンツ提供を可能にする「VectorFlux for Writing

― ありがとうございました。最後に、生成AIは今後どのように進化していくと考えられますか?

今後、生成AIはより高度な処理を行えるように進化し、回答の精度も劇的に向上していくと思います。したがって、将来的には「たたき台生成」だけではなく、深い専門知識が必要な情報についても完全なアウトプットが可能になるでしょう。しかし、その段階に生成AIが達するということは、同時に世の中に生成AIコンテンツがさらに溢れることを意味し、それに伴う影響についても注視する必要があります。

現時点の生成AIの得意分野や課題を把握しつつ、コンテンツ制作や日々の業務に活用していただきたいです。

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Onlabコミュニティ勉強会「Onlab Campus」では、スタートアップが抱えているお悩みを解決するイベントや勉強会を開催しています。

今回の生成AIのテーマでは、参加したHRや保育・育児、ヘルスケアなどの幅広い業種のスタートアップと活発な質疑応答が行われました。「個人情報のデータ取扱に関する対応策を知ることができた」「採用活動への応用が興味深かった」といった声が寄せられました。

今後もニーズの高い勉強会を通して、Onlabはスタートアップの支援を継続していきます。

(執筆・作成:株式会社GitHouse 生成AI 編集:Onlab事務局)

最新のイベント情報や記事、Onlabの各プログラム募集のお知らせ等をメールにてお送りいたします。