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ストックオプション(SO)は「導入」で終わらない。Boost Healthが挑む、社員の貢献を形にする継続的な文化づくり

ストックオプション(SO)は「導入」で終わらない。Boost Healthが挑む、社員の貢献を形にする継続的な文化づくり

2024年秋、Onlab 第26期生のBoost Health株式会社(以下「Boost Health」、読み「ブーストヘルス」)はストックオプション(SO)制度を導入しました。その設計は「退職後も行使可能」や「M&A時も行使可」といった、従来の枠にとらわれない柔軟な設計に取り組みました。あれから1年、同社は2回目のSO発行を実施し、制度を一過性の報酬ではなく継続的な文化として位置づけようとしています。本記事では、「ストックオプションを導入して終わり」ではなく、発行後1年で組織と人にどんな変化が生まれたのか、そしてファウンダーが制度を“経営の手触り”としてどう捉えているのか、代表の芳賀さんにお話を伺いました。

< プロフィール >
Boost Health株式会社 Founder & CEO 芳賀 彩花

2012年、東京大学文学部社会心理学専修課程卒業。 2017年、IESE Business School MBA卒業。 マッキンゼー&カンパニーにて戦略策定、 オペレーション改善、企業変革に約8年従事。経営コンサルタントとしての経験を経て「日本の働く人々をもっと心身ともに健康にしたい」という課題意識からBoost Healthを創業。

なぜ「退職後も行使可能なストックオプション」なのか? 社員に寄り添う柔軟なSO設計が変えた当事者意識

― 創業期の早期段階でSOを発行された目的と、設計にこだわった理由を教えてください。
Boost Health社がSO発行を目指した最大の目的は、社員の方々に当事者意識や同じレベルの経営目線を持ってもらい、共に成長を目指していくことです。弊社はAI+コーチングで社員と組織のパフォーマンス向上を実現するサービス(BOOST)を提供しているため、「自社の社員にも前向きにモチベーション高く働いてもらえる仕掛けを体現したい」という思いもありました。

SO発行当初、社員の反応は様々でした。米国スタートアップでの経験がある一人の従業員は、SOの知識がある一方で過去にSOが無価値になった経験から「本当に価値が出るのか半信半疑なところはあった」と話していましたが、アーリーステージにもかかわらずSO制度があることは「すごいと思った」と評価してくれましたね。特にM&Aや退職時も使えるという設計は「社員に寄り添った考え方だ」と受け止めてもらったので、長期的なコミットメントへのきっかけになったと感じています。

― 発行後1年を経て、社員の意識や行動にどのような変化がありましたか?
SO導入後の最大の成果は、社員の行動と視座の変化です。現在、正社員のメンバーは、経営陣と近い目線で事業に向き合い、それぞれが強いコミットメントを持って日々働いてくれています。あるメンバーは、自分の役割を超えて「組織全体のための課題感」や「役割を超えた貢献をしたい」という意識を持って業務に取り組めていると話しています。

一方で、現在のステージではIPOやM&Aの時期がまだ不確定なため、「今はまだSOは紙切れだ」という感覚があるのも事実です。この状態を「一緒に会社をつくっていこう」というモメンタムに変えていくには、今後の企業の成長に伴う、SOの価値の変化をしっかりコミュニケーションし続けて実感を持ってもらうことが大切だと考えています。

Boost Health株式会社 芳賀彩花氏

競争力を高めるストックオプション(SO)「毎年付与」が採用・定着にもたらした具体的な変化

― 今回の制度は、採用活動や人材の定着に具体的にどのような影響を与えていますか?
現状、SO発行後の新規社員採用は仕掛かり中ですが、採用活動においては、カジュアル面談などの際に候補者が事前に弊社を調べて制度に対して興味を持ってくださるため、今後の採用活動においてプラスの武器になると捉えています。一方で採用時の瞬間的な魅力よりも、入社後の定着とモチベーション維持における役割が大きいと考えています。

特に「毎年付与」を継続することのメッセージ性を重視しました。会社の状況によって付与されたりされなかったりすると、社員にとって「ラッキー/アンラッキー」になってしまい、メッセージ性が損なわれると考えました。コンスタントに毎年出すという一貫性が、社員の安心感とモチベーション維持につながっていると思います。

― 2回目の発行で直面した課題と、それでも発行に踏み切った理由を教えてください。
2回目の発行時、資金調達前でキャッシュに余裕がなく、時間もない中で、正直一瞬迷いがありました。それでも発行に踏み切ったのは、コンスタントに毎年出すというメッセージの一貫性を何よりも大事にしたかったからです。私の主観や気分で制度があったりなかったりする状態を避け、ルールを決めて毎年継続して運用し続けることが良いメッセージになると考えました。

― SOを継続的な制度にするために、最も大切にしていることはありますか?
最も大切なのは、ルールをシンプルに設計し、着実に実行することかなと思います。ルールを複雑化すると、次回以降の実行が難しくなり、社員の理解も追いつかなくなります。また、一貫しないことで、意図しない不公平感や不信感が生まれてしまうと本末転倒です。

弊社のSOは、専門家からも「作った中で一番シンプル」だと評価されていますが、これは実務上のコスト削減にも繋がっています。余計な調整や説明に時間を割かず、事業そのものに注力できる状態が望ましいと考えています。

【まとめ】スタートアップがストックオプション制度(SO)の導入で企業価値を高めるためのヒント

SOを制度で終わらせず、本当の意味で資産として経営や採用、組織づくりに機能させていくために、経営者が取り組むべき3つの軸を提言します。

  1. メッセージをシンプルに保つ
    SOは金銭と異なり実感しにくい報酬だからこそ、社員が理解しやすい形で、付与のロジックや価値を、できるだけ明快かつシンプルに整理して伝えることが重要です。
  2. 主観を入れない一貫性
    経営者の主観(気分や状況)で付与したり、安易に制度を変えたりしないこと。一貫した運用があるからこそ、メッセージの信頼性が保たれ、社員にとって長期的な安心感につながります。
  3. 制度設計は「シンプル」に、社員のコミュニケーションに時間をかける
    SOは事業成長のための手段であり、経営者が注力すべきは事業成長です。制度設計は専門家に相談しながら「シンプルさ」と「継続性」にこだわりましょう。

一方で、発行しただけでは「ありがたみ」は自動的に起きません。企業成長に伴うその価値の変化をしっかりコミュニケーションし続けることで、はじめて、本来の目的であった「企業へのロイヤリティ」や「事業へのコミット」の実感は生まれてきます。

Onlabでは、本SO設計支援をはじめ、資金提供や経験豊富なメンター陣による伴走支援を通じて、スタートアップの挑戦を全力でバックアップいたします。スタートアップが持続的な成長を実現し、組織としての競争力を高めていくために、採用競争力向上や事業推進に集中できる環境を提供します。

また、起業を検討している方や、事業成長の次のステップを模索しているスタートアップ経営者向けに、オンライン事業相談会(Open Office Hour)を実施しています。ぜひお気軽にご活用ください。

(執筆・編集:Onlab事務局)

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