Blog Facebook、Quoraのユーザー獲得チームが語る「つべこべ言わずにドアを開けろ!」

Open Network Labは、 7月26日(木) に東京・恵比寿にて、Facebookユーザー獲得チームに所属し、現在QuoraのUser GrowthチームにてProduct Managerを勤めるAndrew Johns氏をお招きしディスカッションイベントを開催しました。

 
 
今回のテーマは、Facebook、Quoraのユーザー獲得チームの秘密 ~ユーザー数を5億人へ、Facebookユーザー獲得チーム初期メンバーAndrew Johns氏来日講演~。初来日したAnderwから、自身のFacebook、Quora、更にはtwittterでのユーザー獲得チームでの経験から、日本ではまだ馴染みのない、「ユーザー獲得チーム」についてディスカッションを行いました。

Andrew Johns – Facebook、Quoraのユーザー獲得チームの秘密



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左からAndrew Johns氏、前田紘典氏

Andrew氏はこの7年間ユーザー獲得に特化したインターネットマーケティングを行ってきました。Facebookでは、ユーザー獲得チームに所属し、ユーザーを7500万人から5億人へ増やしたとのこと。その後Twitterに移籍し、Facebookでの経験をもとに「ユーザー獲得チーム」組織し、そして現職のQuoraに至ります。

「ユーザー獲得チーム」での仕事は、現状まだノウハウが確立されていない、これからの分野。現在、企業の99%が、「ユーザー獲得チーム」を保有していないけれども、その重要性によって、10年後には企業の50%が保有するようになるのではとAndrew氏は考えています。ユーザー獲得チームは、企業においてのファイナンスチームとよく似ていて、ファイナンスチームはキャッシュ・フローを管理するのに対し、ユーザー獲得チームはユーザーの出入りを管理するチーム。企業がユーザー獲得チームを持つことのメリットは、ユーザー数、ユーザーの傾向などの正しい理解から、資金調達やリクルート活動が容易になること。

超満員の会場

ユーザー獲得チームは下記3点にフォーカスをするチームです。

  • 1. ユーザー登録数を増やすこと
  • 2. 非アクティブユーザーをアクティブユーザーへ戻すこと
  • 3. アクティブユーザーを非アクティブユーザーにしない方法を考えること

ユーザー登録が増加するいちばんはじめのきっかけは、ローンチ後TechCrunchに掲載された時。この時には、たくさんのアーリーアダプターがサービスを試用するけれど、その8割~9割がすぐに非アクティブユーザーになってしまいます。メディアを使ってユーザーを獲得することは悪いことではないけれど、いかにプロダクト自体の拡散性をもってアクティブユーザーを増やすかが重要とのこと。そのためには、どうすればユーザー登録を得られるか、様々なテストを行って、ユーザー登録のコンバージョンレートを上げることが必要。「どこからいちばんのトラフィックがきているかを調べることと、またそのいちばん獲得している部分を何倍にも増やす方法を考えること。」ユーザー獲得チームが行うべき、非アクティブユーザーをアクティブユーザーへ復活させるためのいちばんの方法は、E-Mailの活用です。 QuoraはE-mailを上手く活用することで、30~40%という通常の3倍のクリックレートを達成したとのこと。

「ユーザー獲得チーム」は、企業において、様々な部署の上に乗っかっているイメージ。様々な部署とのやり取りをしながらユーザー獲得の最適化を行うチームで、個々の部署を動きを理解しながらも、ユーザー登録数、アクティブユーザー率を上げるため、様々な施策を行うチームです。

 

300人いたら300通りのデザインがあり、どうしても、トップページにてサービスの価値をアピールしたくなりがちです。Twitterの3年前のトップページは、コンサルファームに作成してもらったものでTwitterを利用している有名人が載っていたりと、Twitterを使うことの魅力をたくさん盛り込んだデザインになっていたけれども、訪れたユーザーの15%しかユーザー登録を行っていなかったとのこと。また、トップページに訪れたにも関わらずユーザー登録を行わなかった人の動向を30日間追ったところ、再びサインアップを行うことはありませんでした。そこで、トップページのデザインをシンプルにした結果10%コンバージョンが上がりました。Twitterでの自分の価値を伝えるためのいちばんの方法は、サービスを体験すること。トップページに価値をたくさん出すのではなく、サインアップを真っ先にできるような状態にしました。


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3年前まで(上)、1.5年前まで(下)のTwitterのトップページデザイン

 

更にシンプルにしトップページにはユーザー登録・ログインのみを表示するデザインに変更したところ、6%コンバージョンレートを上げることができたとのこと。Webサービスは情報をたくさん入れて価値を伝えるのではなく、サービスを体験できることが大切。

「部屋に入ってきてもらいたいときに、閉じたドアに部屋に入ることのメリットを書いた張り紙をたくさん張るのではなく、部屋に入ってきてもらえるよう、つべこべ言わずにドアを開けろ!」

 

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現時点でのTwitterトップページデザイン

 

トラフィックソースとランディングページのフローチャートを作成し、ソースごとに、最適なフローにすることが大切。例えば、ランディングページにTwitterから来たユーザーには、Twitterのコネクトボタンを表示するなど、ソースに合わせたユーザー体験をデザインすること。このフローを通して、サービスのローンチから1年目でいかにコンバージョンの改善をできるかが大切。また、ソーシャルを上手く利用することで、ユーザー登録の数を増やすことができる。Facepileなどのプラグインを利用し、閲覧中のページで自分の友達が「いいね!」ボタンを押していると、その友達のアイコンを表示するなど、友人がサービスを利用していることを表示するだけでサインアップ率が高くなる。Quoraでは、これを利用することで20%くらいサインアップが上げることができたとのこと。

 


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トラフィックソース毎のユーザー登録の最適化について説明を行う前田紘典氏とAndrew Johns氏

 

アマゾンでは、0.1秒読み込み時間が遅いと100万ドルの損失がでるといわれるほど、サイトの読み込み時間はコンバージョンに多大な影響を与えるものです。また、FacebookとMySpaceが競合していた頃の話では、MySpaceはプロフィールを変更できる仕組みなどカスタマイズ機能の強化を行っていたけれども、その結果読み込み時間が遅くなってしまいました。MySpaceがFacebookに負けたいちばんの理由は、読み込み時間がユーザーが離れの原因になっていることを把握しきれていなかったことではないかとAndrew氏は考えます。ユーザー獲得チームのあるべき姿は、ロードスピードといったインフラ面も把握した上で、ユーザー登録数とアクティブユーザー数にフォーカスすること。サイトの読み込み時間がユーザー数を左右することについては、ある企業が行ったレスポンスとユーザー行動の相関について実験にて、「0.5秒遅くなるために、アクションの数が10%ずつ減る」という結果が得られています。ロード時間はユーザー獲得において重要な要素の一つです。

 


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読み込み時間の重要性について語るAndrew Johns氏

 

「ユーザー獲得」を始めるにあたって、経験よりもマインドセットが重要。常にいろんなものを試して、たくさんの失敗をすることにタフになるマインドセットが大切。ユーザー獲得チームは、企業の中で様々な部署のメンバーをプッシュしたり、ひっぱったりするポジションにいます。また、スポットライトを浴びる職業ではないため、リクルートの際にはそれに耐え、ひたむきに頑張ることができる人かどうかを見極めることが必要です。ユーザー獲得チームがより良い施策を考えつく方法は、たくさんの失敗して試すこと。たくさんの施策を行うことで、試していくうちに、テストの成功率をあげることができるものです。たくさんの失敗を重ねながらも、新しい施策を次々に行うことができるタフなマインドセットが必要です。ユーザー獲得は、いろんな企業、スタートアップがもっと投資してもよいところだと思います。

 

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「Gettin Started on Growth」Andrew Johns氏と前田紘典氏

 

 

Q & A

 

Q.ユーザー獲得チームで仮説テストを行っているが、テストを思いつくプロセスは何なのか?

テスト作成するプロセスは以下のステップです。

 

  • 1.賢い人たちを集め、テストを200~300個作成する。
  • 2.その中から、より時間をかけずに、効果がでそうなものを考える。
  • 3.その選抜された中から、エンジニアリングがより簡単な行えるもの選ぶ。

 

尚Facebookでは、300個のアイディアを作る際に、「20%ルール」というものがあり、「20%はとんでもないクレージーなアイディアを入れる」というルールの上でおこなっています。そのクレイジーなアイディアの例として、Facebookでは、世界中のすべての人の名前が登録できていなかったため、ロシア人の1000万人の名前データを30ドルで買い取り、google AdWordsにて全ての名前を登録するキャンペーンを行ったとのこと。また他にも、たくさんのアイディアがあったが、テストを作成する際には、固定概念にとらわれず、新しい切り口で物事を考えることが大切。

 

Q.ユーザー獲得方法はサービスを利用している国や文化によって違いがあるか?

Facebook、Twitterでは今のところ国によっての違いは数%ほどで大した違いではないのが現状です。User獲得チームとして今やるべきことは、「いちばん影響力があるところに常にフォーカスすること。」もし20年後に時間が余った際には、ユーザー獲得チームが各国向けのユーザビリティの改善を行うかもしれないけれども、各国に対するローカライズの部分は現状ユーザー獲得において影響力が強いわけではない状況とのこと。デザイナーとして心がけるべきことは、「10才がすぐに使えるプロダクトにすること。」だれもが使えるものにすることで国や文化を超えたサービスの作成ができるとAndrew氏は考えます。

またプロダクトを作成する際、Facebookでは下記のマインドセットを大切にしているとのこと。

 

  1. 1. Move Fast and Break Things(ガンガン動いてドンドン壊せ)
  2. 2. Done Is Better Than Perfect(完璧を目指すよりまず終わらせろ)

 

 

Q.ユーザー獲得はマーケティングの部署でやることが現在主流だが、ユーザー獲得チームとマーケティングの部署は一緒にするべきか?また今回、Facebook、Twitter、QuoraとB to Cのフィールドでのユーザー獲得チームにフォーカスしていたが、B to Bの場合にもユーザー獲得チームと同じ概念が必要か?

 

ユーザー獲得チームとマーケティング部はフォーカスしているKPIがまったく別のため、別のチームとして分けるべき。ユーザー獲得チームは、施策を行うことですぐにユーザー数に反映されるように、施策ごとの結果が数値としてすぐに現れるKPI設定を行っています。反対にマーケティングでは、Consumer向けのブランディングを行っているため、ユーザー獲得チームのKPIと同じようにすぐに結果として反映されるものではない。また、BtoBのビジネスにおいても、BtoCと同様にユーザー獲得チームは重要です。ユーザー獲得チームとは、ユーザーの悩みを理解し、解決に導くことを行うチームのことです。そのようなメンタリティを持ったチームが企業にあることはとても重要なことになります。

 

 

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