2018年09月28日
Open Network Lab (以下、Onlab)は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、Seed Accelerator Programを2010年4月にスタートしました。1. 事業成長と投資の両側面からバランスの取れた支援を行う「インキュベーション」、2. シリコンバレーなど海外で活躍するスタートアップやスペシャリストを招聘した「イベント」、3. 起業家同士が切磋琢磨し合うことができる環境を提供する「コミュニティ」を通じて、これまで90社以上のスタートアップを支援・育成してきました。
今回は、OnlabのSeed Accelerator Programを卒業した13期生Xpresso田中仁さんをインタビュー。Onlabに入ったきっかけ、プログラム期間中の経験やサービスグロースの苦労についてお話しいただきました。
< プロフィール >
Xpresso, Inc. CEO 田中 仁
1986年生まれ。セブンイレブンのフランチャイズ店舗で店長を務めたのち、AnyRoadの日本市場展開を担当。その後Xpresso, Incを創業し、AIマッチングアプリFoxsyをリリース。
― Onlabに入ったきっかけについて教えてください。
Onlabに応募した当時2016年は、サンフランシスコの大学に通っていました。この時すでにFoxsyの元となるスタートアップの立ち上げは現地で行なっていて、アプリの開発にいくつか携わっていました。当時のルームメイトによくフィードバックをもらっていたんですけど、資金調達の話題に触れた時に彼からOnlabのシードアクセラレータについて紹介してもらって。サンフランシスコのエリアではDigital Garageの名前はよく耳にはしていたので、面白そうだし応募してみよう!と思ったのがOnlabに入ったきっかけです。
― サンフランシスコ!ずっとアメリカにいらしたんですか?
いやいや、20代前半ごろまではずっと日本で。千葉で兄とコンビニエンスストアを複数店舗経営していました。渡航当初は英語全くできなかったです!(笑)
― てっきりずっと向こうかと(笑)では日本にいた頃から早い段階で事業を起こすことはされていたんですね。
はい、そもそも僕の父が事業家で。小さい時から起業することをごく自然な、身近なものとして感じていて、もともと商売をすることにはすごく興味があったんです。コンビニの経営をしばらくしていた時は事業を伸ばすために大前研一さんの勉強会とかによく参加していたんですけど、シリコンバレーの存在を知って、こんな新しいビジネスが盛んに生まれる場所に自分も行ってみたい!と思って2014年に渡米、アメリカでの起業を決めました。
― アメリカだとOnlab以外にもアクセラレータは沢山あったんじゃないですか?
もちろん日本よりもスタートアップエコシステムが進んでいるアメリカでは、それぞれの良さを持ったアクセラレータが既にいくつもありました。pure sillicon valleyでセグメントフォーカスなY Combinator、グロースフォーカスな500 startups、コーポレートアクセラレータをやっているTechstarsとか。でも僕はOnlabが持っているコミュニティやネットワークの広さを一番魅力に感じました。
― Onlabに応募した時のビジネスアイディア「Foxsy」についてもう少し教えてください。
「Foxsy」は、メッセンジャー上で動くマッチングBOTサービスです。アプリのインストールをせずに既存のFacebook、ViberなどのプラットフォームをベースにAIが相手をレコメンドするので、簡単に最適な相手と出会えることが特徴です。プログラム期間中、サービスをチューニングするような細かいpivotはありましたが、このアイディア自体は最後のDemodayまで変えずにいました。
― Onlabへの参加をもってFoxsyが始動したと思いますが、立ち上げで苦労したことはありますか?
僕のチームはサンフランシスコと東京を行ったり来たりしていたこともあって、ユーザーリサーチのターゲティングにすごく苦戦しました。
― リモートでのワークスタイルはアクセラレータに参加する時はあまりあってなかった、と。
Onlabのようなアクセラレータに参加して、3ヶ月間みっちりメンターと一緒に課題やターゲットの見直しをする場合、リモートは正直個人的にはおすすめしないです。(笑)他のチームからのペアプレッシャーだったり、メンターからのフィードバックは、実際その場にいて体感することで自分の「やらなきゃだめだ!」っていう気持ちが奮い立つというか。リモートだと実際メンタリングに参加する人、参加しない人で温度差が大きく出てきてしまうのでコアメンバーは絶対プログラム期間中コミットするべきだと思います。
― 確かに物理的な距離は影響がでますね。他にやっておきべきだったと思うことはありますか?
Onlabメンターに限らず、Onlab上のネットワークを活かしきれなかったことも反省している点です。例えば、卒業生にプログラム期間をどう過ごすべきか聞いておくことで事前に自分がやっておくことのイメージができると思うんですけど、僕は意識的にそういったことをしなかった。色々なメンターに会って、早めにフィードバックやレクチャーをもらうことはバリューなので、自発的に働きかけることの大切さをOnlabでは学びました。ピッチなんて特に、プログラム中は毎週やってがんがん練習してもいいくらいじゃないかと思います。
― Onlabで印象に残ったことは?
Demoday直前の鎌倉合宿は辛かったですね。合宿って缶詰でみっちりブラッシュアップするじゃないですか。kickoffから3ヶ月後、どのくらいのレベルのピッチができるようになっていたらいいのか、しっかりイメージができていなかったから最後にキャッチアップすることが大変でした。
あとは、プログラム全体を通してはOnlabではユーザーインタビューの仕方、課題の整理からVCにむけてどういったピッチをすればいいのか、いわゆるメソッド的な部分の情報提供をしてくれたところがよかったと思っています。
― 今開発されている事業について教えてください。
結論から言うと、僕今まさにピボットしたんですよ(笑)2016年にOnlabを卒業してから2年間、Foxsyの事業に取り組んで、「zeroth.ai」をはじめとするアクセラレータに参加をしてきました。ただ、事業をグロースさせていく中ですごい壁にぶち当たって…。
今はFoxsyはクローズして、workforceというスタートアップ支援のコミュニティを作るサービスを展開しています。日本で活動をしている外国人起業家をターゲットに、資金調達や適切な人材をマッチングさせる機会を作ることを目的に、今は主にPitch nightやhappy hourといったイベントを実施して同じ業界の人たちや、コミュニティに興味を持った人たちのネットワーキングの場の創出を行なっています。
今は東京のみで展開していますが、将来的にはアジア主要都市のコワーキングスペースを拠点に、そこへ集まるスタートアップに対して資金調達や人材紹介のアセットを提供できるような環境づくりを目指したいと思っています。
― 壁、ですか…。Foxsyはユーザー数もついてきていたのにクローズして次の事業に進まれようと思ったのはなぜですか?
Foxsyはサービス自体はのびてファンもついたけれど、「熱狂するファン」じゃなかった。サービスに対してのloveの深さが浅く、どんどんチャーンしていってしまって。NETユーザー数がずっと横ばいになってしまった時があったんです。
なぜ離れていってしまうのか、ユーザーフィードバックやインタビュー、アンケートを半年以上かけて行いましたが、後追いのリサーチではだめだった。それに、Foxsyのトラクションがマックスに達した時に資金調達をした背景もあり、トラクションの鈍化から次の資金が得られない状況になったんですよね。結果、資金を調達するタイミングのミスリードで僕がファイナンスを組めなくなってしまって。チャットボットのマーケット自体がダウンラウンドになったのもあり、Foxsyはクローズしました。
― それでもやっぱり「人を繋ぐ」というところに思いがあって今の事業もされているんでしょうか。
そうですね、人と人とを繋げる、っていうコアバリューはFoxsyの時から変わらずに持っています。Foxsyの時は「使いたい」と思ってもらえるようなコンテンツがユーザー体験に落とし込めなくて、一人一人のloveが下がってしまった。それでも僕、やっぱりコンシューマーが大好きなんでもう少し違う形で、より濃厚なマッチングを提供できないかと思って今のworkfoceをやっています!
― 最後に、workforceについてのお知らせがあればお願いします!
workforceは定期的にネットワーキングイベントをパートナーのBlink communityで行なっています。9/28(金)にはFriday Premium Sake Happy Hour、10/5(金)にはSakeba Happy Hourを企画していますので、日本の外国人スタートアップコミュニティに興味がある方はぜひ参加いただければと思います!
コンシューマーが好きだからこそ、人を繋げる価値を提供していきたいと話すJinさん。彼にとってworkforceへのピボットは、これまでの軌跡を再考し、より良いアプローチで価値を提供させるためのスタートポイントとなったようです。Onlabでの時間を振り返っても、事業のブラッシュアップに最も必要だったのは「人」。ユーザー、メンターからの声を聞き、プロダクトに落とし込んでいくことを第一に、本当に欲しいと思ってもらえるものを形作っていって欲しいと思います。
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