2023年04月27日
Seed Accelerator Program(シードアクセラレータープログラム)を運営するOpen Network Lab(以下「Onlab(オンラボ)」)は、2023年4月20日に第26期のDemo Dayを開催しました。今期140社以上の中から最終審査を経てDemo Dayに辿り着いたのは5社。コロナ禍後会場に集まっての開催となった当日、スタートアップは多くの投資家や事業会社の皆様を前にピッチを披露しました。またOnlab卒業生の3社もAlumni Ptichとして登壇し、現役時からのさらなる発展を報告してくれました。各社のピッチを振り返りながら、第26期Demo Dayの受賞企業を紹介します。
最優秀賞、及び会場参加者の投票で決まるオーディンエンス賞をダブル受賞したのは、バス事業者等を中心に、都市の脱炭素に貢献するカーボンクレジットを発行するデータプラットフォームを開発する株式会社Spatial Pleasure(スペィシャルプレジャー)でした。
脱炭素において注目を集めているカーボンクレジット。Spatial Pleasureのクライアントであるバス会社は、カーボンクレジットが認められれば、年間20億円の売上げが見込めると試算。しかし実際はカーボンを排出しているとして、年間2億円の支払いが必要となってしまっています。
このギャップの原因は、バスによるカーボンの削減効果の定量的な提示が難しいから。例えば、1日10万人を運行するバス路線では、1回5000万円を超えるアンケート調査を2カ月に1回、継続的に実施しなければなりません。またバス会社は、乗降客の移動データを提供する必要がありますが、集金データを紙で管理しているバス業界でこの複雑なデータモニタリングは難しいのが現状です。
Spatial Pleasureはこの課題を解決するため、乗降客データと周囲の交通データを掛け合わせ、バスが環境に及ぼす影響を定量的に可視化・モニタリングするサービスを開発しました。このサービスでは、カーボン削減効果が路線ごとに可視化され、カーボンクレジットの申請に必要なドキュメントも自動で生成されます。
またバスの車両機材メーカーとも連携し、精緻な乗降客データを取得する算段です。バス以外の交通事業者への提供はもちろん、信号やナビゲーションへのアルゴリズム提供を通じて都市全体の移動の最適化を図り、グローバルで134兆円と言われる交通カーボンクレジット市場に挑みます。
3人乗りの小型EVシェアリングサービスを観光地に展開する株式会社eMoBiが審査員特別賞を受賞しました。
日本の観光スポットは10km圏に分散していると言われ、移動の課題を抱えています。バスが1時間に1本しか来ない。レンタカーが予約できなかった。電車に上手く乗り継げなかった。観光においてこのような体験は、誰しも1回は遭遇したことがあるでしょう。最近ではシェア自転車やキックボードといった移動サービスも出てきていますが、移動距離や1人乗りであるということに鑑みれば、いつもベストな選択肢とはいえません。また都市では道の狭さや駐車場が少ない・高いという課題もあり、レンタカーも必ずしも最適な移動手段とは言えない場合も少なくないでしょう。
この課題を解決すべくeMoBi社は、3人乗りの小型EV「えもび」を開発しています。えもびは普通免許・ヘルメットなしで運転でき、50kmまで速度を出して車と共存できるモビリティ。自転車のようなハンドルで運転でき、バランス感も抜群です。これをeMoBi社はシェアリングサービスとして展開しています。
えもびを使えば、1日の平均訪問スポット数を2カ所から5か所まで増やすことが可能。例えば、鎌倉駅を出ていくつかの寺を回り、江ノ島や逗子まで足を伸ばし、また鎌倉駅に戻ってくるという、徒歩では得られない移動体験を提供できます。将来的には観光市場だけではなく、日常の移動の市場も狙います。
運転代行配車アプリ「AIRCLE」を運営する株式会社Alpaca.Labが、2社目の審査員特別賞に輝きました。
飲酒したとき等に運転を代行してもらう運転代行業者は、全国に8000社もあるそうです。車を持つ人の4割が運転代行を利用したことがあり、9%程度の人が日常的に使う等、我々の生活に浸透していることが覗えます。
しかしこの運転代行は、電話で呼ばなければならない、平均60分の待ち時間、二種免許ドライバー不足、過度な価格競争等の課題を抱えています。これだけならまだしも闇代行、表示義務違反、保険未加入、不透明な会計といったコンプライアンス違反も問題となっているようです。
これらの課題をAlpaca.Labは、運転代行配車アプリ「AIRCLE」で解決に導きます。AIRCLEは現在地と目的地を入力することで最適な配車をするスマートフォンアプリと、ドライバーが使うiPadアプリで構成されており、これにより、今まで5分程かかっていた配車時間を30秒以下に、待ち時間を平均9分まで短縮することに成功しました。また各業者バラバラだった料金形態を統一し、高い審査基準を設けることで、運転代行における安心・安全な運行と、効率的な配車を両立します。
従業員のセルフメンタルケアを支援するデジタルサービス「Mental Training Club BOOOST」を展開するのは、booost health株式会社です。
メンタルヘルスの不調による生産性低下がもたらす経済損失は、年間19兆円にも上ります。企業もカウンセリング、アプリ、サーベイ等で対策していますが、導入しても利用されない、効果が不明、根本対策になっていない等、課題を感じている企業も少なくありません。この現状を脱却するために必要なのは「従業員一人ひとりがセルフメンタルケアできる仕組み」だと、booost health代表の芳賀さんは語ります。
その仕組みを備えるサービスが、Mental Training Club BOOOSTです。ビジネスマンが不調になる前のメンタルケアでストレスを緩和し、さらなる成長につなげたい等、ストレスに対する多様なニーズに応えます。
それを実現する仕組みが、次のアクションを導く独自ツールとコーチの伴奏です。臨床現場の心理療法をデジタル化したツールで、ユーザーは1週間を振り返りストレスの原因と解決策を模索。例えば上司の指示にストレスを感じた人は「他人の行動はコントロールできないので自分の受け止め方を変える」ことを選びます。また、業務経験とカウンセリングスキルを持つコーチがユーザーを支援するのもBOOOSTの特徴です。
生産性向上の観点から、研修健康経営の1兆円市場に加え、営業支援ツール市場開拓も目指します。
この20年でアルコールは約1/3、金額にして約1.5兆円の市場が吹き飛びんでいることからも推察されるように、近年アルコール離れが加速しています。しかしレストランでお酒の代わりになる飲料は、ノンアルコールのビールやワイン、ソフトドリンク等しかありません。
ではなぜノンアルコールのバリエーションが増えないのか。その答えは「作れないし儲からないから」だと、YOILABO株式会社の播磨さんは説明します。レストラン用の商品は保管場所が狭いため常温保存の必要があったり、ソムリエが注げるようなボトルである必要があり、これらのニーズを叶えるのが難しいのです。また大手飲食メーカーからするとレストラン市場はそこまで大きくないため、開発のインセンティブも弱いのだそう。この市場に目を付けたのが、ノンアルコール飲料を開発しているYOILABO株式会社です。
YOILABOは工場と別契約を結び、オリジナルの製法で、「DOUXLESS」「Pairing Tea」の2つのブランド、計8種類のノンアルコールドリンクを開発しました。それを独自のスキームで賞味期限を切らすことなく販売し続けています。ドリンクは料理との相性を追求し、お茶や果汁をベースにスパイス・ハーブをブレンドした複雑な味わいが特徴です。原料ごとに加工・抽出を施すことでお店でプロが作るのと同じ味わいを実現。既にミシュラン店やリッツカールン、星野屋等トップクラスのホテルにも導入されており、その品質の高さが窺えます。
レストランはノンアルコール飲料でも利益が出せるようになり、お酒を飲まない消費者からは、酒が飲めなくても肩身の狭い思いをしなくてよくなったという声が届いているそうです。将来的には消費者向けへの市場拡大や専用工場を建設し、成長を図ります。
貸切バスのマッチングプラットフォーム「busket」を運営するのは、Onlab第24期卒業生のワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社。
人の送迎やスクールバス、観光、スポーツ、大型商業施設やイベント等、あらゆるところで使われている貸切バス。その国内輸送人員数は3.3億人、これは飛行機の3倍に上る数字です。
しかし貸切バスの運行には、流しの運行ができない、書類の整備、発注側によるドライバー用の宿や駐車場の予約、といったいくつもの課題があります。また国内に5万台あるバスの実働率は半分以下で、赤字率も非常に高い状況となっているそうです。
これらの課題を解決するのが、貸切バス・シャトルバスのプラットフォーム「busket」。バス会社と発注者を効率的にマッチングし、またバス利用のための効率的なシステムを提供することで課題解決に導きます。双方の条件をもとにマッチングし、運行予定一覧から業務に必要なPL管理やドライバーのシフト調整、配置、書類の出力も実施。発券業務や決済、乗員管理システムも提供します。
busketuは不動産、物流、スポーツ等の領域で導入を拡大中。売上も前年比3倍で成長しています。
レセプト(診療報酬明細書)を作成するため、薬局で必ず必要になるのが処方箋の入力。Onlab第19期卒業生の株式会社プレカルはこの入力代行サービスをこれまで展開してきました。入力代行サービスのためのプレカルの社内システムは、レセプト(診療報酬明細書)作成をするシステム=レセコンに類似。この知見を活かしてプレカルは、クラウドレセコンの開発に挑んでいます。
既存のレセコンは、多額のシステム利用料、オンプレミスであるが故、置き場所、使用時間等の物理的な課題等がありました。一方でプレカルレセコンはクラウド型で提供することで、費用を抑え、また物理的な制約からも解放します。また利用者に使いやすいUIを提供するのも、プレカルレセコンの特徴です。
特定技能人材のマッチングプラットフォーム「Tokuty」を運営するのは、Onlab第23期卒業生のトクティー株式会社。
外国人が日本で働くにはビザが必要ですが、その中でも特定技能人材ビザは、コロナ禍の2年間でなんと33倍に増えたそうです。日本では2030年までに製造業、介護、宿泊業等全14業種で644万人の人出が不足すると言われており、この特定技能人材の活躍が期待されています。とはいえ企業が特定技能人材を採用するには、海外からしなければならないということもあって非常に大変です。
Tokutyは、雇用主と海外の人材会社を直接つなぐことで、この課題を解決します。雇用主はTokutyに求人情報を入力するだけで、一気に201社に求人情報を届けられます。届いた求人に対して、履歴書資格を確認して相談ボタンをクリックすれば、インタビュー調整も可能。内定通知もTokuty上でできますし、ビザの申請も可能です。これまでのビザ申請は入管に数時間並ぶ必要がありましたが、Tokutyならたったの15分でビザの申請までできるようになっています。
Spatial Pleasureの最優秀賞受賞で幕を閉じたOnlab第26期のDemo Day。Onlabは今後も引き続きスタートアップを支えていきます。
Onlabでは、2023年5月9日(火) 正午まで、第27期の参加チームを募集中です。オンラインで事業相談会も実施しています。ご興味のあるスタートアップは、ぜひOnlabのサイトを覗いてみてください。
(執筆:pilot boat 納富 隼平 編集:Onlab事務局)
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