2022年10月26日
Seed Accelerator Programを運営するOpen Network Lab(以下「Onlab(オンラボ)」)は、2022年10月18日に第25期のDemo Dayを開催しました。今期も百社以上の中から最終審査を経てDemo Dayに辿り着いたのは5社。約3年ぶりにリアル会場でのDemoDay開催となり、例年にもまして各社熱のこもったピッチを繰り広げ、多くの投資家や事業会社の皆様とも対面で交流することができました。またOnlabの卒業生4社も登壇し、事業の進捗を共有してくれました。各社のピッチを振り返りながら、25期のDemo Dayの内容と各賞受賞企業をご紹介します。
情報ネット株式会社は、2年前に公共工事の入札情報関連事業を承継し、入札についてのヒアリングを重ねたところ、入札そのものよりも、見積り取りまとめの大変さに課題を感じました。
公共工事は公募から入札まで12営業日程度と言われています。その間に元請け企業が行政からの大量の情報を入手し、下請企業にそのまま情報を展開します。下請けは見積りをして元請けに返送します。元請けは情報を転記して内容を精査。このやりとりが非常に大変なのです。見積り作業と取りまとめに膨大な時間がかかる結果、分析や経営判断に使えるのはわずか2日。粗利率が10%ほどの建設事業は、見積りや判断ミスが赤字工事に直結してしまうため、工事の分析は非常に重要な工程です。本来はじっくり時間をかけるべきですが、現状それが許されません。
膨大な時間のかかる見積り時間ですが、その90%は、エクセルやPDFの転記作業に費やされていると言われています。これをクラウドでの取りまとめを通して効率化するのが「GACCI」です。
GACCIの使い方です。元請企業が案件を作成してPDFやExcelをアップロードし、工事データを表示させます。見積りの範囲を指定し、異なる業種の下請け企業に一度で見積りを依頼。依頼を受けた業者は単価を入力するだけで見積りが完成します。元請けは見積りを比較して、相見積することも可能です。GACCIのアルファ版を使った全10社が、見積り業務が短縮されたと回答し、本導入のリクエストをしてくれました。
将来的には蓄積されたデータを使って、発注者・元請け・下請けがつながるプラットフォームへとGACCIを進化させていきます。
Demo Dayを開催した2022年10月にちょうど解禁された訪日観光。特に欧米豪から来た訪日客は滞在日数が長いと言われており、平均宿泊日数は10.3泊です。
しかしながら、従来のホテルは長期滞在に向いているわけではありません。毎日外食はつらいですし、ランドリー作業も大変。落ち着く作業場もありません。民泊は当たり外れが大きいですし、サービスアパートメントは法律との兼ね合いから30泊以上からしか予約できません。「コロナ後に行きたい国1位とも言われる日本の長期滞在のオプションは欠点だらけ」だと、セクションLの北川さんは語ります。
そこで登場するのが、訪日客向けの長期滞在型ホテル「Section L」です。全室にキッチンとランドリーを備え、高品質なサービス&デザイン、自社開発のテクノロジーを利用しているといった特徴を持ちます。モバイルチェックインすればスマートロックのコードが自動で発行され、部屋は北欧の高級家具が配されたラグジュアリーな空間となっており、Wi-Fiなどを使った快適な作業空間も用意されています。飲食店などの情報もスマホからアクセス可能です。キッチンでの自炊もできるし、洗濯も可能。共通の趣味をもつ人を探すこともできます。
自動部屋割り・決済、無人チェックイン、遠隔滞在サポートと、自社テクノロジーを駆使することで、Section Lは人件費を大幅に削減。従来のホテルに比べて効率的な運営を実現しました。プラスチック削減やダイバーシティ経営、ローカルアーティストやウクライナ難民支援など、ESG活動にも力を入れます。
Section Lは、アジアのホテル業界を牽引するMade In Japan のブランドになると、意気込みます。
リモート環境によるコミュニケーションの複雑化は、伝え方を難しくしています。しかし、伝え方が上手い人は、なにかインシデントがあったとしても批判を最小限に抑え、逆に評価を高めることさえあるのも事実。つまり伝え方は「評価」に直結します。
では従来、話し方を改善するためにどうしてきたのかというと、方法の1つ目は書籍です。しかし書籍は一方向が故に課題の見極めが困難だったり、当然フィードバックももらえません。2つ目の選択肢は話し方教室。しかしこれも話し方“のみ”の指導で、ビジネスでどのような言葉を扱えばいいのかという課題は解決されません。
そこで、話す力を数値化し、課題を解決する伝え方トレーニングサービス「kaeka」の出番です。
kaekaの特徴は3つ。まず、30分のパソコンに向かった口頭試験を受けることで、話の情熱性や社会性、論理性、声のスピードや間の確保など、話し方を数値化します。その結果を落とし込んだオリジナルのカリキュラムを生成します。次に、グループレッスンとパーソナルレッスンをかけ合わせた、60項目の体系的トレーニングを実施し、最後に成果発表会と診断の再テストで成長を計測します。
県知事や大企業の執行役員やマネージャーなどがkaekaで話し方を実感。BtoC向けで培ったノウハウを、BtoB向けにも展開していきます。
レッドクリフが提供するのは、LED付きドローンを使って夜空にアニメーションを表現する次世代エンターテインメント「ドローンショー」です。広告媒体として夜空にアニメーションを表現したり、QRコードを映したりが可能です。海外の大規模イベントではすでにドローンショーが欠かせない存在となっており、レッドクリフも国内で存在感を増しています。
ドローンショーの魅力は、
①3Dデザインを使った高い表現力
②高い集客力
③高い拡散力
レッドクリフはすでに全国4箇所の花火大会で、100〜700機を使ったドローンショーの実績があり、その来場者数は延べ80万人。SNSでのドローンショーの動画再生数は1,000万回を超えています。
ドローンショーは1回につき数千万円かかることが多いそうですが、アニメーションを再利用することで、次回以降は20%程度の金額で実施できるコスパの良さも魅力。SDGsの文脈も、従来の花火からドローンショーへの移行を後押ししているようです。
レッドクリフのビジネスモデルは、ドローンショーを受注し開催することに加え、花火大会などのイベントに協賛し、そのイベントにドローンショーで広告を掲載する広告主協賛型も用意。ドローンを広告媒体として活用し、夜空に新しい可能性を広げます。
最近よく耳にする「個の時代」という言葉。今、労働人口の24%にあたる1,670万人がフリーランスだと言われています。ただ、そのフリーランスの約40%が何かしらのトラブルに遭遇しているそうです。特に報酬、契約、コミュニケーションのトラブルが多く、例えば次のようなものが挙げられます。
見積り時:納品の定義や単価の設定、納期、不明確な条件
契約時:契約書の締結や権利の取り扱い
決済時:クライアントからの未払いや、フリーランスの報酬持ち逃げ
これらを解決するために複数のソフトウェアを使うことも考えられますが、管理コストが増大してしまいます。マーケットプレイスの利用もありえますが、手数料の高さや、価格比較による単価減少が課題です。
そこで登場するのが、フリーランスの取引業務を仕組み化するデジタルアシスタント「Tooon」。価格比較がなく、管理コストを最適化するSaaSで、以下のような特徴があります。
見積り時:発注書の自動生成で、どんな納品物を、どのくらいの予算で、いつまでに必要なのかを簡単に文書化
契約時:契約書の自動作成で見落としがちな項目をチェックボックスで網羅。権利化や改変許可などを確認できる
決済時:エクスロー決済を用いることで、未払い・持ち逃げの心配がなくなる
Tooonを使って、報酬トラブルを減らした方はもちろん、5倍の単価を実現したフリーランスもいるそうです。「Tooonを使えばフリーランスは制作に集中できる」と、代表の杉山さんは意気込みます。長期ではフリーランス同士の業務連携をサポートするコラボレーションも展開し、成長を目指します。
OnlabのDemo Dayでは毎回、卒業生も数社が登壇しました。今回の4社も卒業時からのさらなる進化を紹介してくれました。
Onlab第21期卒業生のOh my teethは「未来の歯科体験を生み出す」というミッションのもと、D2C歯科矯正事業に取り組んでいます。現状の歯科矯正の課題は大きく3つ。
①90〜120万円と高額な費用
②2〜4週間に1回は必要な通院頻度
③1日20時間の着用時間
です。特に2・3つ目は、3割の人を治療の挫折に追い込んでいます。この課題を解決するのがOh my teethです。
Oh my teethを開始するには、最初の1回だけクリニックに行きます。待ち時間ゼロで案内されたら歯型をスキャン。たった3分で終了です。後日、自宅に矯正キットが送られてきたら、矯正を開始します。LINEで毎日進捗確認することで挫折を回避します。その結果、Oh my teethの継続率はなんと97%。原則、矯正開始後は通院不要なので歯科医師の人件費がカットされ、コストが従来の1/3程度に抑えられているのも特徴です。サービス開始から順調に成長し、売上は3年で10倍。サブスクホワイトニングやオーラルケアECも開始。今後はクリニックを全国に広げ、商圏を広げていきます。
公的な介護保険サービスは、利用制限が深刻になり、利用者のニーズを充たせていません。サービスを利用したいと思ってから1週間以上かかってしまうし、1回の利用は約1時間まで。同居家族がいたら掃除や食事のサービスは受けられません。
そこで登場するのが、介護のラストワンマイルを叶えるオーダーメイド介護サービス「イチロウ」。利用制限なく、素早く介護士を自宅に呼べるサービスで、介護依頼者とスキマ時間を活用したい介護士をCtoCでマッチングします。
予約をしたら最短5分でマッチングし、最短2時間で派遣可能。独自のアルゴリズムで最適な介護士とマッチングできるようになっています。介護記録はデジタルで行うので、離れた家族もどんなサービスを受けたのかがすぐに確認できます。このようにすべてがオンライン化された結果、イチロウは低料金・高時給を実現。継続的に利用するユーザーも非常に多いようです。
現在は愛知や東京などの大都市を中心としてサービス展開していますが、2024年には全国でマッチングができるよう、サービスを進化させていきます。
農地や太陽光発電所、土木建設現場など、「整備されていない環境下の産業」を意味する不整地産業の課題は、物理的な移動の負担です。同じ作業でも作業環境・収穫時期によって解決手段が異なることが、解決を一層難しくしています。
しかしCuboRexは、そんな不整地でも活躍できるプロダクトを用意しました。それが「E-cat kit」です。後付け可能な一輪車で、ねこ車を簡単に電動化。本体の重さはたった5kgで100kgの荷物を運べます。斜度も25度まで対応可能で、 狭小、斜面、段差でも楽に運搬できるため、山のような重機が入れないところでも活躍します。あるみかん農家は運搬時間が半分になったそうです。なお、E-cat kitは台風による災害被害復興でも活躍しています。
CuboRexは、ハードウェアスタートアップとして初めて、JAと連携。全国の農業事業者へ製品提供を開始し、全国での販売・アフターメンテナンス網を構築しました。
CuboRexは他にも、レゴのように組み立てられる屋外ロボット「CuGoシリーズ」も展開。「CuGo MEGA」はなんと車を引っ張ることもできます。不整地のパイオニアとなるべく、CuboRexはどんどん進化していきます。
高齢化にともない国内の死亡者数は年々増加。これは相続の発生件数が増えていることも意味します。相続手続きには名義変更、解約、税金支払いなど、対応する手続きがたくさんあり、特に不動産や預貯金といった相続財産は大変です。大量の証明書を収集したり、しかも収集先が複数の役所にまたがることも珍しくありません。明文化されていないルールがあったり、申請書の作成も大変です。
これらを解決するのが「そうぞくドットコム不動産」。役所に行く必要なく、家で待っていれば証明書を自動で集めてくれます。進捗状況はスマホからいつでも閲覧可能で、申請書もwebから作成可能です。税金も自動で計算され、全国どこでも利用可能と、至れり尽くせりなサービスとなっています。
22年5月には「そうぞくドットコム預貯金」をリリースし、順調なスタートを切っています。また、保有している相続データを生かして、例えば相続不動産の売却支援など、手続き後のアフターサービス事業や、事業者向けサービスへも参入予定です。
GACCIの最優秀賞受賞で幕を閉じたOnlab第25期のDemo Day。Onlabは今後も引き続きスタートアップを支えていきます。2022年10月31日(月)正午まで、Onlab 第26期の参加チームを募集中です。オンラインで事業相談会も実施しています。ご興味のあるスタートアップは、ぜひサイトを覗いてみてください。
また、今回のDemo Dayの中で、Onlabの支援体制強化を発表しました。詳しくはOnlabホームページおよび以下のプレスリリースをご覧ください。
(執筆:pilot boat 納富 隼平 編集:Onlab事務局)
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